2017春季総合特集(67)/菅公学生服/社長 尾﨑 茂 氏/教育ソリューション事業、軌道へ/首都圏でのMC校を順調に獲得

2017年04月28日 (金曜日)

 菅公学生服(岡山市)は今入学商戦、昨年よりもモデルチェンジ(MC)校の獲得が順調に進んだことで、2017年7月期決算で計画する売上高350億円(前期342億円)、経常利益6億円(同6億600万円)の着地が見えてきた。学校教育のサポートをはじめとする教育ソリューション事業など、学生服業界としては新しい取り組みを軌道に乗せながら、市場での存在感を高める。

  ――これからの半歩先を考えたとき、見逃せない状況変化を何だと考えていますか。

 やはり米国のトランプ政権の動きでしょうね。これまで“グローバル化”が素晴らしい考え方と捉えられていましたが、その考えが変わりつつあります。日本でも地域創生という言葉が生まれ、東京の一極集中でなく、各地域のオリジナリティーを生かそうとする動きの中で、日本の市場も転換していく可能性があります。グローバル化こそ最たるものと言えた繊維産業の在り方そのものが根本的に変わってくるかもしれません。

  ――今入学商戦の進捗(しんちょく)はいかがですか。

 全般的に昨年よりもMC校を順調に獲得できたと思います。当社は2013年から総合展示会を「スクールソリューションフェア」として、単に制服の新製品を展示するだけでなく、異業種も交えながら学校支援の要素も含んだ展示会を開いてきました。年々、来場者は増える傾向にあり、その積み重ねが学生服でのMC校獲得の拡大に寄与してきました。

 さらに昨年8月、学生服流通大手の日本メンモウ(東京都中央区)が、「東京菅公学生服」に社名変更しました。当社との協力関係を強め、より一体となった企業運営を進めたことで、首都圏でのMC校の獲得も増えました。

 スクールスポーツについても、一部のメーカーが事業を縮小した影響で、売り上げが伸びています。著名なスポーツブランドが市場では全盛ですが、自社ブランド「カンコー」とアクアチタン製品で有名なファイテンとのコラボレート製品「カンコー×ファイテン」は、人気で販売が好調です。「アディダス」も今までの勢いそのままに伸びました。「リーボック」は、ブランディングを強化し、昨年のソリューションフェアで新しいデザインの新商品を多く打ち出しました。既に引き合いも多く、来入学商戦に期待しています。

  ――昨年8月、未来を担う子供たちの“生きる力”を育成する学校教育のサポート事業を本格化するため、「カンコー教育ソリューション研究協議会」を立ち上げました。

 反響が大きく、既に私学を中心に5校ほど取り組みができつつあります。取り組みは経営の活性化や、キャリア教育など多岐にわたり、学校が抱える悩みを、われわれとしてどう支援できるかを考えながら、早く軌道に乗せていければと思っています。

  ――昨年、大手SPAのストライプインターナショナル(岡山市)と協業で、「カンコー アース ミュージック&エコロジー」の学校指定制服の展開も始めました。

 ソリューションフェアで新商品を展示しましたが、これまでにないデザインやカラーで非常に好評でした。既に女子高へ採用が決まり、実績ができつつあります。

  ――昨年9月に東京にオープンした直営店「カンコーショップ原宿セレクトスクエア」の状況はいかがですか。

 「アースミュージック&エコロジー カンコーレーベル」を中心とした通学関連用品を販売しており、売り上げは当初に見込んでいたぐらいは確保しています。ブランド認知には時間がかかるかもしれませんが、集客力があるだけに、今後も期待しています。

  ――直営店については岡山、旭川(北海道旭川市)にもあります。

 ブランド発信のためにはチャネル状況を増やしていく必要があります。大都市に限らず、立地条件が良ければ、直営店を増やしたいですね。

  ――生産面では昨年11月に菅公アパレルの新高城工場(宮崎県都城市)が稼働しました。

 スラックスを中心に初年度12万4000点を計画しています。従業員も順調に増え、生産は軌道に乗りつつあります。スペース的にも余裕があるので、今後は他のアイテムの生産も視野に入れていきます。隣接地では南九州カッティングセンターの着工に入り、今年8月には開所式を実施する予定です。

  ――2017年7月期決算は売上高350億円、経常利益6億円を計画しています。

 この調子であれば、見通しに近いところに着地できると思っています。

  ――来入学商戦に向けての方針をお聞かせください。

 地方創生が叫ばれる中で、学校も特色を出していく方向になってきています。そういった状況を見据えながら、引き続き教育ソリューション事業を幅広く手掛け、軌道に乗せていくとともに、営業拠点を分社化してきましたから、地域に密着した活動を広げていければと考えています。

 おざき・しげる 1998年尾崎商事(現・菅公学生服)入社。2001年取締役、03年専務。06年から社長。

〈思い出の味/毎日食した牛丼〉

 尾﨑さんの忘れられない味は“吉野家の牛丼”。「何しろ大学生の時、2年間アルバイトしていました」と、いつもまかないで牛丼をほおばっていた記憶がよみがえる。アルバイトには段階があり、最初はフロアでレジやオーダーを取り、慣れてくればバックに入り、洗い場、調理、食材準備など担当、最終的にご飯を丼によそうことが「バイトとしての一番のステータス」だとか。同じ吉野家でも店によって味が微妙に違うのは「鍋の管理」によるもので、「これをおろそかにするとすぐにおいしくなくなる」と言う。牛丼と言えば、他にも専門チェーンがたくさんあるが、「やっぱり吉野家の味が一番好きですね」。