2017新年号(11)/モノ作りを支える検査機関

2017年01月05日 (木曜日)

 メーカーのモノ作りが拡大するほど、その商品の品質や安全性などを裏付けるデータが必要になる。生産拠点が海外にシフトしても同じことが求められる。昨年は4月に特定芳香族アミン規制が始まり、ケアラベルは17春夏から刷新された。こうした変化を支えているのが検査機関である。

〈カケン/顧客ニーズへ合わせ対応〉

 検査機関のカケンテストセンター(カケン)は「中国の見直しなどアジア生産が新たな選別の時代を迎える中で、変化に合わせた対応が求められている」と言う。国内では顧客ニーズに合わせたサービスの提供、人材の育成に注力し、モノ作りを支援する。

 中国では上海科懇検験服務のほか、南通、青島、大連、寧波、無錫に拠点を設ける。「青島は苦戦気味だが、他は堅調」だ。中国から東南アジア諸国連合(ASEAN)地域に衣料品の生産はシフトしたが、「ここに来て中国に戻る動きもある」と指摘。納期に余裕がある商品などは、ASEANや南アジアにシフトできるが、短納期・小ロット生産は中国に依然として優位性があるからだ。上海科懇検験服務で抗菌性試験も開始したほか、特定芳香族アミンの試験も量的に対応できる体制にした。ASEANではインドネシアとベトナムも好調だ。

 国内では「検査機関としてニーズに沿ったサービスを提供していくという基本を堅守」していく。同時に新しい機能素材開発に対応して新しい試験の開発も推進する。昨年は重要改正3案件(特定芳香族アミン類規制、新ケアラベル対応、子供服の安全性)セミナーを、全国各地を回るキャラバンセミナーと個別企業の要望に応じる出前セミナーの2通りで開催した。情報面での支援にも優れる。

〈ニッセンケン/総合的にモノ作り支える〉

 ニッセンケン品質評価センター(ニッセンケン)は、国内で「エコテックス」や「高視認性安全服」試験など他ではできない試験を広げているほか、靴や雑貨などの需要にも取り組む。海外展開では中国、東南アジアに加え、南西アジアにも拠点を伸ばし、総合検査機関としてユーザーをサポートする。

 エコテックス規格100のロゴは昨年10月に変更され、エコテックスファミリーとして「ステップ」(持続可能な生産工場のための認証)、「エコパスポート」(染料や助剤などの化学薬剤の認証)とイメージの統一化を図った。昨年6月から開始した「エコパスポート」認証制度は、使用薬剤の安全性の担保、証明になるほか、従業員の安全性確保、染色・加工製品の安全性リスクの低減にもつながり、特定芳香族アミン規制にも対応する。

 東京事業所の立石ラボは生物試験、生活雑貨品試験のほか、防災・安全評価試験として高視認性安全服の試験も行う。日本交通安全教育普及協会の「児童向け高視認性安全服」「自転車通学者用高視認性安全服」認証ラベル制度にも協力する。

 海外では中国に5事業所を有し、インドにも3拠点を設けてインド進出企業を支援している。インド進出はニッセンケンのみ。バングラデシュ、ミャンマー、カンボジア、インドネシアでも試験や検品業務を行っている。

〈ボーケン/総合試験機関へ基盤整備〉

 ボーケン品質評価機構(ボーケン)は、繊維分野だけでなく生活雑貨や化粧品の品質試験や化学分析試験への取り組みやIT活用を強化することで“総合試験機関”への基盤整備を進める。

 繊維に関する通常の試験案件が伸び悩むなか、堅調なのが化学分析試験や機能性試験だ。堀場勇人理事長によると、化学分析試験は特定芳香族アミン(アゾ染料)に関する法規制を背景に依頼が増加した。機能性試験も抗ウイルス性試験といった新しい試験が登場したことで今後も需要拡大が期待できる。堀場理事長は「原点に立ち返って顧客と直接対話し、顧客の期待に応えるために努力していく」と話す。

 海外では上海試験センターを浦西センターに集約し、機能性試験と化学分析、生活雑貨の試験に重点を置く。通常の試験は受注好調が続く常州試験センターが中心となる構想だ。常州試験センターは2017年中旬には新建屋への移転も予定する。東南アジアはベトナム、タイ、インドネシアの3拠点連携で受注拡大を目指す。

 20年以上の実績がある生活雑貨の試験も重点分野だ。大阪事業所に続いて東京事業所にも家具の試験設備を導入した。大阪事業所では化粧品の成分分析試験もスタート。17年度は受注も本格化させる。そのほかウェブシステムや管理システムなどITの高度化も進め、ユーザーに直接接続するなど要望に応じた情報提供システム構築を目指す。

〈QTEC/トータルサポート体制で〉

 日本繊維製品品質技術センター(QTEC)は、試験業務、技術指導、適合性評価、海外展開などを通してモノ作りをトータルサポートしている。

 QTECはアパレル製品、生活用品、羽毛製品・寝装品、カーテンなどのインテリア品、産業資材の品質性能試験を行う。基本的な品質性能の評価のほか、微生物試験(抗ウイルス、抗菌、抗カビ)やカーテンの遮像性試験など新たな機能性試験も開発。特定芳香族アミンや化学分析による安全性試験でも品質をサポートする。

 検品工場、縫製工場、検品技術の品質を高める業務も実施。工場や検品工場、検品技術者のQTEC認証制度は独自のものだ。JISマーク表示、防炎ラベル、ダウンパス監査といった適合性評価業務も行っている。

 海外での事業活動も展開する。中国では上海総合試験センター(上海可泰検験)を中国の中核拠点と位置付け、一般試験だけでなく、抗菌性や消臭試験体制をいち早く整えた。青島、無錫、深センにも試験センターを設ける。昨年10月には南通浩達紡織品検測と業務提携し、南通においてもJIS試験業務を開始。日本人スタッフが常時在籍し、日本向けの技術提供や顧客サポートを行う。東南アジア・南西アジアではベトナム、バングラデシュ(ダッカ)、タイに試験センターを開設している。