帝人フロンティア「ソロテックス」(4)/織り、編みともに開発進展

2017年03月30日 (木曜日)

【八田経編】

経編みスーツ地が市場に

 「ポリウレタンに代わる糸として徐々に取り扱いが増えている」と話すのは八田経編(福井県鯖江市)の八田嘉一郎社長。「織物ライクな経編みを作る」ことをコンセプトにする同社にとって、「ソロテックス」は今やなくてはならない糸の一つだ。ソロテックスと通常のポリエステルを使ったトリコットのウオッシャブルスーツが店頭に並ぶことも既に決まっている。

 ただ、同社はこれをスーツ地としての完成形とは捉えておらず、今後も第2弾の開発を続けるとともに、ソロテックスのキックバック性を生かして「スーツ地以外の用途開発にも力を入れる」考え。

【冨田商事】

「生き残る上で必要な糸」

 福井産地の産元商社、冨田商事がソロテックスを使い始めたのは約3年前と後発の部類。「帝人フロンティアさんの熱い姿勢を感じた」(木村敏巳副社長)ことが採用の決め手になった。初回から20トンという大口購入を行い、コンジュゲートタイプを軸に複合による差別化素材開発を加速している。

 ソロテックスが持つソフト感、しなやかさ、ストレッチ性、キックバック性、形態安定性――が顧客にも浸透、徐々に売り上げも拡大中だ。企画開発力を強みとする産元商社としてソロテックスを「われわれが生き残っていくために必要な糸の一つ」と位置付け、今後も拡大を図っていく。

【シモムラ】

ストックサービスが好評

 糸商社、糸加工、織布のシモムラ(石川県小松市)は、ソロテックスの先染め糸のストックサービスを展開する。専用の見本帳も用意、100色、3番手で展開し、その発行部数は累計2000部に達する。

 新潟県の子会社に織機を保有する生地部門では婦人服向けをメインにソロテックスとトリアセテート、キュプラ繊維、レーヨンなどとの複合素材を開発、糸販売、生地販売ともに年々売り上げが拡大中という。

 西山恵太専務によると、今後は糸販売で「ニット向け提案を強化し、全体の販売量拡大につなげる」構想。

【宮田毛織工業】

PV展でコーナー設ける

 丸編み地製造大手の宮田毛織工業(愛知県一宮市)は、17~18年前から「ソロテックス」を使ってきた。同糸使いの生地の売上高は「年々拡大している」(佐竹一徳ニット企画室長)。今年2月にパリで開催された「プルミエール・ヴィジョン」展では、ソロテックス使いの生地のコーナーを設けるなど、その提案に一段と熱が入っている。

 初代のソロテックスは熱に弱かった。この弱点は既に解消されているが、そのことをより強くアピールするために、大手アパレル系の試験機関に試験を依頼。「家庭アイロンをマックスにして使っても風合い変化がないとのデータも得た」

 ソロテックスは、デリケートな素材に伸縮性を与えるのに適するという。ポリウレタンを使う場合、染色後のソーピングで、ポリウレタンに残留している染料を取り除く。そうしないと、家庭洗濯時に色が染み出す懸念がある。素材がデリケートで、ソーピングの度合いが限られる場合は、ソロテックスが適するという。