中国企業にも東南アジアシフトの波/AFF・東京2016/420社が一堂に集結/9月28~30日に開催

2016年09月16日 (金曜日)

〈日本市場拡大に挑む〉

 今月28~30日、サンシャインシティ文化会館B、C、Dホール(東京都豊島区)で、「AFF・東京2016」が開催される。AFF(アジア・ファッション・フェア)は繊維・アパレルOEM/ODM展示会として日本最大級。2003年に「チャイナファッションフェア」(CFF)としてスタートし、春は大阪、秋は東京で開催してきた。2014年は福岡、15年は名古屋で初開催し、今回で29回目となる。14年の東京展から出展者をアジア全体に拡大し、名称もAFFに改称。今回のAFF・東京2016でもアパレル、服飾品、素材、副資材、ホームテキスタイルなどの関連メーカー・商社約420社が出展し、総面積8500平方㍍に490ブースを構える。対日貿易経験が豊富で、アジアに工場を持ち、ODMはもちろん、高機能・ファストファッションなど幅広いニーズに対応可能な企業が集結する。

〈15年の東京展比19社増/中国企業の展示に変化〉

 CFFから数えて29回目となる「AFF・東京2016」。出展者数は420社と15年の東京展と比較して19社増とさらに拡大した。420社のうち中国企業は404社と実に96%に上る。中国繊維企業の日本市場開拓の意欲はこれまでと変わらず高いと見てよさそうだ。

 ただ、日本企業が中国の人件費上昇を背景に東南・西南アジアシフトを進める昨今、中国企業の展示にも新たな変化が見られる。

 とりわけ今年のAFFの大阪展と名古屋展のブースで目立つようになったのは東南アジア工場でのオペレーションの打ち出しだ。中国企業自らが東南アジアの繊維企業に出資したり、工場を持ったりすることでコスト競争力を再び手に入れようとしている。既に進出している国は、バングラデシュ、カンボジア、ラオス、ベトナム、ミャンマーなどでいずれも労働コストでメリットが期待できる。メインの輸出先である欧米向けではアフリカでも中国企業が縫製工場を構える動きが見られるようになっている。

 こうしたコスト対策を進めることで低コスト生産の商品から、従来の中国国内工場での高品質、小量、短納期対応まで幅広いニーズを取り込める体制を訴える企業が増加している。

 さらにブースでの商品の見せ方にこだわる企業、日本の中国人留学生などを一時的に雇用し日本語対応を充実させる企業などブース自体に価値を付けるところも出てきている。

〈初のPRムービー制作/AFFの知名度アップ〉

 日中経済貿易センター(大阪市中央区)は今年の名古屋、東京でのAFF展に向けて、初となるPR動画を制作した。

 動画投稿サイト「ユーチューブ」で配信している。カラフルなレオタードを着た美女3人が美しい砂浜でオリジナルソング「AFFの歌」に合わせて生き生きと踊り、展示会をアピールする内容で知名度アップを狙う。このためにタイに出張して撮影したという力作だ。

 出演するのは福岡のモデル・タレント事務所キュール・エンターテインメントに所属する吉崎綾さんを中心とした3人。歌詞には「来場者が増えてくれたら、もっといい仕事がもらえるのかしら」という部分があり、ひたむきに芸能活動に励む美女たちの本音がこもる。

 同センター経済交流部の曲遠昭さんは、「知名度を高めて多くの人に来場してもらえれば」と期待する。

〈中国経済減速が影響か/幅広いニーズに対応〉

 こうした中国企業の変化の背景にあるのは、中国経済成長の鈍化や現地の繊維産業の伸び悩みからくる焦りかもしれない。前回の東京展の出展企業からは「(中国では)倒産の話もよく耳にする」「日本からの受注が減り、中国国内では空いているスペースが多くなっている」「工場が多く今後、淘汰(とうた)されていくことは間違いない」といった声が聞かれた。

 統計もこうした声を裏付ける。中国政府が年初に発表した15年の貿易統計によると、輸出と輸入を合わせた貿易総額は、前年比8%減の3兆9586億ドルで、6年ぶりに減少となった。輸出は欧州など主要輸出先の景気減速が影響し2・8%減の2兆2765億ドル、輸入も内需が振るわず、14・1%減の1兆6820億ドルと大幅に減少した。

