2017春季総合特集(26)/カケンテストセンター/理事長 長尾 梅太郎 氏/先読み、ソフト、改革を/15年以降に変化強まる

2017年04月25日 (火曜日)

 カケンテストセンター(カケン)の長尾梅太郎理事長は、「2016年度の事業収支は円高の影響もあり厳しい。今期は若干の増収で計画する」と語る。2015年以降、衣料品業界の苦戦が明確となっている。このため、将来起こりそうなことに先手を打つ先読み、ソフト重視、連携、海外、改革をキーワードにして取り組む。人事制度についても来年4月を目標に改革に挑む。

  ――環境変化をどう見ますか。

 日本は人口の減少で需要が伸びない。世界貿易でも2015年はテキスタイル衣料品とも前年比7%台のマイナスでした。衣料品は09年以降上昇を続けましたが、腰折れの状態にあります。家計調査の被服・履物や商業動態統計の織物・衣服・身の回り品も14年をピークに15年以降は減少しています。いわば、15年以降、衣料品業界の厳しさが数字面でも表れてきました。

  ――15年から厳しさがより明確になりました。

 商品先物取引所はかつて七つあり、200億円弱の市場規模でしたが、現在は実質的に一つになりました。これには従来のビジネスモデルから脱却できなかった▽海外を取り込めなかった▽顧客の声を反映できなかった▽過剰な事務所投資▽経済合理性が伴わない経営統合が続いた――などの要因があります。検査機関は八つで200億円強の規模と推定されます。国内が減少し、海外が伸びるという基調も似ていますが、同じ轍(てつ)を踏まないようにしなければいけません。

  ――前期の業績はいかがですか。

 国内事業は若干の売り上げ増になりそうです。海外事業は現地通貨ではプラスですが、円高で6~7%の減収になる見込みです。インドネシアは増収で黒字化の見通しですが、全体の事業収支は厳しいですね。今期は内外とも若干の増収を計画しています。

  ――今年度の方針は。

 キーワード的に言えば、①先読み②ソフト重視③連携④海外⑤改革――です。先読みとは、将来起こりそうなことに先手を打つということ。そのためにはニーズの変化をキャッチし、情報共有することが出発点になります。昨年12月に国際部が「海外事業戦略2016」を作成しました。組織全体で海外に取り組まないといけませんが、あらかじめどういう視点を持つべきか、それに沿って手を打とうというものです。

  ――ソフトの重視というのは。

 試験の迅速化は重要です。しかし、それだけでは差別化にはなりません。情報や知恵を付加価値として加えていかないといけない。東京事業所で行っている各種セミナーもその一つです。セミナーは顧客サービスですが、事業所スタッフの研修にもなります。品質表示については顧客ニーズがあり、今後も的確なアドバイスをしていきます。

  ――ケアラベルでは商標登録するジネテック社との繊維製品取扱い記号に関する契約に基づき、昨年6月に日本企業向けの「繊維製品の取扱いに関する表示記号に係る知的財産使用許諾規則」を制定しました。海外に向けた日本企業の状況は。

 4月1日現在で、知的財産権への意識の高いバンダイナムコエンターテイメントと良品計画の2社が契約を結びました。昨年10月からはラベルなどを作成する企業向けの「繊維製品取扱い記号に係る情報提供契約」業務を開始しました。ラベル業者などの適正使用を支援します。ジネテック社の商標権が成立した国も、昨年6月の11カ国から5カ国増え、16カ国になりました。アジアで初めてインドが指定されました。

  ――連携も強化しています。

 日用生活品の安全性試験、化学分析などの最大手である日本文化用品安全試験所(ブンカケン)とは、小売業のライフスタイル提案が進む中で、両者の広範な対応力を生かして、顧客の品質管理業務の効率化など利便性の向上を図ろうと連携しています。海外の提携先の検査機関とも連携強化を図ります。特定芳香族アミン試験で連携を進めましたが、他の分野での連携も考えます。

  ――海外事業は。

 国内市場が縮小傾向にある中で、海外事業を拡大します。昨年12月に中国の南通試験室も試験所の許可を得て稼働しました。上海科懇検験服務も抗菌試験室ができました。SEKマークの認定取得を進めています。カケンインドネシアは黒字化の見通しですが、この黒字を定着していかなければなりません。そのほか海外規格試験、海外ブランドの取り込みも地道に推進します。

  ――改革については。

 15年から人事制度改革を準備し、来年4月導入を目指しています。職能給から役割給への転換、年功序列を排するというものです。役員の評価制度の見直しも検討します。人材育成では研修制度の充実を図り、中堅社員をベトナムに研修生として送っています。本部採用の外国人も3人になりました。

 ながお・うめたろう 1974年4月通商産業省(現・経済産業省)入省。92年6月日中経済協会北京事務所長、2001年8月環境事業団理事、07年7月東京工業品取引所専務理事に就任。12年6月からカケンテストセンター理事長。

〈思い出の味/ゆずみそ〉

 「思い出の味は、ゆずみそ。徳島の実家で小学生のときから食べていた」と長尾さん。徳島は高知に次ぐ国内ゆず産地。ゆずを半分に切り、実と皮に分けて、汁と刻んだ皮をみそと混ぜ、再び皮に入れて焼くという。「デパートに行けば、ゆずみそのビン詰めもあるが、これは甘すぎる。やはり家で作らないとおいしくない」。このゆずみそを、あつあつのごはんにのせて食べる。キムチとわかめを入れたうどんもお薦め。「ロンドンに単身赴任していた時代に開発した。オリジナルの絶品」と言う。他にも干し貝柱をほぐして入れたお好み焼はコシが出て美味。ちょっと変わった新メニューを考案している。