Uniform Fair 2017 Spring & Summer(4)/これからの市場を見据えた次の一手

2017年01月06日 (金曜日)

〈寅壱 社長 村上 國治郎 氏/従来なかったデザイン追求〉

 2017年2月期決算は、デザイン性が高いワークウエアで多くの受注があったが、供給がスムーズにいかなかったことなどが響き、売上高が前期並みの40億円前後で着地しそうだ。ただ、2年前に立ち上げた企画開発課による、他社にないワークウエアを目指す商品開発では成果が出つつある。

 今年はその商品のデリバリーをより強化していくことが一番の課題となる。生産面では中国からベトナムへシフトし、さらにラオスでの生産も軌道に乗せながら、安定した供給に努める。

 値段が高くても他社にないような商品であれば買ってくれる傾向が出てきた中で、企画面もより強化し、商品開発をもっと進化させながら、一般のアパレルを強く意識したような従来にないデザインのワークウエアを投入していく。カタログも別に作成し、これまでのワークショップだけなく、カジュアルショップなど、一般衣料の店舗へも販路を広げる。洗練された商品を打ち出していくことで、もっと多くのエンドユーザーへ「寅壱」ブランドの認知度を広げていきたい。

〈クレヒフク 社長 江草 和広 氏/次のニーズ、早めに捉える〉

 2016年のユニフォーム市場は、低調に推移した。11年の東日本大震災、16年の熊本地震で、復興に向けてユニフォームの需要が出てくるかと思えば、政府や行政が復興後を見据えた将来を描けていないことが、“いまひとつ良くない”という雰囲気が続いている要因となっているのではないだろうか。

 当社は1990年代のバブル経済崩壊後、ツナギ服に特化して、特徴を出したものを打ち出してきた。いずれ市場の中で大手が寡占化し、ニッチな領域でしか存在感を出せない可能性があったため、特化してきたが、ツナギ服そのものも、例えば車の自動運転化で事故が無くなり、修理工の存在そのものが必要となくなれば、自然とツナギ服の需要もその分野ではなくなる。すなわち次のニーズを早めに捉え、得意とすることが生かせるかどうかが問われつつある。

 17年は得意分野のツナギ服に加え、次につながるワークウエアを創造していく。ニッチな市場でトップシェアが取れるものを打ち出していくことで、存在感を出していきたい。

〈村上被服 社長 村上 泰造 氏/目指すべき方向が見えてきた〉

 2016年は創業以来初めてとなる展示会を開き、主力のトビ服ブランド「鳳皇(ほうおう)」を中心に発信し、認知を高めることができた。ストレッチ素材をトビ服に用いるなど、オンリーワンの企画を充実させ、展示会を通じて新規顧客の開拓もできたことで、16年7月期決算は売上高が前期比10%の増収となる5億円だった。

 今期に入ってからも9月から11月の3カ月は前年同月比2桁%の増収を確保した。展示会を開いたことによる従業員の意識の変化や、目指すべき方向が見えてきたことが、良い結果となって出てきたように思う。

 今年は時代の流れを読み取り、より建設関係に特化した商品開発を強める。その中でも安全性を求める需要はますます増えてくる可能性がある。各社から電動ファン付きウエアが打ち出されるが、当社は機能性だけでなく安全性も配慮したハーネス対応ブルゾン「H・鳳皇」V7シリーズを発売する。これからのニーズを捉えた商品を打ち出すことで、新たな市場開拓につなげていきたい。

〈山田辰 社長 山田 一人 氏/「AUTO-BI」ブランド発売90周年〉

 2017年3月期は増収増益を見込む。当社の売り上げの9割を占めるツナギの売れ行きは第3四半期が終わった時点までは堅調だったがここに来てやや動きが鈍くなっている感じがする。16年秋から急に冷え込んだこともあり防寒着は比較的好調な動きだ。

 当社はこれまで企業納入は得意とするところだが、今年はショップなどを通じた一般消費者向けの販売も強めたい。企業納入とは異なり値段の制約があり簡単ではないが、テコ入れできる商品の開発を検討する。

