シルバー・介護ウエア特集(2)

2016年09月28日 (水曜日)

〈介護ウエア新局面/広がる提案バリエーション〉

 高齢社会に突入した現在、総人口で65歳以上の高齢者世代人口が占める割合が27%を超えた。さらに2025年には団塊世代すべてが後期高齢者となり、超高齢社会が到来する。その時介護分野では38万人の人材不足が予測されている。そういった中、介護職員が着用するユニフォームがあらゆる切り口で打ち出されている。ここでは各社の最新介護ウエア事情をリポートする――。【】はHCR2016のブース番号

〈「プロらしさ」追求した新シリーズ/現場取材で開発/ナガイレーベン〉

 ナガイレーベンの新シリーズ「プロ・ファンクション」は、名前の通り医療・介護のプロのために開発されたウエア。実際の現場に取材し看護、介護の動作を研究、必要な生地の伸びを数値で把握した上でデザインを起こすという手法をとり、素材のストレッチ性に頼らず仕様とカッティングで高い動作性を実現した。

 要望の高い暑さ対策では「煙突効果」と「ポンピング効果」により湿度を衣服内に滞留させない設計で、蒸れにくい。さらに接触冷感素材で快適性を高める。デザインはすっきりスポーティー。チュニック、スクラブ、ケーシーの6型で展開する。今後は「医服内環境」をコンセプトに、医療・介護それぞれに適した機能性ウエアを企画する。

【ブース】5―07―04

〈介護で求められるスクラブ/プロ仕様で訴求/フォーク〉

 フォークは、今年のHCRでもメディカルウエアの「スクラブ」を介護向けに提案する。福岡女子大学が実施した「高齢者介護施設における介護服に関する全国調査」では「施設利用者は介護で一般的なポロシャツよりスクラブを好ましいと思っている」という結果が出た。理由はスクラブの活動性とデザイン性にある。同社は「ポロシャツのように普段着のようなものではなく、プロが着るユニフォーム」として訴求していく。

 イチ押し商品「7022SC」は着脱しやすいジップタイプ。メークなどが付きにくい。ポケットも特徴がある。「重量拡散ポケット」はアームホールに小さなショルダーバックを付けたような形状で、重さが四方に分散され、動きを妨げない仕様。PHS用の専用ポケットは出し入れがしやすいサイズで、右脇下に設置した。

 ほか、ユーザーと共同開発した新商品、介護用スクラブも前面に打ち出す。【ブース】4―06―02

〈介護現場を明るく/機能性・清潔感前面に/カゼン(アプロンワールド)〉

 「KAZEN(カゼン)」の介護向けユニフォームは機能性や耐久性、さらに「介護の現場を明るくするようなユニフォーム」を指向する。スタイルはシャツ、ジャケット、ジャージー。シャツはきちんとした印象のシャツスタイルと、動きやすくカラーバリエーション豊富なポロシャツ。通気性や吸汗速乾性、耐久性などにも優れる。

 ジャケットは動きやすさやポケットの収納力に配慮した、機能的なスタイル。清潔感とはつらつとした雰囲気が特徴。

 ほかに介護現場に欠かせないエプロンでは動ききやすさに着やすさ、ポケット収納力に配慮、耐久性や撥水(はっすい)性もしっかりと兼備する。

 スポーツブランド「アディダス」とキャラクターの「アンパンマン」のウエアもセグメント提案を強化していく。

【ブース】4―06―09

〈商品の説明会や勉強会/「PEP」の販促強化へ/アイトス〉

 アイトスは、介護事業展開概況と今後の強化点、課題などについて明確な方針を打ち出している。

 中でも販売代理店に対しては、商品の説明会や勉強会を開き、同社の「PEP」の販促やユーザーへの同社「PEP」の販促を強める。「HCR」などの展示会にも積極出展し、ユーザーへのPEP認知度向上を図る。

 今後の強化商材については、カラーバリエーション豊富な商品をそろえる。

 今後の介護市場見通しや、問題点については、後期高齢者人口が一気に増え、2025年まで介護市場は増加傾向になるとみられるが、必要とされる介護人材や施設の不足が問題であるとする。

【ブース】5―11―11

〈ブランドの認知広げる/多色のカラーが魅力/セロリー〉

 セロリー(岡山市)は昨年、本社と東京に介護ウエア「アイフォリー」を販売する専任担当者を配置、エンドユーザーへブランドの認知を広げるとともに、ユニフォーム更新情報の集約と販促活動を進め、市場開拓を進めてきた。

 HCRでは「笑顔でつながる、ココロつながるやさしいユニフォーム」をテーマに出展する。シーンに合わせやすい、多色カラーバリエーションや、空気中の酸素や水分と反応して雑菌などの繁殖を抑えて、気になる臭いを軽減する「TioTio(ティオティオ)」を使ったユニフォーム、ケアワーカーのために開発したパンツ「動パン」などをアピールしていく。

