ノズルが決め手(中)/本体の繊維技術と一体
2016年06月23日 (木曜日)
東レとユニチカの紡糸口金(ノズル)製造子会社、東レ・プレシジョン(滋賀県大津市)、上條精機(京都市宇治市)。両社には共通する部分がある。それはともに京都発祥の口金製造企業の事業を継承している点だ。
東レ・プレシジョンは1955年唐橋製作所の口金部門を引き継ぎ、東レが十條製作所を設立したのがその始まり。85年に現社名に変更し、89年には東レの瀬田工場内に本社を移転し、現在に至る。上條精機は1959年設立。ユニチカの宇治工場のナイロン製造用部品の供給からスタート。96年にユニチカが連結子会社化、2005年にはユニチカの完全子会社となった。
両社が紡糸ノズル製造会社を傘下に収めたのは、恐らく紡糸ノズルの重要性を理解し、グループ内に必要と判断していたからだろう。
では、化繊ノズル製作所(大阪市北区)や日本ノズル(神戸市)という独立系大手2社との違いはどこにあるのか。
東レ・プレシジョンの藤本節社長は、「機密保持という面も含めて、最初から開発に携わることができる点」を挙げる。そして開発で互いに提案し合えるメリットもあるという。
それは同社の紡糸ノズルが東レの繊維開発の一翼を担っていると言い換えることができるだろう。もし紡糸ノズルをすべてアウトソーシングにすると、東レの開発力は弱くなるかもしれない。
上條精機の大久保修一社長も、「紡糸ノズルは独自素材開発の要であり、当社技術と一体」と語る。ただ独自性を追求すると、紡糸ノズルも小ロット化する。一点物になれば単価も上がり、納期が遅れる可能性があるという。そうなると「開発そのものが遅れてしまう」との懸念も、グループ内に紡糸ノズル製造会社も持つ理由に挙げる。
ユニチカの繊維事業にとって紡糸ノズルがいかに重要か。それは同社は2014年度から金融支援を含めた新中期経営計画をスタートし、産業繊維の構造改革や低採算・ノンコア事業の縮小、撤退を実行したが、上條精機はグループに残したことからも分かる。繊維事業の中核会社であるユニチカトレーディングの衣料繊維事業を展開するうえで、上條精機が不可欠だと判断しているからだ。
それほど、合繊生産、開発で重要性の高い紡糸ノズルだが、その超精密加工は人によって成り立っている。