高性能繊維特集/時代のニーズに応える繊維/環境、安全、軽量化などに貢献/マーケットは成長が続く

2016年09月12日 (月曜日)

 高性能繊維には高強力・高弾性を特徴とするパラ系アラミド繊維、高強力ポリエチレン繊維、高強力ポリアリレート繊維、耐熱性・難燃性に優れるメタ系アラミド繊維、PPS繊維、フッ素繊維、ポリエーテルイミド(PEI)繊維、さらに両方の特徴を持つPBO繊維などがある。足元では原油安などで動きが鈍る用途が一部で見られるものの、全体では引き続き市場は拡大する。「環境」「安心・安全」「省エネ」「省力化」など今の時代に求めるニーズに貢献できる素材であるためで、中期的にも市場の成長が見込まれている。

 世界的に見ても日本は高性能繊維をリードする役割を担う。今後に向け、マーケットの拡大に対応する生産能力の増強、さらなる性能の向上に向けた開発、新規市場・用途の開拓など各面での取り組みが加速していく見通しだ。

〈高機能タイヤなどが好調/メタは生地での展開を強化/帝人〉

 帝人のアラミド繊維はパラ系、メタ系とも堅調で、今後も拡大を狙う。また、太繊度の高機能ポリエステルも安定しており、足元は堅調に推移する。

 パラ系アラミド繊維は「トワロン」「テクノーラ」とも堅調だ。トワロンは高機能タイヤ向けが引き続き拡大しており、ブレーキ用なども堅調だ。また、テクノーラは海底油田関連で原油価格下落の影響が見られるものの、ゴム資材用が拡大するなど全体として堅調を持続する。

 今後も全方位・全用途で拡大を図る考えで、市場の成長を見ながら順次増産を検討するほか、自動化投資なども行っていく。また、強度など更なる性能向上や品質改善などの開発を加速するほか、新しい用途開拓も進めていく。メタ系の「コーネックス」「コーネックス ネオ」も堅調に推移しており、設備はタイトな状況が続いている。ターボチャージャーホース用などが着実に伸びているほか、防護衣料用も国内向けが堅調で、今後はインドや東南アジアなど新興国向けの拡大も見込む。

 メタ系では今後、テキスタイル展開の強化を図る考えで、川中との取り組みを強化してサプライチェーン(SC)を整備していく。タイのほか、インドでも紡績から織布、加工まで可能にするなどグローバルにSCを強化していく。テキスタイル開発の人材を充実させるなど人材教育にも力を入れていく。

 ポリエステル繊維は構造改革を進める中で全体としての投入数量は落としているが、その中でも太繊度の高機能ポリエステルは安定している。シートベルト関連やゴム資材のほか、土木などの用途も堅調だ。今後に向けては帝人フロンティアとの連携を強め、タイヤコードなどのビジネスを拡大していく。帝人グループのタイヤコード工場も絡めて、原料販売ではなく川中・川下方向に進んだ新たなビジネスモデルを構築していく。

〈特徴生かして用途開拓/新プロセスの開発目指す/クラレ〉

 クラレの高強力ポリアリレート繊維「ベクトラン」の本年度上半期(1~6月)の販売量は前年同期比微増となった。一部で原油価格下落の影響で需要が鈍る分野があったものの、この1~2年で進めてきた用途開拓が進んだことが背景。下半期は上半期に原油価格下落の影響を受けたロープやケーブルも回復を見込み、上半期以上の販売数量を狙う。

 今後は特に中繊度・細繊度品の拡大に注力するほか、加工品での展開も増やす。現状、糸では28デシテックス(T)、テキスタイルでは100Tや50T使いも展開している。「他のスーパー繊維よりも細い糸が生産しやすい」(小林敬幸繊維資材事業部機能素材部長)という特徴を生かし、デバイスの小型化など市場の流れに対応した用途開拓を進めていく。

 このほか、原着によるカラーバリエーションを生かした用途開拓にも力を入れる。

 また、糸売りだけでなく、テキスタイルでの展開など加工度を高めた展開も増やす。ベクトランの特徴を生かした製織方法の確立など加工度を高めることでさらにベクトランの特徴を出していく狙い。