【ブース】4―05―13

〈求められる新商品の開発強化/産学共同研究も推進/シーユーピー〉

 シーユーピー(岡山市)は、市場が求めているものと介護福祉の分野に必要な機能を備えるものをミックスした新商品の開発を強めている。HCRでは介護ウエア「プロフィーリング」を中心に、機能はもちろんデザイン性も重視した新商品を披露。職種別ユニフォームを提案する。

 上質で洗練された印象を与える「アイナ」も新商品が充実。ユニフォームだけでなくバッグなど関連商品や産学共同研究した商品コーナーを設け、総合的にアピールする。

 「良質」をコンセプトに来場者が入りやすい開放感のあるブースとすることで、直接ユニフォームを手に取って良さを感じてもらえる工夫を凝らす。

【ブース】4―04―11

〈それぞれの施設に対応/各ブランド特徴生かす/住商モンブラン〉

 住商モンブランは、医療・食品サービスで培ったノウハウを生かした「モンブラン」ブランドに加え、優しさと落ち着きを求めるユーザーへ「ローラアシュレイ」、リハビリや予防介護などを取り入れる施設には「アシックス」を用意し、幅広く市場に対応している。今後は、さらに各ブランドの特徴を生かした(強化した)商品展開を行い、それぞれの施設に対応していく方針だ。

 花柄で有名な英国のローラアシュレイ、スポーツアスリートを支えるアシックス、オールラウンドに対応できる品ぞろえのモンブランと、個性の異なる3ブランドを幅広いニーズに応える商品提案を行う。

 今後の介護市場については、高齢化社会に向けユーザーの趣向は多様化し、かつ、細分化する傾向にあり、いかに的確な対応ができるかが課題となるとみる。

【ブース】5―08―11

〈大都市圏の開拓強める/施設へパッケージ提案も/トンボ〉

 トンボ(岡山市)は、大都市圏の開拓を強め、小規模施設、通所、訪問系サービス事業者へアプローチし、医療と介護連携を意識したユニフォームの市場を掘り起こす。

 HCRでは「for further lerp(未来に向かって羽ばたく)」をテーマに、料理研究家の栗原はるみ氏とのコラボ企画の介護ウエア「栗原はるみ」や主力ブランド「キラク」、理学・作業療法士ウエアなどトンボメディカル、患者衣・室内衣といったコンフォートウエア新作を打ち出す。さらに施設現場(老健、特養など)ごとに、ユニフォームのパッケージ提案をするなど、ニーズにより応えることで市場開拓を加速する。

【ブース】5―10―07

〈次世代の介護ウエア/ニーズの高いアイテム進化で/カーシーカシマ〉

 カーシーカシマはカタログ「ハートグリーン」の新商品でトップスにチノパンのセットアップを提案する。トップスはブルー、オレンジ、ネービー、グリーン、ピンク、ブラウンの自然界の色を基本に、ニットシャツを押す。

 「トロンプルイユ ニッティ」はホワイトのカラーにストライプ地で「きちんと感」を演出する。着脱しやすい「かぶりシャツ」タイプ。「エアスルーポロ」(写真)は前立てを別布使いにしてネクタイを着けているような印象に。同シリーズの「フルール」はレディース専用で、襟元をセーラー風に仕立て、おしゃれでメディカルウエア風の整然としたイメージ。

 アクアボーダーエプロン、バイカラーのカーディガンなどニーズの高いアイテムも進化させ、次世代のスタイルを予感させる。

〈新立体裁断パンツ投入/独自の存在感高める/明石スクールユニフォームカンパニー〉

 明石スクールユニフォームカンパニー(岡山県倉敷市)では、2012年から展開している「ルコックスポルティフ」の介護ウエアが、スポーツ分野で培われた、動きやすさを追求する立体パターンでのモノ作りが評価され、好調にシェアを広げている。

 HCRではブース全体をトリコロールで演出し、大きな躍動感のある写真で快適な商品やブランドをアピール。裁断線を少なくした新立体裁断パンツを打ち出す予定で、特徴付けがしにくいボトムスで、ニット素材から織物素材まで豊富なラインアップが完成する。

 フランスブランドならではのデザイン、カラーリングによって市場での独自の存在感を強めていく。

【ブース】4―05―12

〈市場浸透に手応え/よりマーケティングに注力/ボンマックス〉

 ボンマックスが展開するケアウエアカタログ「ナチュラルスマイル」はデビュー3年が経過した。「市場反応並びに業績推移ともにある程度の手応えをつかんだ」との評価だが、いまだユニフォームとして“スタンダード”が決まっていない介護ウエア分野で同社は、「これまで以上にマーケティングを強化し、今後も顧客ニーズに対応した新提案を積極的に行っていく」。

 同商品群はファッション性・機能性・リーズナブル価格という三要素を軸にした高感度な提案が特徴で、今後もユーザーの声を反映させた商品開発に注力する。介護市場は成長分野とはいえ、不確定要素が多い。「今後も顧客の声をよりディープにヒアリングしながら、市場全体を注視していきたい」という。