ズームイン/村田機械の取締役繊維機械事業部長に就いた 正井 哲司 氏/ロボットからワインダーへ

2017年04月14日 (金曜日)

 4月1日付で繊維機械事業部長に就いた。技術者としてこれまで自動ワインダー、渦流精紡機「ボルテックス」などの開発に従事してきた。特に制御技術のエキスパートである。

 京都工芸繊維大学では電気工学を専攻した正井さん。「当時、『ロボティクス』という言葉が登場した頃で、ロボット関係の開発に憧れていました」と言う。村田機械に入社したのも最初の志望はロボティクスが応用できそうな物流・搬送機器関係の開発だったそうだ。

 そんな正井さんの転機が、エアスプライサーを目にしたことだ。「非常な衝撃を受けました。『これはすごい』と、そのときから繊維機械をやろうと決心しました」と振り返る。以来、エアスプライサーを搭載した自動ワインダー、そしてボルテックスの開発に従事する。折しもその後の繊維機械の技術革新は電子制御による自動化や汎用性の向上を中心に急速に進む。正井さんが目指したロボティクスの応用という意味でもうってつけの舞台だった。

 繊維機械事業部長となったことで技術だけでなく営業も管掌することになるが、「人と話すのが元々好き。特にお客さまと接するのは楽しいことです」と、てらいがない。また、「繊維機械事業部は、各部署に素晴らしい人材がそろっていますから」とスタッフへの信頼も厚い。

 「コミュニケーションを大切にしたい。私自身、思ったことはすぐに口に出す性格で、隠し事が嫌い。技術的な問題で悩むのは大いに結構ですが、人間関係で悩むのは時間の無駄です」というように風通しの良い事業部が目標だ。そうやって事業部一丸となって「新しい商品を開発する方向に力を入れたい」というところに正井さんの技術者としての思いがうかがえる。

 近年、繊維機械の分野でもIoTやAIと言った新しい言葉が登場するようになった。ただ、「こうした考え方は繊維機械の世界ではかなり以前から考えられていましたし、ある意味で実用化もされてきました」と力強く指摘する。繊維機械開発の大きな潮流の中で、正井さんの知見とキャリアがますます生きそうな予感がする。     (宇)

まさい・てつじ 1983年京都工繊大・工芸卒、村田機械入社。繊維機械事業部制御開発グループ技術部長などを経て2011年執行役員技術統括部長、17年4月から取締役繊維機械事業部長。兵庫県出身。57歳。趣味はテニス。15年前からテニススクールに通って汗を流している。