 今年は自社ブランド「AUTO-BI(オートバイ)」が発売90周年を迎える。何をするかは現在検討中だが、少しでもブランド価値を上げる努力をしていきたい。

 当社の現在の課題は国内の主力工場の日本人技術者の育成にある。これまで中国人実習生を招いて手伝ってもらっていたが近年、労働の質の低下もあり順次帰国してもらってきた。今年8月からは日本人だけの体制となった。これからも少しずつ若手の採用を増やしていきたい。常に若い人材を確保できる体制を作ることが大切となる。

〈エスケー・プロダクト 社長 池本 誠治 氏/オリジナリティーで挑み続ける〉

 本年度上半期(2016年4~9月)は、4月の値上げで受注が減るとの予想に反して、主力の「グレースエンジニアーズ」ブランドで売れ筋商品の在庫を増やしたことや新商品による底上げ、新規開拓が進んだことで、売上高が前年同期比25%の増収で推移した。

 下半期は15年の10、11月の2カ月が過去最高の前年同期比57%の増収で、今期の売り上げの鈍化を懸念していた。実際には微増収で推移し、今期(17年3月期)の売上高を当初の4億5000万円から4億8000万円へと上方修正する。

 市場はネットなど流通の多様化で、趣味やプライベートの場面で安価な作業服を賢く活用し、仕事や作業のためだけではない需要層が新たにできつつある。そういったニーズを捉え、欲しいと思わせるオリジナリティーのある商品開発に挑み続けなければいけない。

 今年は売れ筋品を年間通して安定供給をするため生産を拡大し、より一層の選択と集中を図る。会社の幹を太く揺らぎにくくしながら、売上高5億円を目指していきたい。

〈桑和 専務 藤井 荘大 氏/生産見直し、品質向上へ〉

 2016年のワークウエアの市況は、悪くなると言われながら、アベノミクスの下支えがあったように思う。ただ、備蓄ユニフォームそのものが広がっている印象はない。17年1月期決算は売上高が前期比3%増の44億5000万円と増収の見通しだが、春夏に値上げした効果が大きく、数量ベースでは減っており、決して褒められた状況ではない。

 秋から新しく稼働した倉庫は、出荷ミスをなくすため社内の物流の動線を見直し、作業を効率化し、出荷を当日午後3時まで対応できるようにした。これまで外部に委託していた倉庫も自社で対応できるようになったことから、今後のコスト削減の効果を期待している。

 来期は、企画力だけでなく品質面での向上が課題であり、生産体制の見直しを進め、改善を図っていきたい。工場が広がり過ぎたこともあり、工場の選択、選別を一からやり直す。欠品フォロー体制を強化し、顧客満足度の追求にも引き続き取り組む。

〈中国産業 社長 原 昇 氏/売り場の意向、吸収したい〉

 2016年8月期の売上高は前期比微増収で推移した。取引先のショップを中心に、天候に左右されやすく、不安定な市況が続いたが、仕入れ先も含め、取引先とのパイプを太くしてきたことで、大きな落ち込みがなかった。今年も売り場の情報を提供してもらいながら、商品開発に生かすなど、引き続き相互の関係の強化に努めたい。

 ショップ自身が、以前はある程度予測できた販売も、今はさまざまな要素を受けて予想がしづらくなっている。そういった不透明な市場にあっても、「ドッグマン」ブランドを中心とした当社のワークウエアを取り扱ってもらえることに感謝するとともに、売り場の意向をしっかり吸収し、モノ作りに反映させていくことで、より良い関係の構築につなげていく。

 昨年の春夏展から展示会場を刷新し、商品の置き方、畳み方、POPの位置など工夫し、売り場作りの参考になるような展示手法を試みている。売り場での競争が激しくなるなか、主力のドッグマンを中心に、ブランド力の向上にも取り組む。

〈三愛 社長 三國 徹 氏/顧客目線で、きめ細やかに〉

 2016年12月期の決算は、売上高で前年同期比約5%の増収となる見込みだ。全体的な商況は良いとは言えないが、各エリアの販売代理店の方々に一年間ご愛顧いただき、少しでも数字を伸ばせたことは大変ありがたいことだと感じている。

 当社の目指すところとしては、価格重視、あるいは機能性、デザイン性の高い差別化された商品を求める顧客に対し、常に必要とされるような商品作りを行っていくことだと考えている。昨年、新ブランドを打ち出したが、そこに集う商品群を充実させ、各ブランドの認知度も高める。

