学生服アパレル/小学生服市場は一進一退/粘り強く突破口探る

2017年02月10日 (金曜日)

 「ランドセルは値段が高くても誰も文句は言わないが、制服は高いと言われてしまう」――。そのようなジレンマを抱えながらも学生服アパレル各社は、小学生服市場に対し発想を転換しながら粘り強く開拓の突破口を開こうとしている。制服の価値を高め、必要性を訴えながら需要の創出につなげようと戦略を練る。

 現在、制服(標準服)を採用する小学校は、約2万300校ある全体の10%にも満たないといわれる。学校数、生徒数が年々減る傾向にある中、小中一貫校の出現で、制服の採用率が高まるとの期待があったが、あまり採用につながっていないのが実情だ。

 しかし意外にも、学生服アパレルの小学生服市場の商況はそれほど落ち込んでいない。「販売数量は落ちているが、売り上げは横ばいか微増をキープしている」と話すのは明石スクールユニフォームカンパニー(岡山県倉敷市)の江藤貴博スクール第一販売部長。店頭販売のポロシャツは価格帯が高いものの、機能性など付加価値を高めることで年々販売が拡大。付加価値型提案を受け入れる潜在的な需要に「自信を持った」と手応えを示す。

 菅公学生服(岡山市)は、家庭洗濯機で100回洗っても新品とそれほど違いが分からない制服「カンコータフウォッシュ」の販売が好調で、今年の入学商戦では売り上げが「前年より40%増で推移している」(曽山紀浩取締役)。シリーズ化を進め、ポロシャツなどのアイテムを拡充する。

 トンボ(岡山市)は、中高生の制服と同じように機能性を強化した小学生向けの制服「トンボ・ジョイ」が市場に浸透。新商品を発売する前に縫製やパターン、着用試験などによって検証する「製品開発研究室」を今期から新設し、「安心、安全を実感してもらえるモノ作り、商品を投入する」(恵谷栄一執行役員)体制を整えつつある。

 昨年、一般紙で制服の値段が高いとの報道が目立ったが、市場では制服を必要と感じる風潮が強まっている。実際、大阪市立榎本小学校(大阪市鶴見区)は、約20年ぶりに2016年4月から制服を導入した。同校では、保護者に向けて学校の運営方針についてのアンケートを毎年実施しているが、勝本孝夫校長は「制服を導入してほしいという保護者の要望が近年、増えていた」と話す。

 導入ではさまざまな理由があるものの、勝本校長は「近年、公立小では私服の格差が激しくなっている」と指摘する。経済格差が叫ばれる時代にあって、制服の意義が改めて問われつつある。

 オゴー産業(倉敷市)の片山一昌営業本部経営企画部長は、「一度廃止になっても、校長の方針や保護者の理解を得られれば復活に積極的に取り組む事例も出ている」と話す。機能面や導入のメリットを長期的に説明し、課題解決にも具体的な方策を示すことで採用につなげる。

 地域によってはまだまだ制服の採用事例がほとんどなく、制服の必要性を訴える機会も少ないが、菅公学生服の曽山取締役は、小学生服市場の開拓について「業界自体が信念を持って取り組んでいかなければいけない」と強調する。素材メーカーも含め、各社が連携した動きも改めて考える時期に差し掛かっている。