特集 メディカル・介護ウエア2017(2)/2017年の注目商品/現場に選ばれる1着を

2017年03月22日 (水曜日)

 メディカル・介護ウエアに変化が兆す。市況は拡大路線、さまざまな企画が生まれる一方で、アパレルからは「リブランディング」や「刷新」という言葉が聞かれる。現場に迫り、選ばれる条件をクリアするための努力がユニフォームの進化に拍車を掛けている。

〈シックな印象加味/アプロンワールド〉

 アプロンワールドは「KAZEN(カゼン)メディカル」の新商品として「スマートスクラブ」を発売した。かっちりした白衣とスクラブが拮抗する市場で、スクラブの着心地とシックな印象を兼備させている。

 レディススクラブ(襟付き)は軽くしなやか、吸汗速乾性に優れた高機能素材を採用。きちんと感のある小ぶりな襟をアクセントに、首回りはゆったりと楽な着心地をキープする。

 両脇のポケットは収納力に優れ整理しやすい2重仕様。右胸の上部に携帯・PHS電話が落ちにくい仕様のポケットが付き、アクティブな印象づくりに一役買っている。ショルダーカラーは秋の配色で細見え効果も。前開き、男女兼用の3型とメンズ、レディースのパンツも展開。

 ナースウエアの新商品では安心設計のマタニティウエア「ゆめかご」を発売。もともとマタニティーウエアは元々展開していたが、妊娠中の社員に着用試験をしてもらいながら従来品を大幅に進化・改善させた。ストレスフリーなジャケット・パンツ、ワンピースを提案する。

〈個人購入ねらえ!/サンペックスイスト〉

 サンペックスイストはメディカル・介護向けカタログ「ナースセンセーション」はデザイナーを新たに迎え内容を刷新。「トリンプ」とのコラボレーションシリーズでは「ビスチェ・ナース」として、インナーウエアであるビスチェの「守る」「補整する」「女性美」という機能を、ナースウエアのシルエットと素材に落とし込み提案する。

 現役看護師の座談会を開くなどレディースユニフォームメーカーならではのリサーチを続けている。「ウエアの採用で現場の意見は影響力が大きく、メーカーの独りよがりな提案、需要とズレたものは売れない」(同社)と、商品の見直しやプロモーションに生かす。

 中小規模の医療施設の個人需要に拡大の可能性をみる。「制服の指定が緩やかで、貸与された着数で足りないので個人で買うというケースが多い」ためだ。17年は人気モデルの青木美沙子さんをコーディネートページのモデルに起用。日本発の「カワイイ」を体現するカリスマモデル、かつ現役のナースというキャリアで、ナースへの発信力は抜群。ウェブのページビューはうなぎのぼりという。

〈ストレスフリー「プロ・ファンクション」/ナガイレーベン〉

 ナガイレーベンの「プロ・ファンクション」は脇下・肩甲骨部分などにメッシュを配置し通気性を最大化、接触冷感素材の採用によってクーリング効果を実現。さらに特殊なカッティングとストレッチ素材により腕を水平に上げたときのストレスを解消した新商品。機能性を前面に出したモデルは珍しいが、2016年の発売以来好調に売り上げを伸ばしている。

 抜本的な医療・介護制度改革により医療機関・介護施設の機能分化が進み、一般病院は急性期や慢性期、リハビリなど、介護施設は特養や老健、訪問介護などの様々な機能に特化する傾向にある。同社は従事者特有の移乗・立ち座りの反復・腕上動作を衣服内温度測定と被服圧測定で徹底的に解析。医療・介護従事者のストレスフリーを目指した。

 アイテムは男女兼用上衣「HOS―5222」、男女兼用上衣「CX―3112」、チュニック「HOS―5352」男子上衣「HOS―5357」(同)、女子スクラブ「ML―5362」(同)、女子スクラブ「LX―5377」(同)、チュニック「LX―5372」(同)。初年度1億円、3年度5億円。

