2017春季総合特集(63)/先端技術で生産効率を革新/JUKI スマートファクトリーの取り組み

2017年04月28日 (金曜日)

 繊維生産の中で、縫製業はミシンの数だけ人手を必要とする労働集約型産業として位置づけられてきた。業界全体の縮小が進むにつれ、地方の縫製工場から人材不足が深刻化し始め、現在も人材確保は大きな課題となっている。

 そのような中「スマートファクトリー」と呼ばれる概念が存在感を示している。ドイツの国家プロジェクト「インダストリー4・0」で打ち出され、日本でも関心を集めている。昨年4月に大阪市で開かれた国際アパレル機器&繊維産業見本市「JIAM2016 OSAKA」に出展したJUKIは、デジタル技術やロボットなどを駆使した生産システムの自動化で省人化などを図る縫製工場のスマートファクトリー化を打ち出した。長年、人材不足で頭を抱えてきた縫製工場にとって省人化は今後の生産の在り方に大きな影響を与えそうだ。

〈縫製業の省人・効率化に貢献/デジタル化やロボット駆使〉

 同社が打ち出すスマートファクトリーとは、工場内の機械・装置とインターネット環境をつなげ、機械の稼働状況をリアルタイムかつ詳細に把握・蓄積し、その情報を基に全体を効率的に稼働させる工場を指す。生産力の向上、効率化、省人化にも役立てることで働き手の労働環境にも優しい工場の在り方と言える。

 JIAM展ではポロシャツの縫製ラインを展示した。ラベル、ポケット、前立付けの自動機と穴・ボタン用、袖口・裾用、襟用、肩・脇用汎用機、前立仕上げ自動機、自動搬送機で構成されたラインは、人員数を一般ラインでは13人のところ、4人まで減らせるほか、1人当たりの生産枚数も25枚から56枚と生産力も引き上げることができる。

 スマートファクトリーの柱の一つであるミシンのデジタル化は、ミシンが発明されて約200年間、糸調子や抑えの圧力など作り手の感覚で操作していたものをデジタル信号による制御に切り換え、生産時の縫い条件やミシンの制御情報が全てデータとして記憶されるようになる。これにより、量産時にも同様の条件を全てのミシンに設定でき、品質の安定化に寄与する。

 ロボットもスマートファクトリーに大きな役割を担う。ロボット自身が縫製したり、人が縫う際の手助けや搬送を行ったりなどで活躍する。生産ライン内を行き来する自動搬送機(AGV)などロボットの活用はスマートファクトリー化に欠かせない。

 現在、スマートファクトリー導入に前向きな反応を示しているのは、カーシートの生産工場である。自動車業界でも比較的人手が必要とされる工程とあって、システム化を図りたいという要望が強いという。ほかにも、スポーツシューズといった他業界からの関心を集めている。

 海外からは、中国アパレルなどから導入に意欲的な声が相次いだ。中国国内も近年は市場規模が大きくなっており、こだわったモノ作りの体制を敷くため、設備投資にも積極的な姿勢が見られる。

 他業界や海外アパレルの積極的な反応に比べ、国内アパレルの反応はやや慎重だ。市況不振で閉塞感が漂う業界にとって、前向きな先行投資が難しいのも事実。そのため、同社ではスマートファクトリー導入へ資金的に難しい工場に対応した提案も強めていく。

 例えば、現状使っているミシンとネットワークをつなげ、モーターのコントロールボックスの情報によって、ミシンの動きや糸が何回切れたなど詳しい稼働情報をデータ化する手法。これによって、定期的に行う針交換も日数計算ではなく、何万針縫ったら交換するといったミシンの稼働状況に合わせた交換が可能となり、生産コストの削減に貢献する。

 今後はCAD/CAM、デジタルプリントなど付帯設備と連動できる生産システムの一元化を進めていく。CADの情報をミシンにダイレクトで伝達したり、さらに仕上げや検査、出荷時の情報を共有することで品質の安定や生産効率化にもつながる。

〈独「テックスプロセス」で訴求〉

 ただ、機種違いの機械同士でもネットワーク接続の対応が可能であるかが、大きな課題となる。生産事情が異なるため使う機種を統一していない縫製工場も少なくない中、円滑にネットワークにつなげることができるかが焦点と言える。これには「業界内で標準化し、ルールにのっとった仕様で機械の生産をするなど統一的な制度を業界全体で決めていくことが必要」と中村宏上席理事縫製機器&システムユニットスマートソーイング研究所所長は語る。

 同社では昨年10月、スマートファクトリーの考え方を開発、推進、展開していく組織「スマートソーイング研究所」を発足させ、同分野の強化を進めている。5月9~12日に独・フランクフルト国際見本市会場で開催される「テックスプロセス2017」にも出展する。「スマートライン・デジタルソーイングシステム」では、自動車シート縫製をイメージし、最新のデジタル端末を使い、ミシンとネットワークを接続したスマートラインを実演する。デジタルソーイングシステムでは、縫製アイテムや素材変更などに対応できるデジタル化ミシンを活用し「IoT技術」を絡めた活用例を紹介する。

 「ノンアパレルゾーン」として、シューズや皮革商品の縫製をイメージした縫製ラインや自動車・家具など各用途に最適な厚物用ミシンを提案する。ポロシャツ縫製をイメージした縫製ラインとアンダーウエアやスポーツウエアの縫製をイメージしたラインを軸に最新機を紹介するのは「ニットゾーン」。

 そのほか「ジーンズゾーン」では、2色縫いジーンズポケットセンターや省力化を実現する自動機を提案するなど充実した内容で挑む。