 日本の衣類の輸入統計でも減少傾向が鮮明だ。日本繊維輸入組合が財務省貿易統計を基にまとめた2016年1~6月のアパレル輸入統計によると、中国からの輸入は金額が7635億円(12・5%減)、点数が12億2846万点(3・0%減)と金額、数量ともに減少。全世界からの輸入額におけるシェアも金額が62・9%、数量67・5%でそれぞれ4・0ポイント、3・6ポイント減少した。一方で、東南・西南アジア諸国はシェアを高める傾向がある。

 今年のAFF大阪展で、中国企業に対日取引数量を聞いたところ総じて5~15%減少したとの声が多く聞かれた。また、利益でも「5~6年前に比べる大幅に下がっている」と話す経営者もいた。

 そうした苦境の中、「AFF・東京」は中国企業にとって日本市場拡大を図る一大チャンスと映っているはずだ。曲がり角を迎えた中国経済。果たして中国企業は今回の東京展でどのような新たな仕掛けを展開するのだろうか。

〈「AFF・名古屋2017」/17年2月に開催決定〉

 第3回目となる「AFF・名古屋2017」の開催が決まった。日程は2017年2月21~23日、会場は名古屋市千種区の名古屋市中小企業振興会館吹上ホール。

 名古屋開催の定着を狙う。2月に開催するのは次回が初めて。AFFの開催回数は次回で前身のCFF展から数えて節目の30回目を迎える。記念イベントをするかはこれから検討する。

 今年7月5~7日に開催された名古屋展の来場人数は1000人割れと想定以上に厳しい結果となったため、3度目は継続するか否かを含めた試金石となりそうだ。

 AFFを運営する中紡広告展覧公司の孫暁明総経理は「中国から日本へのアパレル輸出の環境は厳しいが、名古屋でのAFFはまだ2回目でポテンシャルは大きい」と次回展に期待する。また、中国のコスト高や日本の消費不振などにより、1~5月の対日アパレル輸出が減少していることを挙げながら、「困難なときこそチャレンジ精神を持って続けていくことが大事」と強調した。

〈インタビュー/一大ビジネスチャンスに/日中経済貿易センター 経済交流センター本部長 専務理事 山田 寧 氏〉

 年々、規模を拡大してきた「AFF・東京2016」。近年の出展者の傾向について主催する日中経済貿易センターの山田寧専務理事に聞いた。

  ――今年は前年以上に規模が拡大しています。出展企業各社が打ち出す商品や方針で共通した傾向はありますか。

 今回展の出展者数は前回比20社増の420社、小間数では18小間増の490小間と拡大しています。今なお出展の問い合わせがありますが、会場の都合で断らざるをえない状況です。

 出展企業の国別の内訳は中国から404社、カンボジア9社、ミャンマー6社、バングラデシュが5社、日本2社、パキスタン1社、ベトナムが1社です。出展企業をアジア全域から募るようになって3年目ですが、圧倒的に中国が多いのが現状です。

  ――出展者増加の背景は。

 中国国内の景気減速にあると思います。2017年1~6月の日本の中国からの輸入データを見ると金額で前年同期比2桁%減少、数量でも減少しています。近年、減少傾向が続いており、下げ止まりの気配は見られません。出展企業としてはAFF展を一大ビジネスチャンスと捉え、日本企業からなんとしても新たな顧客を開拓したいと考えているはずです。

  ――中国の出展企業から日本に来る人はどのくらいになりますか。

 山東、江蘇からそれぞれ150人、浙江からは100人、広東、河北、河南、大連、内蒙古からそれぞれ10人ほどという内訳です。タオル、衣料、インテリア関連といった各地域に得意な分野がありますので、そうした各地域の特産品が一堂に集うのが今展の魅力でもあります。

  ――出展企業に共通する傾向は。

 日本企業は近年、中国生産から東南・南西アジア地域への生産シフトを盛んに進めていますが、そうした影響で、中国企業が自ら東南・南西アジアに生産拠点を持ち、OEM(相手先ブランドによる生産)やODM(相手先ブランドによる企画・生産)を始めるケースが増えています。

 それにより人件費の低い国や地域で低コスト生産対応を強化すると同時に、従来の中国の工場では高付加価値品、短納期対応をするという具合に、幅広いニーズに応えられるようになっています。

 まだ浸透していませんが、自ら自社ブランドを立ち上げて日本市場を攻める企業も現れています。