〈米トップブランドのスクラブ/フォーク〉

 フォークはスクラブの米国最大手メーカーであるストラテジックパートナーズ(SPI)と提携し、ブランド「チェロキー」のスクラブを発売した。エクササイズウエアのような着心地と現場を明るくするポップなカラーが特徴。女性看護師、歯科衛生士を主なターゲットに販売目標は初年度3万点、3年後6万点、5年後9万点を目指す。

 SPIは1995年設立、チェロキーのほか「ディッキーズ」「ディズニー」などファッション要素の高い医療用ユニフォームのほかシューズやアクセサリーも展開している。フォークは独自性の高い機能性スクラブ、ディッキーズのメディカルウエアも手掛ける。

 提携にあたってはオリジナルのデザイン性を尊重しながら、米国の製造企画を日本に導入した場合に発生するサイズや体形の違い、リネン対応といった課題を解消。素材・縫製を日本の環境により適した仕様にリプロダクトして提供していく。

 商品はパンツ(6500円)、シングルコート(7000円)、スクラブ3品番(各6800円)、ブルゾン(同)。

〈本格機能三大パンツ投入/セロリー〉

 セロリーは2015年に、東京と本社に介護ウエアのブランド「アイフォリー」を販売する専任担当を配置し、エンドユーザーへの認知度を高めてきた。最近では関東エリアのエンドユーザーに対してもアプローチを強めつつある。

 アイフォリーは、「笑顔で働く介護士に優しく寄り添うユニフォーム」をコンセプトに、トップスはニットシャツ、ギンガムチェックシャツ、ストライプシャツを提案。ボトムは“脱ジャージー”をうたい三大パンツ「動パン」「優パン」「得パン」を打ち出している。

 動パンはケアワーク時の動きを研究し、立体裁断パターン、内股切り替え&プリーツタックを施したストレスフリーパンツ。優パンは涼感、UVカット、制電、軽量、ストレッチ、吸汗速乾、工業用洗濯対応など多機能なパンツ。得パンは、小売価格5800円のプチプライスでメンズ10サイズ、レディース8サイズの豊富なサイズ展開が特徴だ。

 各施設が人材確保のためにユニフォームで活路を求める動きが強まる中、セロリーでは新たなスタイルを提案しながら市場開拓につなげる。

〈「ユナイト」スクラブ強化/チトセ〉

 チトセの「ユナイト」はミズノとの共同開発によるスポーツウエアの機能性に、同社が得意とするデザイン性を兼備させたメディカル・介護ウエアをそろえる。2017年は年間を通して着用できるスクラブシリーズを機能性、カラーバリエーションとも強化し、さまざまなシーンへの対応力を高める。

 16秋冬から先行発売した「クールマックスファブリックシリーズ」が順調に売り上げを伸ばしている。2017年は「ストレッチスクラブ」(4200円)を15色で展開。ホワイト、ブルー、シャープグリーン、グレー、ブラック、ティーローズ、ラベンダー、キャンディーローズ、マジェンタパープル、ブルーコーラル、アクアスプラッシュ、オレンジペッパー、ダークネービー、モスグリーン、ターコイズとカラフルで明るい印象を与える。

 ボトムは流行のジョガーパンツ(4300円)も16色でラインアップし、スポーティーなセットアップを提案する。ほか、ジャケット(5400円、全7色)マタニティースクラブ(5200円、全7色)。

〈差別化できる「ルコック」/明石SUC〉

 明石スクールユニフォームカンパニー(明石SUC)・アクティブチャレンジ部は、「ルコックスポルティフ」ブランドで、ケア(介護)、メディカルともにスポーツブランドならではの動きやすさと、快適性を高めた収納性をベースに洗練されたデザインを追求した商品によって、市場開拓に取り組む。

 実際にルコックは、ブランドならではのトリコロールのアクセント使いが利いたデザインで、市場では“差別化できるブランド”としての認知が広がりつつある。

 メディカルは、男女兼用スクラブでチーム医療に提案できるカラースクラブを展開。ケアはブランドらしいこだわりのある収納性、デザイン性のあるニットシャツと可動性にこだわったパンツが特徴。慢性的な人手不足の中で、「イメージやモチベーションの向上につながるユニフォームの開発」で市場を拡大する。

