特集 アジア戦略 4.0(24)/カケンのアジア戦略/中国拠点を再強化/内販業務の拡大進める

2017年03月31日 (金曜日)

 カケンテストセンター(カケン)は縫製工場の東南アジア・南西アジアシフトに対応して、韓国、台湾、香港、タイ、ベトナム、インドネシア、バングラデシュに拠点を設けてきた。とはいえ、アパレルには中国見直し機運もあり、内販対応を含めて中国の6拠点(上海、南通、青島、大連、寧波、無錫)を再強化している。中核の上海科懇検験服務では内販向けの中国人スタッフ担当部長を置くなど、内販業務を拡大する。

〈南通分公司/現地でのクイック対応が好評〉

 上海科懇検験服務南通分公司は、2014年8月に南通事務所として地元企業との技術交流を始め、2年を経た昨年8月、分公司に昇格した。昨年11月に当局から「輸出入商品検査鑑定機構資格証書」を取得し、試験と技術相談サービスの提供を本格化した。

 江蘇省南通市は古くから繊維の街として栄え、日本向けの製品OEMや貿易、生地を手掛ける企業も多い。これまでは上海や無錫のグループ拠点でこうした企業からの依頼に対応してきたが、「短納期を求める地元の顧客から、現地での試験サービスの要望が高まっていた」(五味光弘総経理)と言う。

 現在は機能性などの一部試験を除き、現地でのクイック対応が可能になった。例えば、染色堅ろう度や耐洗濯性検査は即日対応しており、顧客から喜ばれている。

 これまでのところ、受託試験数は順調に拡大している。現在は22人の試験要員を有すが、今年はクイック対応を強みにさらに地元企業のニーズに応えていくため、30人に増員することを検討している。

〈寧波試験室/“日本サービス”で全国に顧客〉

 無錫試験室は、カケングループの中国拠点としては上海、青島に次ぐ第3位の受託試験数を誇る。日本企業ならではのきめ細かいサービスにより、無錫市周辺にとどまらず、全国に顧客を広げている。趙震宇室長は「日本企業の文化を理解しているスタッフが多いことが強み」と胸を張る。

 今年で開業から12年を迎えた。従業員は開業時20人だったが、現在は61人の陣容で、今年も4人補強する予定だ。

 同試験室では幅広い項目に対応している。12年から機能性試験を拡充。15年には、スポーツブランドのOEM企業の顧客向けに耐水試験を始めた。また内販向け製品の試験に必要なCNASを取得している。

 これまで毎年一貫して受託試験数を増やしてきた。「依頼主との共存共栄」を掲げる同試験室のサービスが、顧客から評価されている証しだろう。「今後も人材育成に取り組みながら試験項目を増やしていく。市場の変化に対応し、顧客満足度を高めていきたい」と趙室長は話している。

〈無錫試験室/小規模顧客にも丁寧に対応〉

 寧波試験室では、浙江省寧波市と紹興市の顧客をターゲットに試験、技術指導サービスを提供している。同地には小規模な貿易会社が多いが、「大小を問わず、日本企業ならではの丁寧な対応を心掛けている」(宮崎知勇総経理)。

 2003年の開業当初は日本の百貨店向けのアパレル製品の納入前試験を中心に手掛け、07年から機能性試験を拡充してきた。その後かばん、ベルト、靴などの雑貨の試験も始めた。現在の雑貨の取扱件数の構成比は1割弱だ。

 日本向けだけでなく、幅広い試験ニーズに対応できるのが強みになっている。提携先の寧波市¥文字(U+911E)州区検験局と組み、内販や欧米向けの試験に迅速に対応するほか、14年からは鍋や薬缶などのキッチン用品の試験受託も始めた。

 近年同地区では顧客の世代交代が進み、技術を理解する人が減りつつある。こうした中、現場に出張し、提供する技術指導サービスに力を入れている。

 今後も求められる試験に迅速に対応し、顧客の品質向上に貢献していく構えだ。

〈GC室が情報提供〉

 カケンは東京事業所にグローバルコミュニケーション(GC)室を設置する。海外で衣料品を販売したい顧客に向けて、法規制情報、海外表示指示情報などを提供する。約50カ国の情報を集めるほか、現地の市場慣習など生きた情報を収集するため、現地調査も行っている。また、定期的に海外内販・法規制セミナーも開いている。

 中国については、市場情報の提供やGB試験の実施だけでなく、Qコード(企業標準)登録の支援サービスも行う。「中国での内販業務を先駆けてきた。韓国内販の手引きもある」とし、こうしたきめ細かいサービスが顧客の信頼度を高めている。

〈ベトナム対応広がるカケンベトナム試験室〉

 ベトナムへの縫製移管が注目される中、カケンベトナム試験室は利便性の向上に注力する。池田翔太郎室長によると「生地の試験依頼が爆発的に増加している」状況だ。

 2015年度(15年4月~16年3月)、16年度と続き、17年度にも新案件の対応を予定する。商社を中心に現地での生地開発が増えている。タオルを中心に製品検査も増加傾向。スレーキや裏地、商標資材など副資材の試験も増える兆しを見せる。

 ベトナム試験室は仏第三者検査・認証機関、ビューロベリタス(BV)社のベトナム拠点と業務提携しており、分析機器を使った「非衣料品に対する試験も提携を通じて広げたい」との考えを示す。対日試験対応が3割程度まで高まったことで「パートナーシップがより深まった」とする。

 近年のベトナム生産は、中部のダナンやハノイ周辺の北部地域に縫製地が広がる。「繊維産地としての発展に伴い、北中部の試験ニーズにどのように対応できるようにするかが今後、課題になってくる」と指摘する。

 カンボジアのプノンペンやバベット地区など縫製工場の集積地からの依頼を送料無料で受けるピックアップサービスも引き続き訴求する。