ノンウーブン/不織布の世界/ESファイバービジョンズ
2001年07月27日 (金曜日)
米産品の本格販売開始。国内、広州工場の対応は
ESファイバービジョンズ(以下ESFV)が米国でオレフィン系複合繊維の本格生産を開始する。世界最大のポリプロピレン短繊維メーカーであるファイバービジョンズと世界最大のオレフィン系複合繊維メーカーのチッソとの合弁会社であるESFVは強者連合だが、米国での複合繊維生産はチッソポリプロ繊維(滋賀県守山市)と中国・広州ES繊維有限公司の操業に影響を与えるだけに、チッソの出方が注目されている。
オレフィン系複合繊維の主力である熱融着繊維は紙おむつ用サーマルボンド不織布(TB)の原料として使われる。芯ポリプロピレン、鞘ポリエチレンからなる同繊維を使用したTBは紙おむつのトップシート(赤ちゃんの肌に直接触れる部分)に使うもので、ポリプロピレン短繊維の最大用途でもある。
そこで圧倒的なシェアを握るチッソが、米ファイバービジョンズと昨年1月にESFVを設立。同年4月から実質的なスタートを切った。これまでチッソはある総合商社と組んで展開したチッソポリプロ繊維(年産4万トン)や広州ES繊維(同1万トン)で生産する複合繊維の海外での販売は全てESFVが担うことになった。いわゆる商社抜きだ。もちろん、商社が簡単に手を引いているわけではないが…。
そのESFVが今夏から米国工場で生産するオレフィン系複合繊維の販売を開始する。昨年秋からの販売を予定していたが、ユーザー評価に手間取ったこともあって、今夏まで遅れたものだ。
これにより、広州ES繊維から米国への輸出商権がなくなる。これは相当量あるとみてよい。また、これまで広州ES繊維で生産できない品種はチッソポリプロ繊維で対応していたが、それもなくなる。
これをカバーするため、チッソでは東南アジア地区での拡販を目指してきた。幸い、米生産品の販売が遅れたこともあって、東南アジアでのユーザー開拓が進み、同地区での拡販でカバーできるとみているが、東南アジア地区はダイワボウ、宇部日東化成なども虎視耽々と狙う市場。しかも、国内の紙おむつ市場はエステル系複合繊維メーカー(ユニチカファイバー、帝人、東洋紡、東レ、クラレ)などとの競合が激しさを増している。すでに、日本から東南アジアの進出する紙おむつメーカーを中心に安値玉の提示も行われているという。紙おむつに強いチッソでも楽観視はできないだろう。