2017春季総合特集(69)/明石スクールユニフォームカンパニー/社長 河合 秀文 氏/MC校獲得の精度高める/「デサント」、採用校が過去最高

2017年04月28日 (金曜日)

 明石スクールユニフォームカンパニー(明石SUC、岡山県倉敷市)は今入学商戦、学校制服のモデルチェンジ(MC)で前年並みの採用校を確保した。スクールスポーツも「デサント」ブランドが2004年に提携して以降、最大となる100校以上の採用があり健闘。計画する5月期の売上高255億円(前期248億円、決算内容は事業持株会社の明石被服興業)の達成が見えつつある。

  ――繊維事業の半歩先を考えたときに見逃せない状況変化をどう考えていますか。

 一般アパレルが大不振にありますが、どうやって回復していくか、全く先の見えない状況にあります。これからは労働者不足も叫ばれ、間接的には物流で影響が出てくるはずです。そういった諸問題に対応していくために、われわれ一人一人が意識を変え、付加価値を高める取り組みをしていかなければいけないと思っています。

 例えば10年前を振り返れば、進化したものがたくさんあります。当社は10年間で売上高が1・5倍に拡大しましたが、本社のフロアにいる女性メンバーの人員はそれほど増えていません。つまり、1・5倍の仕事量をこなせるまでITがかなり進化したものだと言えます。

 今後10年を見ても、AI(人工知能)や機械化など、さまざまなものが進化していく可能性があります。当社だけでなく、この業界にとって、どう応用できるかを考えていく必要があります。

  ――今入学商戦について、貴社の状況をお聞かせください。

 学生服のMC校の獲得は、前年並みで推移しましたが、前年に比べ制服供給していた学校を他社に取られる喪失校については少なく、その分は健闘しました。獲得校の着地も状況を見ながら、このぐらいだと予想していましたが、ほぼ予定通りで、予測に対する精度も高まってきました。スクランブル(短納期対応の追加サイズの発注)もありましたが、精度が高まったことで、学校へスムーズに納品することができました。

 詰め襟服やスクールシャツなど店頭販売商品については生徒減に加え、昨年の販売が良すぎたこともあって、やや減収になる見通しです。ただ、着心地の良さを格段に向上させた新企画「スマートワン」や、ニット生地を使った「ラクラン」といった詰め襟服の新商品の販売がまだまだこれからの段階ですから、今後の拡販を期待しています。

 スクールスポーツは、同業他社の事業縮小の影響もあって、堅調に売り上げを伸ばしました。「デサント」ブランドでは「エキスパート」「ベーシック」に加え、15年からデザイン性や機能性を高めた新ライン「エクストラモデル」を追加で投入しました。東京など都市部だけでなく、地方での採用も増えています。04年にデサントと提携して以降、過去最大となる100校以上の採用があり、累計でも1400校を超えました。

  ――企業向けユニフォームのアクティブチャレンジ部はどうですか。

 介護、メディカルへ「ルコックスポルティフ」ブランドを中心に販売を伸ばしています。14年からメディカル向けを開始したことで、リネン関連など新しい取引先が広がっています。

 デサントやルコックなどのブランドは、自社ブランドではなかなか取引が難しく、こじ開けることができなかった“扉”を少し開ける効果を持っています。その扉に入り込む力が徐々に付いてきたと思います。

  ――5月期決算の見通しはいかがですか。

 5月期決算は増収となる売上高255億円を計画していますが、ほぼ予定通り推移するものと見ています。

  ――昨年、詰め襟服を中心に生産してきたアクシーズソーイング(沖縄県糸満市)を拡充し、第2工場を立ち上げました。

 ニットの詰め襟服の商品化で、生産効率がなかなか上がらない部分がありますが、順調に稼働しています。学校別注による多品種小ロット生産が増えるなか、将来的にはジャケットやスラックスなど、さまざまなアイテムを縫えるようにしていきたいと考えています。

  ――AKB48グループの衣装制作など手掛けるオサレカンパニー(東京都千代田区)と、共同企画の学校制服「O.C.S.D」も採用校が増えてきました。

 17~18年度の新入学生対象の制服として中学校・高校で6校の採用が既に決定しています。公式ブランドサイトを作り、新制服導入を検討する学校や入学希望の生徒への発信を強めています。

  ――来期の方針は。

 来期は中学校、高校の生徒数がさらに減ってくることから、08年のリーマン・ショック、15年の消費増税による駆け込み需要の反動に続き、2~3年は踊り場になってくる可能性があります。スクールスポーツ、アクティブチャレンジの双方は売り上げを伸ばすことができるかもしれませんが、学生服の販売は、競合が激しくなり、ますます厳しくなってくるかもしれません。

 かわい・ひでふみ 1982年明石被服興業入社。89年取締役、2002年専務。05年から社長。明石SUC社長も兼務。

〈思い出の味/ロブスターロール〉

 河合さんの忘れられない味は25年前、米国のアウトレットの視察で商社の関係者に連れられて、メイン州のフリーポートへ行ったとき、そこで食べた「ロブスターロール」。タルタルソースのようなものがかかった、新鮮でぷりぷりのロブスターが山盛りでパンに乗せられ、かぶりついた時のおいしさが「いまだに忘れられない」。忘れられずに10年前にも米国に行って食べたほどで、「これを日本で売れば絶対に売れる」と思ったとか。実際、2年ほど前から東京の表参道でロブスターロールを売る店ができたようだが、「新鮮なロブスターでないと、あの味は出せないのではないか」と、まだ食べていない。