 今期はデザイン、機能性を高めた「JOBSARMOR(ジョブズアーマー)」と主力定番商品である「AI★CLO(アイクロ)」の新商品を拡充する一方で、商品全体の品質面、納期面の管理に力を注ぐ。

 主力商品の在庫を切らさないように注意し、顧客へよりタイムリーな納品ができることを目指す。さらに販売面では関東、中部、関西地区で売り上げ拡大を目指すために、顧客目線に立って、これまで以上にきめ細やかな営業活動を心掛けていく。

〈明石スクールユニフォームカンパニー アクティブチャレンジ部企画部長 浅沼 由佳 氏/環境考え、新たな提案強化〉

 本年度上半期(2016年6~11月)は、ワーキングが15年の価格改定に伴う前倒し需要の影響を受けて前年同期比で数%の減収だった。しかし、介護、メディカルが「ルコックスポルティフ」ブランドによって拡大しており、アクティブチャレンジ部全体では増収となった。メディカル商品は他社との差別化も進み、販売が好調なものの、営業面ではまだまだ力不足の部分もあり今後の課題となる。

 今期(17年5月期)の見通しは、下半期のワーキングの売り上げ拡大と、メディカル、介護の新規獲得が順調に進めば、増収を確保できるものと見ている。前期は納期対応でスムーズにいかない部分もあったが、今期は生産計画、物件管理などに力を入れ、供給安定を図りつつある。

 春夏展では、昨年開かれた「国際福祉機器展(HCR)」で発表し、介護、メディカル向けに反応が良かったオリジナル性の高いパンツなどを展示する。常に付加価値があり、仕事環境を考えた新しい提案ができるように、今後も商品開発に力を入れていく。

〈大川被服 社長 大川 克昌 氏/時代への対応力強める〉

 2017年1月期決算は、昨年9月の売り上げの落ち込みが大きいだけに、計画は未達となるが、売り上げそのものは微増で推移する見通しだ。この3年間は在庫の削減に取り組み、ある程度目標値に来たことで利益面が改善され、新商品の打ち出しも強化している。

 昨年秋冬に打ち出した自社ブランド「ダイリキ」の新シリーズ「サイレントガード」は、トレンドの細身シルエットを取り込み、スポーティーな独自性の高いデザインに仕上げた。さらに内装業などから要望を受け、袖口にポケットやペン差しを付け、他社にはあまりない機能で差別化し、実用新案も取得した。今年はその春夏版を投入し、売り先を広げる。

 インターネット販売や、ワークウエアショップが異業種とコラボする業態など、新しい形でのビジネスが広がり、かつてのやり方が通じない時代になってきた。同業他社でもあっても連携する部分は連携し、強みと弱みを補完するような関係構築も将来的には視野に入れ、急変する市場への対応力を強めたい。

〈丸五 社長 藤木 茂彦 氏/半歩でも先行く開発を〉

 2016年のワークシューズ業界は、デフレ脱却の期待に反し、消費低迷の影響で厳しい環境にあった。4年来の為替変動などのコストアップにより価格変更をお願いしてきたが、結果として16年は数量微減、販売額は微増となった。

 地下足袋は世代交代もあり建設関係での減少傾向が続いている。一方、安全スニーカーはスポーツブランドなどの相次ぐ参入により売り場が活性化すると同時に、高価格でも消費者が抵抗感なく購入する傾向が出ており、価格帯の幅が大きく変わってきている。

 「マンダムセーフティー」シリーズは発売以来累計300万足を超えるヒット商品となっているが、今後も機能性やデザインで画期的な新商品を投入し、消費者の支持とブランド認知を高めていきたいと考えている。

 19年には創業100周年を迎える。創業以来の「働く人々と共にありたい」という理念に基づき、専門メーカーとしてこれまで培ってきた技術力を生かし、半歩でも先を行く商品開発によって市場に新たな魅力を提供していきたい。

