クラボウ/スマート衣料で熱中症対策/阪大、信州大、気象協会などと共同開発へ
2017年03月23日 (木曜日)
クラボウはこのほど、熱中症リスク管理システムと、そのためのスマート衣料「スマートフィット」の開発を大阪大学、信州大学、日本気象協会、ユニオンツールと共同で開始すると発表した。スマート衣料による熱中症リスクのモニタリングを単独で行うのでなく、IoTプラットフォームの構築とクラウドでのデータ収集、新指標による分析で作業者の状態を客観的に評価する「超局所リアルタイム熱中症リスク管理システム」の構築を目指す。当面は建設業・運送業向けユニフォームで開発を進め、2018年の販売開始を計画する。
近年、地球温暖化や日本社会の高齢化を背景に建設現場や運送業では作業者の熱中症リスクが高まっている。しかし、従来は暑さ指数であるWBGT値を参考に休憩管理システムやスポットクーラー設置、冷却ファン付き作業服の採用など基本的に作業者の自己管理を前提とするリスク管理が中心だった。このため企業など作業現場全体と個別作業員の状態を同時にリアルタイムでリスク管理するシステムへの要望が高まっていた。
こうした課題に対してクラボウは大阪大学大学院基礎工学研究科の清野健准教授、信州大学繊維学部の金井博幸准教授、日本気象協会、ユニオンツールとスマートフィットと熱中症リスク管理システムの共同開発に着手する。スマートフィットで収集した作業者の心拍数や衣服内温度、加速度センサーによる運動状態などのデータをIoTプラットフォームによりリアルタイムにクラウドで共有し、日本気象協会が提供する気象データなどと合わせて熱中症リスク算出のための新指標によるアルゴリズム解析を行う。この結果を作業者だけでなく作業管理者や企業もリアルタイムで共有することで「超局所のリスク管理」を可能にするシステムを構築する。
今後の開発について、全体の統括をクラボウが担い、新指標やデータ解析用アルゴリズムと評価方法の構築は大阪大学と日本気象協会、クラボウが担当する。スマート衣料の開発は信州大学とクラボウ、心拍センサーとIoTプラットフォームの構築はユニオンツールとクラボウが担当する。5月から具体的なデータ収集のためにゼネコンなど7社と運送関連企業2社の協力を得てモニター調査を開始する。モニター調査時の助言とフォローは大阪大学医学系研究科と医学部付属病院が担当する。
これら研究開発を経て18年度内での実用化とウエア・デバイスの販売を目指す。まずは建設・運送業界向けユニフォームでの実用化を進めた上で、20年までに一般の屋外活動向け、22年までには独居老人向けなどへの応用と実用化も進める。