特集 産業資材と繊維機械(1)/繊維の新たな可能性を開く

2016年12月21日 (水曜日)

〈世界的なインフラ投資熱も追い風か〉

 繊維機械にとってますます重要性を増している産業資材分野。複合材料基材など新たな用途開拓への期待が高まる一方、世界的なインフラ投資需要への期待から土木資材や建築資材といった伝統的な用途でも注目度は高い。そこで今回の特集では、特に産業資材用途に焦点を当て、繊維機械メーカー・商社の戦略を追った。

 繊維素材は古くから衣料品だけでなく、さまざまな産業資材として使用されてきた。このため繊維機械メーカー・商社にとって資材分野は今でも重要な分野であることに変わりはない。ここに来て新たな追い風として期待できるのが、世界的なインフラ投資熱の高まり。

 米国ではドナルド・トランプ氏が大統領に当選したが、トランプ氏の掲げる公約の一つに大規模なインフラ投資がある。日本でも従来の金融政策による景気テコ入れに限界が見え始めたことで、財政政策の重要性が改めてクローズアップされ始めた。

 こうした世界的なインフラ投資への期待から最近、世界的に資本財やインフラ関連資材の需要拡大への思惑が高まっている。この動きは繊維機械にとっても無縁ではない。伝統的に土木資材や建築資材として繊維製品は大きなウエートを占めているからだ。

 今後のインフラ投資は、従来型の産業資材だけでなく新たな材料を積極的に活用した形で実施される可能性もある。例えばコンクリートや金属に替わって高機能繊維を基材とする複合材料などを使用するケースだ。あるいはセンサーデバイスを融合させたIoT(モノのインターネット)といった機能も実用化されるかもしれない。

 このため産業資材向けの繊維機械は、ますますその役割が大きくなることが期待できる。実際に繊維機械メーカーや商社は、具体的なソリューションをさまざまに用意している。材料としての繊維の可能性は無限大に広がっているといえるだけに、新たな設備投資も含めて産業資材用途での繊維機械の重要性は一段と高まっていくことは間違いなさそうだ。

〈日本繊維機械学会/村田機械、津田駒工業を見学〉

 日本繊維機械学会は11月に村田機械の加賀工場と津田駒工業の本社工場の見学会を開催した。学会員を中心に50人が参加し、最新の組み立てラインを視察した。

 村田機械の加賀工場では、自動ワインダーと渦流精紡機「ボルテックス」の製造ラインを見学。板金加工から組み立て工程までさまざまな効率化の工夫について説明を受けた。村田機械は充実した自動搬送システムも注目された。見学会参加者からは、村田機械が板金加工機や自動物流システム、自動搬送システムも取り扱っており、こうしたシステムが今後の繊維機械分野でどのように活用されるのかといった点への関心も高かったようだ。

 一方、津田駒工業の本社工場では最新のエアジェット織機とウオータージェット織機の組み立てラインを視察した。本社ショールームも見学し、昨年の国際繊維機械見本市「ITMA2015」に出展したエアジェット織機のコンセプト機や、最新のウオータージェット織機の稼働実演を見学した。コンセプト機は毎分2000回転を超える高速緯糸挿入を可能にしており、実演に見学者から驚きの声が上がった。

〈1月に「ITMAアジア」視察報告会〉

 日本繊維機械学会は2017年1月27日に「ITMAアジア+CITME2016(上海)」視察報告会を大阪科学技術センターで開催する。TMTマシナリー、豊田自動織機、村田機械、津田駒工業、日本マイヤー、日阪製作所、コニカミノルタの技術者が「合繊機械」「紡績機械」「革新精紡機」「自動ワインダー」「織機」「編み機」「染色加工機械」「インクジェット捺染機」についてそれぞれ報告する。

 参加費は日本繊維機械学会会員1万5000円、非会員2万5000円、学生会員1000円、学生非会員3000円。定員70人。問い合わせ・申し込みは、日本繊維機械学会(電話06・6443・4691)まで。