Uniform Fair 2016 Autumn & Winter/「着たくなる」商品開発へ

2016年07月01日 (金曜日)

 今年1~2月に開かれた春夏展に続き、5月に開かれた秋冬物の最初となる札幌展でもユニフォームアパレル各社から「例年に比べ、来場者が増えた」との声が多く聞かれた。ホームセンターやディスカウントショップなど新たな市場が広がるなか、独自性のある企画商品が注目される。市場の期待に応える商品をどれだけ打ち出せるか。各社の企画の力量が問われてくる。

〈個性追求で売れ筋導くこだわりを明確にする〉

 ワークウエアを取り巻く環境は良くないものの、これまで業界に無かった目新しい企画商品については動きがいい。

 コーコス信岡(広島県福山市)は今春から、カーゴパンツに特化した「G-CARGO(Gカーゴ)」シリーズを打ち出している。ワークだけでなくカジュアルでも十分通用しそうな、新たな切り口による企画で、デザイン、シルエット、デテールに対して徹底的にこだわった。初回計画数は早々に完売、相当量を追加生産中も現在、要望数に対して追い付いていない状況で、急きょ生産ラインを増強し、今月には安定供給できる見通しだ。

 アパレルのほとんどが打ち出すポロシャツも、特色を持った企画であれば、売れ筋へと変化する。桑和(岡山県倉敷市)の開発した、肩に刺子を施して耐久性を強化した“強肩”刺子ポロシャツは、季節を問わず着用でき、発売以降順調に販売を伸ばす。寅壱(倉敷市)のミニ襟ポロシャツは、吸汗速乾に優れ、襟部分が形態安定仕様、汗止めテープ、消臭機能などを施し、どんなボトムや職種でも合わせられるマルチ対応から販売を拡大する。

 定番的なワークウエアではデザイン性が高く、動きやすさや機能性が高いものが売れているようだ。アイトス(大阪市中央区)の「AZITO(アジト)」ヘリンボーンシリーズは“遮熱・UV・吸水速乾”の機能を持った東レの「ペンタスUF」素材を使い、優れたストレッチ性で動きやすく、細身のシルエットでスタイリッシュに仕上げた。若者向けカジュアルテーストというコンセプトでショップ、納入双方へ販売が広がる。今秋冬向けではその秋冬バージョンを投入し、市場拡大に弾みをつける。

 ジーベック(福山市)の「現場服」シリーズも人気になりつつある。パンツのウエスト部分にベルトが固定できる「ロックバンド仕様」や、袋部分を腰ポーチのような形で活用できるビスポケットの「ベロポケ」など、実用新案で他社に無い機能に加え、デザイン性も高めてきたことで、市場のニーズをとらえる。

〈今秋冬もスリムシルエットストレッチが当たり前〉

 今秋冬の新商品の企画を見ると、スリムシルエットのトレンドからストレッチ使いが当たり前になってきた。バートル(広島県府中市)は、伸長率が20%あるポリエステル・綿のスーパーストレッチ素材を使い、細身シルエットで動きをスムーズにサポートする「BURTLE(バートル)」7051シリーズを投入。市場に無いおしゃれなレイザー(細身でシャープな)ジャケット企画も打ち出し、話題を集めそうだ。

 寅壱(倉敷市)は、“蛇腹プリーツ”搭載で、手足と前傾姿勢の曲伸に応じて伸縮し、作業効率と着心地を大幅に改善した「TORAICHI(寅壱)」3930シリーズを開発。綿高混率の杢調オックスフォード使いで、味わい深い表情も印象的だ。

 三愛(倉敷市)の「JOBS ARMOUR(ジョブズアーマー)」JA2101シリーズは、綿高混率でありながらストレッチ性を高めた素材を使い、スタイリッシュなデザインと動きやすさを両立した。

 中塚被服(福山市)の「dimo(ディモ)」D511シリーズは、軽量、保温、ストレッチの三拍子そろった機能素材を使い、上着7色、パンツ10色の多色展開でハードな現場からサービスまで幅広く提案する。