〈福徳産業 社長 細田 信彦 氏/コト消費、いかに取り込むか〉

 2016年11月米国でトランプ氏が次期大統領に選任され、17年1月20日に新しい米国大統領が生まれる。選挙期間中のトランプ氏の数々の暴言からするとどのような政策がとられるか不明で、彼が言ったことをそのまま米国の政策として実行されることはないとは思うが、米国が内向きになることは間違いないと思う。米国の政策が変われば世界が変わる。世界が変われば世界経済も変わる。

 一方、日本でも高齢者の割合が多くなったせいか、消費自体が変わろうとしている。消費者が求めるモノは「モノの豊かさから心の豊かさ」へ変わりつつある。つまり「モノ消費からコト消費」へと消費者の意識が変わってきたのだ。それに対して、われわれ供給者側に準備ができていない。これから「コト消費」をいかに取り込むかが問われる時代になったようで、変わらなければならないのはわれわれ供給者側と言える。

〈空調服 社長 市ヶ谷 透 氏/次世代型空調服へ〉

 2016年の「空調服」の販売量は37万着だった。大口の別注が増えており、来年のオーダーはさらに倍近くなる見込みとなる。建設、電設業以外の製造業の顧客拡大のため関連する展示会にも出展していきたい。

 熱中症対策にユーザーの関心が高まり、空調服のほかにも送風装置を付けた作業服の企画も増えており、今後は競争が予想される。16年6月に商品企画部を立ち上げ、ユーザーの要望を吸い上げている。

 空調服は汗の気化熱で体温を調節する独自の「生理クーラー理論」を基点に設計し、さらに流体力学によって効率的に人体を冷却できるよう改良を重ねている。長年の実績から不良率が僅少な点もユーザーから厚い信頼をいただいており、何よりの強みだと考えている。クオリティと信頼に加え、今後は製品としての最適化を目指す。

 照明器具に例えるなら、これまでの空調服はまだ白熱電球で、現在は蛍光灯へ進化しつつある段階。LEDにはまだまだだが、次世代型に進化させていきたい。

〈福山ゴム工業 社長 中島 秀司郎 氏/特徴あるもの創り出す〉

 セーフティーシューズ業界は、スポーツブランドの進出でカジュアル化が進み、2016年もその傾向がより顕著になりつつある。一方で業界全体の値上げが進んだことで、価格帯も底上げされつつある。ユニフォームアパレルや販売代理店自らがセーフティーシューズを企画販売し、競合が激しくなる中、単にデザインを変更しただけでは必ずしも売れず、やはり機能を含めて特徴があり、他社に先行したものでないと売れない時代になりつつある。

 今年、当社は創業70周年を迎える。人口減少で、労働者の環境も変わる中で、特徴あるものを改めて創り出す必要性を感じている。市場で認められる価値とデザイン性、消費者に納得してもらう価格との整合性を取りながら、さまざまなシューズの開発を進めている。例えば、この機能であれば“福山ゴム工業”という社名を思い浮かべてもらうようなモノ作りを目指したい。画期的なネクストワンのみならず、ネクスト2、3ぐらいの新商品を打ち出し、時代のニーズを先取る開発に力を入れる。

〈ケネック 社長 三好 健一 氏/JIS化反射材 追い風受ける〉

 高視認性安全服向けの反射材や蛍光生地の販売が好調だ。2015年10月に高視認性安全服の「JIS T8127」が制定されてからアパレル向けの案件が増え、今期(8月期)の業績は前年同期比2割増で推移している。

 注力商品は反射ベスト。マイポックスキョウト(京都府宇治市)が製造、当社が販売を手掛けており、16年10月に「危機管理産業展2016」に出展したところ官公庁や公共性の高い企業関係者から問い合わせや相談が増えた。

 会社は11年設立で業界ではベンチャーだが、当社が販売する反射材「レフライト」は業界では老舗の国産ブランド。海外製の反射材は使用するうちに耐久性などで課題があり国産品のパフォーマンスが再評価されてきたのも追い風となっている。

 高視認性安全服の着用は日本では法的義務がないのがネックだが、ベストは安全保護具として着用できるため汎用性が高い。欧州では児童の通学用や自転車用など一般でも着用されており、日本でも潜在的な需要が見込める。まいてきた種の芽が出てきた感触をつかんでいる。今後は提案の幅を広げ、収穫につなげたい。