新たな市場開く/メーカー系商社のいま(5)/東洋紡STC/「COCOMI」で新用途開拓
2017年03月03日 (金曜日)
東洋紡STCの繊維第1事業総括部の今期(2017年3月期)は増収ながらも利益は横ばいとなる見通しだ。スポーツは拡大基調が続くが、利益は為替の影響を受けている。インナーは売上高が横ばいだが、利益はコスト削減効果などで増加する。フィルム状導電素材「COCOMI」の競走馬用で展開が始まったことも収益に貢献する。
来期(18年3月期)は増収増益を計画する。スポーツは引き続き拡大を狙う。大手スポーツアパレル向けでアスレを中心にシェア拡大を狙うとともに、好調に推移するニットシャツ「Zシャツ」をさらに伸ばす。ゴルフは「マンシングウェア」での生産インフラを生かして展開ブランドを広げていく。
同社の中でスポーツは「開発のけん引役」を担い、今後も引き続き高機能素材の開発を加速するとともに、「開発した機能素材をスポーツ以外の分野にも広げていく」(藤本浩三取締役執行役員繊維第1事業総括部長)。新規用途では、学販メーカーとの取り組みで新規分野への展開を図るほか、ユニフォームと連携して「Zシャツ」を拡大していく。
インナーは素材開発に注力しながらNB、GMS、SPAとの取り組みを強化する。COCOMIを中心に新しい分野への展開も拡大する。COCOMIは薄くて伸縮性がある特徴を生かして競走馬の心拍数測定用腹帯カバーに採用されたのに続き、居眠り運転防止検知システムでの展開も始まった。今後さらなる性能の進化を図りながら、新しい分野への参入を加速する。
一方、シャツ、ユニフォーム、寝装などテキスタイル販売と中東民族衣装用織物輸出、そして原糸販売を担う繊維第2事業総括部も今期は、減収ながら増益で推移している。一部不採算品からの撤退など事業構造の改革に取り組んだ成果が出た。
特にシャツは大手アパレルとの取り組みで製品が好調。ユニフォームは別注ユニフォームで大型案件を受注するなど増収となっているが、競争激化や昨年末からの急速な円安がボディブローとなり利益横ばいで推移している。中東民族衣装用織物も好調を維持する見通しだ。原糸も原料特化による差別化が成功して健闘している。
来期に向けて「愚直に生地開発・提案を進めると同時に海外での縫製品までの一貫生産・調達などグループ内のバリューチェーンでユーザーが求めるサービスを提供することが重要」(清水栄一取締役執行役員繊維第2事業総括部長兼ユニフォーム事業部長)と強調する。
利益をリードする中東民族衣装用織物は、原油安などの影響で現地の市況に不安材料が多いことから、来期は慎重な計画とした。シャツは縫製品を軸に拡大を目指す。引き続き大手アパレルとの取り組みを進める。
ユニフォームはサービス分野を中心にニットのトレンドも強まる。このためスポーツ素材の原料やノウハウをユニフォーム向けに活用したニット素材・製品の開発を進める。
オリンピック需要に向けて18年が勝負の年とみており、五輪需要を具体的に獲得するために17年を仕掛けや準備のための重要な年と位置付け、提案を加速させる。