 明石スクールユニフォームカンパニー(倉敷市)は、3Dパターンに加え、ストレッチ性に優れた素材を使い、今までにない軽量感、着心地の良さを実感できる「PETICOOL(ペチクール)」スマートワンUN5000の販売に力を入れる。

 トビ服が多い村上被服(府中市)も「鳳皇」5400シリーズで、細身シルエットの江戸前超ロングを開発、これまでにないトビ装束に仕上げた。6月にはパリの展示会へも出品し、海外へのトビ装束のアピールにも取り組む。

〈ビッグボーン商事/スウェーデンから「BLAKLADER」日本に初上陸〉

 ビッグボーン商事は、今秋冬からスウェーデンのワークウエアブランド「BLAKLADER(ブラックラダー)」を発売する。欧米のワークウエア市場では高い機能性やデザイン性で人気があり、注目度の高いブランドで、「独自のアイデアや、思いを込めてモノ作りをしている点に共感した」(内田隆之社長)ことから提携に至った。

 ブラックラダーは1959年に創業し、激しい作業現場に対応した磨耗に強いユニフォーム開発が特徴で、機能的な“ユーティリティポケット”の開発でも有名。高視認性安全服からカジュアルワークまで欧米を中心に約20カ国へ販売する。

 「欧州の価値観を持ったワークウエアを取り込みたい」(内田社長)との思いから、2013年からブラックラダーと接触を試み、3年間の交渉を経て、提携にこぎ着けた。秋冬物からジャケットやトレーナーなど約20品番を投入。今秋冬は欧州で販売している商品をそのまま展開する形だが、来春夏物からは日本人の体形に合わせた企画商品の販売も計画する。

 価格的には高いゾーンになってくるが、取引先の反応は上々。「ビジネスマンのスーツのように、プライドを持って着用できる」ウエアとして市場に広げる。

〈デニムも定着の兆し/“愛着持てる”ウエアへ〉

 昨年からデニムトレンドを受け、デニム使いのワークウエアが増えてきた。今秋冬の新商品の企画を見ても、トレンドは健在だ。中国産業(岡山県倉敷市)の「DOGMAN(ドッグマン)」8675シリーズは、ストレッチ性のデニム生地を使った、見た目にもインパクトがあるウエア。売り場の活性化にも貢献が期待できる。

 デニム生地だけでなく、インディゴカラーを取り入れる企業も多い。桑和(倉敷市)のカチオン染めとハードな綾目が特徴の綿・ポリエステルのCVCカルゼを使った「G.GROUND(ジーグラウンド)」8773シリーズは、インディゴカラーがおしゃれ。もちろん、シルバー、ダークブラウンも格好良く着こなせる。

 一部の企業ではデニムスタイルのユニフォームの売れ行きが好調だ。アルトコーポレーション(東京都千代田区)は今春夏から中核として発売したデニムスタイルのユニフォーム「CASUALWORKING.COM(カジュアルワーキングドットコム)」の販売が順調でワーク以外の市場へも広がる。

 エスケー・プロダクト(広島県福山市)が日本綿布(岡山県井原市)のセルビッチデニムを使ったツナギ服「GRACE ENGINEER'S(グレースエンジニアーズ)」GE-110シリーズは、店頭価格が1万5000円以上と高い設定ながらも5月の出荷前から引き合いが活発。色落ちするデニムをあえて使うことで、ワーカーだけでなく、「着たい」と思う一般ユーザーへも販路を広げる。

 旭蝶繊維(広島県府中市)がデニムメーカーのカイハラ(福山市)と共同開発したデニムを使った国産ワークウエア「YOROI・WARKS(ヨロイ・ワーク)」も、予想以上に販売が堅調で、ショップ、納入を問わず販路が広がる。これまでユニフォームは色落ちしないことが前提だったが、毎日着用すると体になじみ、若干の色落ちもあって「愛着が持てる」ユニフォームとしても新しい市場へ切り込む。