 用途開拓においては、強度ではなくベクトラン独自の優位性を生かしていくことを重視する。具体的には(1)低吸湿性(2)低温下での物性安定(3)耐切創性(4)振動減衰性――などの特徴を生かす。例えば振動減衰性を生かしたコンポジット用途の開拓などに力を入れる。

 まずは収益性の高い用途の比率を高めながら現状の年産1000トンをフル稼働させることを重視するが、中期的にはコスト競争力のある新プロセスの開発にも取り組む。来期は現中計の最終年度であり、この1年をベクトランの方向性を決める重要な期間と位置付けて各方面の取り組みを加速する考えだ。

〈来期はツヌーガを増設/イザナスでも改造投資/東洋紡〉

 東洋紡の「イザナス」「ツヌーガ」「ザイロン」はともに堅調で、フル稼働が続いている。4~6月の販売数量は前年比微増となり、7~9月も同様の形で推移する。今期は約5%の拡大を目指し、増設や改造投資を行う来期はさらに伸ばす計画だ。

 超高強力ポリエチレン繊維「イザナス」の主力用途は船舶係留ロープ、ネット、釣り糸、防御関連、補強材などで、今上期は特にロープやネットがけん引役になっている。

 今後に向けては、マーケットの拡大や軽量化・省エネなどエコへの流れを背景にさらなる拡大を狙う。中国との競合が出ている中、さらなる機能性向上を進めながら拡大していく考えで、特にアジア市場を伸ばす。

 用途では、特にFRC、FRPなど複合材料を伸ばす。また、来期には設備の改造投資を行い、引っ張り強度がさらに高いタイプの展開を開始する予定で、新商品を生かした新規用途にも注力する。

 溶融紡糸式の超高強力ポリエチレン「ツヌーガ」は、約80%が耐切創手袋用だが、「安心」「安全」の流れで需要が拡大している。新興国での需要が拡大するとともに、中小規模の工場での使用も増えているため。このため、来期は設備の増強を行い、売り上げと販売数量を2倍に拡大する計画だ。耐切創性に加えて、イザナスよりも柔らかさ、風合いなどにも優れる点を生かし、手袋用途のさらなる強化を図る。イザナス、ツヌーガとも、用途開拓を進めていく上で、織物での展開なども進めていく。

 ポリパラフェニレンベンズオキサゾール(PBO)繊維「ザイロン」は近年の用途開拓の進捗でフル稼働となり、今上期も計画通りに推移する。特に伸びているのがゴム資材用で、自転車のチューブレスタイヤ用などが伸びている。耐熱性を生かして、アルミ工場など高温下での作業がある場所での使用も増えている。例えばロボットアームの防護用などで、労働者の安全確保に加えて、工場のロボット化なども追い風になっているという。

〈耐切創手袋用途に広がり/薄手などニーズへ対応/東レ・デュポン〉

 東レ・デュポンが国内市場をメインに展開するパラ系アラミド繊維「ケブラー」の用途が拡大を見せている。航空機向けなどの高機能タイヤのほか、火山噴石による建物被害を防ぐ屋根補強材といった用途へも東レ本体との連携で広がった。そうした中で新規顧客が増加しているのが、耐切創手袋だ。

 耐切創手袋用途は、数量で約15%を占めている。平井陽常務ケブラー事業部門長は「数量はここ数年で増えてきた」と話すが、そのけん引役が商材の高度化であり、「15ゲージの薄手タイプなどに大きな注目が集まっている」と言う。

 従来の耐切創手袋は7ゲージなど厚手タイプが主流で、短繊維使いの薄手タイプはほこりが出やすいなどの問題があった。同社は糸を新たに開発し、長繊維使いでほこりが出にくい薄手タイプの提案を可能にした。薄地による操作性の良さやほこり発生の抑制というメリットが評価され、精密機器やガラスなどを扱う現場に浸透してきた。

 その他、ステンレスとの芯鞘構造糸の使用や帯電・耐久性を加味したものなど多種多様なアイテムをラインアップする。平井常務は「顧客が必要としている安全性を手袋で確保できるように、多様なバリエーションをそろえておくことがわれわれの役割でもある」と述べた。

 求められる安全性は顧客ごとに異なる。このため、国内手袋メーカーや商社数社と連携を図りながら、個々のニーズを吸い上げる動きを加速。また、手袋の導入コストと事故発生時のロスを比較できるシミュレーションソフトを使った顧客への説明も進めている。