 今期は一極集中している関東市場に専任スタッフを1人増員するなど、「ルコックブランドをより多くのユーザーに認知してもらう」ように営業活動も強めていく。

〈品ぞろえが充実/住商モンブラン〉

 住商モンブランの2016年6月~17年2月の介護・メディカルユニフォーム事業の業績は昨年比10%増と好調を維持する。

 近年、介護・メディカルユニフォームで品ぞろえが充実している。基幹ブランドの「モンブラン」に加え、花柄が特徴の「ローラアシュレイ」、機能と機動性に優れる「アシックス」の三つを主軸に展開する。昨年秋からはプレミアムドクターウエア「JUNKO KOSHINO」を投入した。

 アシックスのスポーツ工学に基づいた機能的なメディカルウエアやモンブランの新素材として上質な光沢感・ドレープ性とストレッチ性が特徴のナースウエアシリーズがイチ押しアイテムだ。

 販売カタログでも改革に取り組む。従来の総合カタログとは別に、今年2月から業種やテーマごとに分けて商品を紹介する冊子を発刊した。新カタログは売れ筋のみを収録したダイジェスト版。カテゴリーごとに5冊用意し、従来の400㌻ほどあるカタログに比べ、1冊60~100㌻、重さは25%程度になった。

〈総合病院の採用増える/ヤギコーポレーション〉

 ヤギコーポレーションのメディカル・ケア向けカタログ「リゼルヴァ」は発刊3年目。本社のある石川県の総合病院などで納入実績を作り、ユーザーの意見を取り入れながらアイテム数を増やしている。

 メディカルは品質とコーディネートによるスタイル提案、ケア向けにはクリーンで爽やかな印象を大切に、着用者と介護サービスの利用者どちらも好感度が高められるよう、着心地と機能性を融合させる。

 ナース向けはベーシックなワンピースにスクラブなどレディースユニフォームメーカーらしいデザイン。ドクターコートなど男性向けの企画も増えている。2017年版のカタログはタレントの佐藤藍子さんの起用も話題。

 病院は仕入れや納入ルートが固定化しているため参入障壁とされるが、「地域の大手病院に採用されたことはメリット。定番品をベースに別注のオーダーも入るようになった」(同社)。

 メディカル・介護強化のため人員も増やした。「メディカル・介護ウエアは後発なため、走りながら現場の声を反映させていきたい」と言う。

〈実体験に基づく開発商品が充実/トンボ〉

 トンボのヘルスケア事業本部は、介護ウエアや検診衣など「キラク」ブランドの販売が順調に拡大している。

 ブランドでは主力のキラクに加え、「ケアリュクス」に「栗原はるみ」を相次いで投入。介護施設内のあらゆる職種(看護、介護、療法士、事務)をカバーできる品ぞろえとともに、「細かいニーズを拾い、他社と差別化した商品が充実してきた」ことが販路開拓に寄与しつつある。

 最近では、個人需要に対して薬剤師専用ウエア「ウイキュア」を展開し、新たな分野の開拓にも着手。介護施設事務向けユニフォームや、看護と介護の垣根を越えたアイテム(ケアスクラブ)、女性用検診衣など、他社があまりラインアップしていない商品が売れ筋になりつつある。企画担当者が「実体験に基づいて商品開発をしている」ことも、商品の差別化につながってきた。

 昨年から東京販売課の人員を増員、首都圏への販売を強化しており、目標とする売上高の達成を目指す。

〈きちんと感+アクティブ/カーシーカシマ〉

 カーシーカシマはケアスタッフ向けカタログ「ハートグリーン」で、ニットシャツ&スクワットチノのセットアップ展開が好調。介護の動きを妨げないできちんと感、おもてなしを演出できるニットシャツと、膝をつく、持ち上げるなどの動作に対し、機能でサポートできるアクティブスクワットチノを基本に、ハートグリーンのナチュラルエッセンスを感じるプリントエプロンを合わせ特徴づけていく。市場について「ブランド発足からみて常に右肩上がりの売り上げ推移だったが前期は横ばい」(同社)の商況。業界参入の増加によるものとみられたが、今期は微増収の見込み。「より専門性が高く、独自性のあるアイテムが好調に伸びている」のが特徴だ。