〈高視認性安全服はこれから戦略的な商品投入も〉

 昨年、規格がJIS化され、市場拡大に期待がかかる高視認性安全服ではあるが、大手を中心にラインアップをそろえるも、需要が急増しているとは言いがたい。旭蝶繊維など先行する企業もあるが、「まだまだこれから」という認識を持つ企業が多い。昨年の秋冬では高視認性安全服の新商品が目立ったが、今秋冬では控えめな感じだ。

 そんな、高視認性安全服の市場に対し、切り口を変えながら、市場開拓を進めようとする動きがある。藤和(広島県福山市)は13秋冬から視認性が高いウエアのラインとして「FLASH IMPACT(フラッシュインパクト)」投入。これまでの高視認性安全服とは一線を画したデザインを追求し、「一般の人でも着用しやすい新しいカテゴリーのワークウエア」の創出を狙ったものだ。今秋冬では、年間着用できるロングスリーブジャケットを開発。一見、普通のスタイリッシュなウエアに見えるが、光が当たると大部分が反射し、安全性を高める。

 タカヤ商事(福山市)は、高視認性安全服「NIGHT KNIGHT(ナイトナイト)」で新ライン「リフレクティヴモード」を追加する。JISなどの規格に適合したプロモデルとテーストをがらりと変え、「デザインを進化させ、安全服の概念を変える」ウエアとしてすっきりとクールなデザインのリフレクトジャケットを打ち出す。プロモデルについても「国内でも初めて」となるレッドを追加し、市場開拓を加速する。

 クロダルマ(同府中市)は、30年前の安全服をベースにレトロな印象の視認性が高いウエアを開発した。カラーはネイビーとベージュの2色を用意。ありそうでなかなか無いデザインが面白い。

 サンエス(福山市)は高視認性安全服の分野では後発だけに、規格に準拠しながらも他社よりも値ごろ感を出した価格設定にする一方、独自性の機能を追求。名札入れや収納性が高いポケットなど、ユーザーをヒヤリングし、ニーズをとらえた商品を開発した。

〈ハミューレ/プロノ名寄店、試験的な出店が予想外に!?〉

 作業服・用品店「プロノ」を展開するハミューレ(北海道札幌市)が、4月8日にオープンしたプロノ名寄店(北海道名寄市)は、開店1カ月で早くも月間売り上げが全店舗のなかで過去最高を達成した。人口が少ない都市にあえて出店する実験的な試みだったが、武居秀幸社長は「予想以上に客数が多かった」と述べ、この結果を踏まえながら、今後の新たな店舗展開に生かす。

 名寄店は2年ぶりの新設店。名寄徳田ショッピングセンター内にあり、売り場面積が約860平方メートル、プロノでは最大規模となり、作業服をはじめ手袋、靴、安全服、工具、肌着、靴下など約2000アイテムをそろえる。名寄市は北海道の北部に位置し、人口は約2万8000人(2015年)、商圏人口は7万人ほどと言われる。

 あえて人口が少ない都市に出店した背景として「過去にどういった店が売れていたかを分析し、実験的に出店してみたかった」(武居社長)。実際、店舗のなかでショッピングセンター内に位置する「プロノ盛岡南店」(岩手県盛岡市)の売り上げが堅調に推移していたこともあり出店を決めた。

 名寄店は、建築土木作業用品だけでなく女性用農業用衣類を充実。バリアフリー設計で休憩スペースやいすを備え、これまでの店舗とはレイアウトを変えて、幅広い客層に対応する。

 近隣にはイオンモールをはじめ、カジュアルチェーン店など集客力の高い店舗が多く、結果的に「客数も伸びた」。同社にとって月間での店舗の最高売り上げ更新は、前身の「ワークショップ光成」岩見沢店が達成して以来、実に15年ぶりと言う。

 近年、ホームセンターや、ディスカウントストアが作業服の品ぞろえを強化するなか、今後はますます競合が激しくなりそうなワークウエア市場。既存のワークショップの出店戦略についても新たな方向を探る動きが活発化していきそうだ。