東洋紡「ザイロン」/高級スピーカーに採用/振動板に適した物性が評価

2016年08月08日 (月曜日)

 東洋紡のPBO繊維「ザイロン」がこのほどヤマハの高級スピーカー「NS―5000」の振動板に採用された。振動板に求められる比弾性率の高さと大きな内部損失を併せ持つ特徴が評価された。

 スピーカーの振動板には比弾性率(材料の弾性率を比重で割った数値)と内部損失という物性が重要になる。比弾性率が高いと材料中の音が伝わる速度が速くなり、内部損失が大きいと振動が吸収されて減衰する速度が速くなり、後から出た音と共振せずにクリアな音を出すことができる。

 このため振動板には比弾性率が高く、内部損失の大きい材料が求められるが、比弾性率と内部損失は相反する物性のため、両方を高レベルで実現する材料は少なく、従来はアラミド繊維や炭素繊維が使用されている。

 これに対してザイロンはアラミド繊維の2倍の比弾性率と、炭素繊維よりも大きな内部損失を併せ持つ。このためスピーカーの振動板として理想的な材料として評価され、今回の採用につながった。

 ヤマハのNS―5000は、ザイロン100%織物を使った新開発の振動板をツィーター(高音)、ミッドレンジ(中音)、ウーファー(低音)全てのユニットに採用した一般家庭用スピーカーとしては初の製品となる。振動板にはヤマハ独自のモネル合金蒸着コーティングを施した。

 通常、振動板の材料は低音、中音、高音を出すユニットごとに異なるが、NS―5000は全てのユニットにザイロンを使用することで音色と音速ともに全帯域を統一した聴き心地の良さと厳密な音の再現力を高レベルで実現した。