小学生服特集(5)/悩み解決に制服アピール/有力アパレル編

2017年02月16日 (木曜日)

 シェアの急拡大は難しいと見られる小学生服市場。その一方で、潜在的な需要に対し、アパレル各社は可能性を感じているようだ。その需要のフックとして保護者や学校の“悩み(課題)”解決に、制服が役立つことを丁寧に説明する方針を示す。

〈限られた商機捉える/「タフウォッシュ」拡大/菅公学生服〉

 菅公学生服の曽山紀浩取締役は小学生服の市場環境について「基本的に動きが少ないだけに、商機をいかにフォローできるかが問われる」と指摘する。

 全くの新規導入はごく一部に限られ、中高一貫校となるタイミングなどが小学生服導入の好機になる。全般的な提案だけではなく、個々の事例に合わせて丁寧に対応することで獲得に結び付けるという。特に「小学生の保護者の約3割が通学時の服装に関して悩みを抱えている」と指摘、保護者への事例紹介や、具体的な問題解決が重要なポイントになる。

 2017年の入学商戦では、「カンコータフウォッシュ」が前年比で出荷量、金額ともに約40%増になるなど大きく伸張した。「タフウォッシュ」も家庭洗濯ができ、さらに洗濯を繰り返しても劣化しにくいことや、ピリングやひっかき傷が発生しにくいことなど使用時の高耐久性が評価された。これらが、保護者が抱える問題の解決につながることで、主に口コミで購買が進んだという。

 着用する生徒からみても、ストレッチ性の高さによる着用時の快適さなど付加価値が高い。このほか、成長に合わせて寸法を調整できることなど制服導入のメリットを丁寧にアピールし、ポロシャツや詰め襟、イートンなどラインアップを充実し、さらに拡販を図る。

 菅公学生服は、現在、制服を導入していない小学校でも「カンコードリームプロジェクト」を中心としたイベントを積極的に行っている。曽山取締役は「小学生が具体的に夢を発表する機会は学校の中でも少ない。学校側にもプロジェクトは高く評価されている」と話す。

 同イベントは社会貢献を意識して行っており、「カンコー」ブランド価値向上による側面からの販促につなげていく。

〈機能重視の提案奏功/潜在需要に手応え/明石SUC〉

 明石スクールユニフォームカンパニーは小学生服向け提案で機能加工品の提案を重視する。

 営業本部の江藤貴博スクール第一販売部長は全般的な市況について「小学校単独で新規導入というケースはほとんどない。小中一貫化でも小学生だけは自由服というケースもあり、市場の急拡大は厳しい」と指摘する。

 一方で、導入済みの小学校では付加価値を追求する傾向が強く、同社の製品提案が合致するケースが増えているという。

 同社では、店頭売りのポロシャツでノーアイロン、涼感、消臭、抗ピリングなどの機能性や女子向けデザインを強調した「ガールズポロ」など付加価値を高めた企画を充実する。

 いずれも価格帯は高めとなるが、価値を認めて購入されるケースが目立つという。「生徒数が減少するなかで健闘している。購入単価は上昇している」(江藤部長)

 現在、制服の指定がない公立小学校でも白ポロシャツとして購入されるケースがあるなど、付加価値型提案を受け入れる潜在的な需要に「自信を持った」と手応えを得ている。

 同社の本社1階の展示スペースでは、小学生服の総合展示を行っている。同社を訪れる学生服の代理店や販売店の担当者は、市場開拓が厳しいと認識しながらも小学生服を新しい商材として関心を持つケースが増えているという。販売サイド、購入サイドともに潜在的な需要は高いとみており、地道な提案を継続する。

 同社では機能を重視した企画提案を継続する方針を示す。女子制服ブランド「THD(テ・アッシュ・デ・ラ・メゾン)」のイメージキャラクター、リカちゃんを店頭POPやリーフフレットに積極的に取り入れるなど販促にも注力、潜在需要の掘り起こしを進めていく。

〈デザインで“特別感”演出/プロモーション充実/オゴー産業〉

 オゴー産業は、2017年入学商戦に向けた小学生服市場で別注対応を中心に成果を上げた。

 片山一昌営業本部経営企画部長によると、小学生服の提案では「過去に廃止になっても、校長の方針や保護者の理解を得られれば、復活に積極的に取り組む事例もある」など、採用する小学校の方針によって内容に変化が出てきたという。

 デザイン面でも特別感を演出する色柄やアイテム提案で、基本となる上下服だけでなく、ニットシャツなどへの拡大がみられるという。今入学商戦でも「紺だけでなく、ベージュが採用されたり、特別なストライプを装飾に用いたりするケース、高級感を重視してウール混を希望するなど、導入に当たって良い物を志向する流れが出ている」(片山部長)と言う。

 その分、素材段階からの“特別感”を重視した提案が重要で、機能面や導入のメリットだけでなく、着こなし方も含めた詳細な説明をする必要があるという。今後は織物調ニットの提案など採用素材での幅出しに加え、素材メーカーや商社、織布産地企業の協力も得て、付加価値の向上を図る。

 総合提案の一貫として品ぞろえする、防災ずきん付きの多機能ランドセル「プレセーブ」の提案も継続する。災害対応のコンセプトでスタートした製品だが、要望があればカラーバリエーションを拡大するなど汎用性を高め、提案の幅を持たせることで拡大を図る。

 製品提案以外の販促策では標準服導入の手引書の配布や「安全マップコンテスト」など、プロモーションを充実させる。安全マップコンテストでは今年で10回目となることを記念し、副賞も充実させる。自社の小学生服のキャラクターを配した参加賞を配布するなど、個人に向けたアピールも重視、「この市場で一歩先を走る」(片山部長)方針を示す。

〈独自研究・開発を重視/使われる背景考える/トンボ〉

 トンボは投入から5年目を迎えた小学生服「トンボ・ジョイ」を中心に高機能製品の開発を重視する。販売戦略では小中一貫化を行う学校のほか、かつて制服を採用していたが、廃止になった小学校への再提案を行うなど、自社での情報収集と分析・検証を進める方針を示す。

 恵谷栄一執行役員はジョイについて「標準服での採用を中心に拡大を続けている」と話す。撥水(はっすい)や抗菌防臭など機能性のほか、成長に合わせてサイズ調整ができるようにした点が評価されているという。

 小学生服市場の拡大について恵谷執行役員は「少ない需要の中で、どのようにトンボを選んでもらえるか、具体的に考える。現在、突破口となり得るのは『安心・安全』を打ち出すこと。ただし値頃感や機能提案なども訴求には重要」と指摘する。

 恵谷執行役員が室長を務める製品開発研究室では、採用するパターン、素材、副資材などハードウエア面の開発だけでなく、小学生服が、それぞれの学校でどのような期限を区切って使われるかも含め検証し、最適な提案手法を模索する。「例えば、小中一貫の場合でも小学校6年、中学校3年という基本的な形から、低学年、高学年、中学、それぞれ3年ずつ、あるいは9年間通じて、同じコンセプトの制服という採用もある」(恵谷執行役員)という。

 製品開発研究室では、これらを総合的に判断し、各学校や地域に適した提案を行うことで、採用につなげる。

 同社の小学生服ブランドは「ジョイ」のほか小中一貫ブランドとして「トンボプライマリー」も展開する。

 これら複数のブランドに企画を最適な形で落とし込んでの提案を継続する。