 こうした傾向を受け17年は「市場が成熟する中で、より個々の特徴、ブランド優位性がわかる商品展開、販促を展開していく」。「介護のユニフォームは業界の法制度に影響をうけやすいため、今後は業界の市況に合わせ方向性を定めていく」と柔軟な姿勢で臨む。

〈商品開発“力”入れ直す/シーユーピー〉

 シーユーピーは、介護ウエア「プロフィーリング」の販売が、介護報酬改定や人手不足、給与引き上げなど、施設に「ユニフォームを更新する余裕がない」ことに加え、「新規メーカー参入による価格を含めた選択肢の増加」で苦戦している。改めて「商品開発に対して力を入れ直し、原点回帰する」考えで、品質だけでなく、パターンやデザイン力を強化する。

 プロフィーリングでは新たに“良質”というキーワードを設け、商品企画やカタログ作成を実施。施設形態や職種別に商品企画を行い、専門性のより高い機能を持った商品を充実させる。

 有料老人ホーム向けシリーズ「アイナ」の新商品では新しいシルエットに取り組み、ディテールまでこだわって開発。中でも半袖ニットシャツAIK303は、昨年10月の販売開始から現在まで生産が追い付かないほどの売れ筋となっている。

 展示会も今月「ケアテックス2017」に出展したほか、4月20~22日にインテックス大阪(大阪市住之江区)で開かれる「バリアフリー2017」にも出展。関東だけでなく関西へも発信を強め、市場での認知度を高める。

〈医療・介護に「楽腰パンツ」/ミドリ安全〉

 ミドリ安全は自社ブランド「ベルデクセル」のメディカルウエアを拡充している。注力アイテムが腰部保護ベルト付きの「楽腰パンツ」(写真)だ。ベルトは着脱でき、腰の位置に合わせて調節が可能。男女別で体形に合わせた形状になっている。

 股下を自由に調節できるレングスアジャスト機能は、着用者のサイズに合わせて裾上げが出来る6段階調節ホック付き。腰ベルトの位置を調節した際の裾の余りも調節することが可能。

 特許取得済みの「フル開脚仕様」「イージーフレックス」機能を取り入れている。イージーフレックスは、パンツ本体と連動することでどのような態勢でも腰部保護ベルトがずれることなく機能を保持する。

 腰部の負担を軽減する機能性アイテムとして医療・介護向け展示会などで積極的に提案するほか、物流など業種をまたいで紹介している。

 ウエアのほかソックス・ストッキング、用品、腰部保護ベルト・聴診器シューズや用品までラインアップし一括納入できるのも強みとしている。

〈今秋、リブランディング/ボンマックス〉

 ボンマックスの介護向けブランド「ナチュラルスマイル」は「働くスタッフと介護サービス利用者がともにユニフォームを通じて笑顔になる」をコンセプトに、女性を意識したデザイン・機能・着心地(動きやすさ)を追求している。ポロシャツにパンツ、腰用のサポーターなど、汎用性が高いアイテムをリーズナブルな価格帯で提供する。

 今年9月でデビュー4年を迎え、今後の介護マーケットを見据えたリブランディングを予定している。ブランド立ち上げの際に介護施設へ入念なヒアリングを実施し企画に反映させてきたが、「2025年までに後期高齢者が5年ごと約200万~300万人ずつ増加することが予測され、高齢者向け市場については今後も拡大する」(同社)ことを念頭に、「高齢者の生活に密着した産業が占める割合が高くなる」と予測。こうした要素を考慮し、「引き続き介護ウエア市場に注視し、リサーチを続けて顧客ニーズを反映させた商品開発を行っていきたい」と、新しいパワーアイテムの企画を練っている。