ひと/東レ・機能製品事業部門長に就いた 鳥越 和峰 氏/部門間連携を促進

2016年08月09日 (火曜日)

 1983年に東レ入社後、長くファッション素材を担当した。その後2005年から東麗〈中国〉投資でコンバーティング事業に携わり、10年から婦人・紳士衣料事業部長、13年からのタイ赴任を経て今年5月に機能製品事業部門長に就いた。

 長く携わったファッション素材では毎年商品を変えなければならないプレッシャーもあったが、「担当者の役割も大きく、やりがいがあった」と言う。中国では地場の機業や染工場との取り組みによるコンバーティング事業を担当、100件以上を回って取り組み先を作っていった。「東レという会社の説明から始めなければならない」など日本とは違う苦労もあったが、ここで築いた人間関係は今も自身の財産となっている。

 タイに赴任した13年はデモによる空港封鎖など政治の混乱があった年。社長を務めたタイ・トーレ・テキスタイ・ミルズ(TTTM)は学生服向けを中心に安定した基盤を持っていたが、翌年からその影響が商売にも出た。その対応として2ウエーストレッチ、先染めなど特品の拡大を進めたことが印象に残っているという。

 そして今年5月に機能製品事業部門長に就いた。あいさつ回りでは「顧客との関係をしっかりと作っているし、新しい仕掛けもできている」と前任者や今のメンバーの功績を実感し、「これからの仕事を楽しみにしている」と話す。今後、重視するのは顧客とのパイプを太くしてシェアを上げることと、新しい種を育てていくこと。加えて他の部門との連携も強化する。

 他部門との連携を重視するのは、ユニフォーム、スポーツ、婦人で重なる部分がさらに増えているためだ。例えば婦人のファッション素材は機能を追求し、ユニフォーム素材では感性が求められている。その中で機能製品事業部門の商品に手を加えれば婦人で売ることも可能だし、スポーツの素材をユニフォームで提案することもできる。

 東レの強みは、各部門がモノ作りや顧客との関係作りをしっかりと進めていること。「縦のラインはしっかりできている」という中で、さらなる発展に向けては「もう少し横の交流を増やせば」と話す。横の連携が進めば提案の幅が広がるとともに、開発の共有化など効率化にもつながる。既に交流が進んでいる部分はあるが、部門長の立場としてさらに交流を促進したいと考える。

 海外生産・海外販売の拡大にも注力する。生産はタイ、インドネシア、マレーシアなどとの取り組みを増やし、販売面では欧米の強化に加え、東南アジアや中国向けにも注力する。そして素材開発では、環境、安全、防災、健康に、「快適性」の切り口を加えていく考えだ。

 仕事上で大事にしているのは先輩から聞いた「自利他利円満」という言葉。顧客との関係、仕入れ先との関係など全てにおいて片方だけ得する商売は長くは続かない。これは人間関係にも言えることで、自分だけでなく相手の視点に立って考えることを心掛ける。趣味はスポーツ全般で、「体を動かすことが好き」。そのほか読書、旅行、車、パワースポット巡りなど多趣味で興味があることをいろいろと試している。

(星)

 とりごえ・かずみね 1983年入社、2010年婦人・紳士衣料事業部長、13年トーレ・インダストリーズ〈タイランド〉取締役兼タイ・トーレ・テキスタイル・ミルズ社長、16年5月機能製品事業部門長。