開発最前線(2)/ユニチカ中央研究所(後)/ニーズに合致した開発を

2016年12月22日 (木曜日)

 ユニチカの中央研究所はコーポレートの開発拠点として、新事業を創出する重要な役割を担う。現在展開しているスパンボンド不織布や活性炭繊維などもここから生まれた事業だ。現在はコーポレート研究に特化しているが、定期的に各事業部ともミーティングを行い、市場ニーズに合致した開発を重視している。

 中央研究所の特徴の一つが重合設備を活用した開発で、特にナイロン系に力を入れている。近年の開発事例ではセルロースナノファイバーとナイロン6のナノコンポジットがある。セルロースナノファイバー(CNF)は木から得たセルロースを最小単位まで分解したもので、軽くて鋼鉄以上の強度を持つ植物由来原料として注目されている。自動車部品などさまざまな市場の拡大が期待されているが、中央研究所ではナイロンの重合段階でCNFを入れた複合材料を開発した。重合工程でCNFを入れ込むことにより、均一に分散し、強度も高まるほか、寸法安定性や曲げ弾性率の向上などを実現した。

 高耐熱性ポリアミド樹脂「ゼコット」も中央研究所から生まれた商品だ。融点が315℃と非常に高く、高結晶性、低吸水性、バイオ原料率50%などの特徴を持つ。既に500トンの中量設備が導入されており、現在は市場拡大に向けて生産性を上げてコストを下げるとともに、繊維やフィルムで展開するための開発を行う段階に入っている。

 この他、ポリオレフィン樹脂水性分散体「アローベース」やナイロンによる中空糸膜フィルターも商品化された。中空糸膜フィルターは、溶剤に強いナイロンの特性を生かし、有機溶剤の濾過(ろか)などに展開していく。溶剤の濾過はミクロン級が多いが、同社品は10ナノメートル級が可能で、半導体などに展開を広げていく。糸売りだけでなく、カートリッジでの販売も視野に入れる。

 今後の開発を加速するため人材育成に注力するとともに、「産学連携も積極的に進めたい」(松田常俊執行役員中央研究所長)とする。近年は神戸大学との情報交換などを行っているが、さらにメディカルやセンサー系など先端材料での研究開発を進めていく上で評価関連での連携なども視野に入れる。

(この項おわり)