回顧2016

2016年12月27日 (火曜日)

〈百貨店アパレル/●実需買い志向強まる●EC比率向上に注力●カスタマイズ志向も〉

 「衣料マーケットは苦戦している」(三陽商会)、「衣料は単価が下がっているが、点数が減ったわけではない。その内容が変わっている」(オンワードホールディングス)、「衣料は消費においてのプライオリティー(優先順位)が下がった」(レナウン)。百貨店アパレルにとって、2016年は厳しい年であった。

 SPA、あるいはファストファッションの台頭もあるが、14年4月の8%への消費増税以来、消費者の節約志向の強まりが根本にある。道中、株高やインバウンド需要といった場面もあったが、一般消費者の生活防衛意識は強まるばかりで、今年ほど、先物買いが影を潜め、必要なモノを必要な時期に買う“実需買い”が顕著に表れた年はないだろう。

 各社が新チャネルとして期待するのはEC。百貨店向けの売り上げが減少する一方で、ECの売上伸び率は高い。オンワードホールディングスの連結EC売り上げ高は上半期で62億円と、計画以上。通期で150億円を見込む。「ECには顧客満足に合致した価値があり、それが売り上げを伸ばす」と、同社。そこには利便性もあるだろうし、同時に発信するスタイリング提案といったサービスも寄与しているかもしれない。

 だが、「ECだけでブランドビジネスが成り立つわけではない。よりリアル店舗を磨いていく必要がある」(オンワードホールディングス)という考えも、各社に共通する。EC専用ブランドの開発という流れもあるが、ECとリアル店舗によるオムニチャネル化がアパレルの本道である。オフライン専業の業者は、他にもあるからだ。

 紳士、婦人を問わず、パターンオーダーなどカスタマイズ志向が強まったのも今年の特徴であった。個に合わせたサービスの提供が進みそうだ。

〈紳士服チェーン/●機能重視とスーツ回帰強く●レディースの存在高まる●今後はオーダー事業潮流か〉

 クールビズ開始から10年以上が過ぎ、TPOを踏まえたスタイルが徐々に機運が高まってきていると言われるが、その流れは、紳士服チェーン各社でも見られる。今年はカジュアルジャケットよりもスーツの躍進が目立ち、フォーマル回帰の流れが顕著だった。

 機能性も不可欠。春夏シーズンは、吸水速乾や形態安定など定番的な機能に加え、ウオッシャブルや防シワ、手軽に手入れできる利便性を前面に出した商品が売れ筋となった。超軽量やパンツへの通気性など夏場の着用を想定した商品も顧客から支持を受けた。

 秋冬でも保温性といった機能は外せないが、着回しのしやすさも大きなポイント。セットアップといったスタイル志向の高まりや寒暖差の激しい近年の天候に対応する意味で、汎用性にも優れるスリーピーススーツの売れ行きが良かった。

 レディース向けも年々、売り場で存在感を強めている。特にデザイン志向が強く、シャツやブラウスは機能性に加え、襟にフリルを施したものなどファッション性にも気を配った商品が目立つ。スーツに関しては、AOKIが16秋冬商戦で管理職の女性をターゲットとしたレディースの新ラインを立ち上げた。

 ここ数年、イージーオーダーやパターンオーダーという言葉をよく耳にする。当然、オーダー事業は今後の収益拡大に向けても無視できない。青山商事が「ザ・スーツカンパニー」などでスーツやドレスシャツのカスタムオーダーを今年開始したほか、AOKIはタブレット端末を使ったパーソナルオーダースーツの新発注システム「アオキ オアシス」をAOKI全店舗で運用し、メンズに加えて来年にはレディース向けでの対応も視野に入れる。

〈寝装・リビング/●羽毛産地偽装疑惑が浮上●16秋冬寝具伸び悩み●オーダーカーテン競争激化〉

 2016年の寝装寝具は、主戦場の秋冬向けが伸び悩んでいる。台風や残暑が押し下げ要因になり、9、10月と苦戦が目立った。11月に入り、冷え込みとともに需要が増したが、12月に入って失速している。秋冬の苦戦が響き、16年の売り上げが前年を下回る製造卸も見込まれ、全般的に厳しい1年となった。

 今年5月には、羽毛産地偽装疑惑問題が大手マスコミで大きくクローズアップされ、寝具業界を揺るがした。懸念された今冬の羽毛布団販売への影響はほぼ表れていない。ただ産地偽装疑惑問題は、羽毛布団が持つ価値を下げてしまい兼ねない。日本羽毛製品協同組合は、9月に産地対策委員会を立ち上げ、産地表示の適否確認を含めた仕組み作りを進めているが、羽毛布団の価値を守るため、取り組みを急ぐ必要がある。

 カーペット、カーテンも家庭用を中心に伸び悩んだ1年だった。

 日本カーペット工業組合がまとめた16年1~10月のタフテッドカーペット生産量は、コントラクトを中心としたタイルが0・3%減の一方、家庭用が中心の帖物・ラグは12・8%減と落ち込む。

 カーテンでは、製造卸が強みとするオーダーカーテンで伸び悩みが見られた。家具・インテリア大手のニトリやネット小売りの台頭による影響も大きい。業界筋によると、ニトリのオーダーカーテンの売り上げは年間70億円程度まで売り上げを伸ばしているとされ、ネット小売りでも外部業者と連携して採寸取り付けを行うサービスを始める企業が表われるなど、パイの奪い合いが激化している。カーテン卸を介さない商流が広がっており、製造卸にとっては見本帳ビジネスの深化や、ショールームへの顧客誘導などがこれまで以上に求められる。

〈ユニフォーム/●ファッション性向上●異業種が参入・事業強化●価値見直しの動き〉

 2016年のユニフォーム業界は、13年から続いてきた値上げの波が、この春でいったん収束した。これまでに経験したことのない値上げとともに、市場での労働力不足や企業イメージの向上を目指す動きの活発化によって、ユニフォームに対する価値観も変わりつつある。

 一番の変化は、ファッション性を追う動きがより強まった点だ。ワークウエアではカジュアルワークのトレンドが強まり、うまくトレンドを反映した商品を打ち出すバートル(広島県府中市)、藤和(広島県福山市)といった企業が業績を伸ばした。

 学生服アパレルも最大手の菅公学生服(岡山市)がSPAのストライプインターナショナルとパートナーシップ契約を結ぶとともに、原宿に直営店を開き、新たな動きを見せる。さらに学校教育のサポート事業を本格化するため、社団法人を立ち上げるなど、これからの時代を見据えた動きを加速する。

 オフィスウエアでは大手銀行を中心に制服更新需要が拡大。マイナス金利によって下半期から更新需要がやや低調になったが、ニット化などによる着心地や機能の向上によって、一般企業の更新は堅調で、“おもてなし”といった接客面での新たなニーズの掘り起こしで、ホテルや病院などへも市場を広げた。

 そういった活発的なユニフォーム需要に対し、一般衣料アパレルなどの異業種がユニフォーム事業を強化、参入する動きも出てきた。ユニフォーム専業アパレルにとって、一般衣料アパレルの持つファッション性が高いユニフォームの投入は、ある意味脅威であるが、見方を変えれば、消費者にユニフォームの新たな価値を気付かせるきっかけを作る可能性がある。

 さらにアイトス(大阪市中央区)、ボンマックス(東京都中央区)など、一部の企業でユニフォームの総合企業を目指す動きも一段と強まってきた。