技術の眼

2017年05月11日 (木曜日)

 「技術の眼~NEW WAVE GENERATING TECHNOLOGY~」では将来的にニューウェーブを巻き起こすような重要な技術になりうるかもしれないものにスポットを当て、紹介する。

〈YKK/潜在的危険に対処する〉

 ランドセルの肩掛けベルトは、ベルトの穴にピンを通して体に合った長さに調整する。しかし、ピン先は外に突出しており、引っ掛かるなど潜在的なけがの恐れもある。YKKが販売を今年開始した「カバー付美錠」は、このピン先が樹脂製カバーに格納されるというもの。来年4月入学用のランドセルから市場に出てきそうだ。

 開発では「社内デザイナーによるコンペを行い、デザインにもこだわった。かつ既存品と比較してより安全性を高めた構造にする」点に注力した。美錠ピンがカバーを押して自動的に格納される。大人のベルトやバッグも対象になるが、まず安全・安心が求められる子供のランドセルから着手した。

 カバー付美錠はオール樹脂(1色)と本体ダイキャスト製(4色)の2タイプがある。

〈KBツヅキ/20%以上軽い綿糸開発〉

 KBツヅキはこのほど、従来綿糸に比べて20~25%軽く、ソフトさやバルキー性にも優れる紡績糸「ラブリーゼ」を開発した。同社独自の紡績技術「MFTS」と、使用権を得たI.S.T(大津市)の特許技術などを組み合わせて商品化した。

 熟成させることで中空率を高めた綿のスライバーを、精紡機内で4分割した上で、わずかに延伸したナイロン長繊維に巻き付ける。巻き付ける際に4分割された綿が蛇行したような状態になるのが特徴。この結果、かさ高のある糸に仕上がる。

 かさ高性が高いため、ラブリーゼ10単の糸の直径は純綿糸8単とほぼ同じ。25単は20単相当、36単は30単相当となる。双糸にするとその効果はさらに大きくなる。綿でありながら、ウール感覚のソフトな風合いがある。空気層が多いため、かさ高性に加え、保温効果も高い。芯にナイロンを使っているため水分拡散を促し、速乾性が高い。ストレッチ性もあり、シワになりにくい。

〈豊島「オーガビッツ」/「しゃべるタグ」でアピール〉

 豊島はオーガニック綿の普及を目指すブランド展開「オーガビッツ」に「しゃべるタグ」を導入する。オーガビッツの取り組みや社会貢献活動支援の内容を、商品下げ札からインターネットにアクセスして音声で紹介するもので、消費者への情報発信とともに、店頭での販促ツールとしての活用を想定する。

 下げ札に印刷されたQRコードをスマートフォンなどで読み取り、アクセスしたウェブサイトに下げ札を配置すると、オーガビッツの取り組み内容が音声付き動画で紹介される。

 動画はオーガビッツが支援する社会貢献活動プロジェクトなど8種類から開始し、内容の更新や他の社会貢献プロジェクトを加える予定。商標登録も申請しており、顧客ブランドのオリジナル動画の取り組みも視野に入れるなど発展的な展開も検討する。店頭販売員が来店客に分かりやすく伝えることができる販促効果も期待する。

〈遠山産業/枕の中材に割り箸〉

 遠山産業は、スギの間伐材で高級割り箸を製造する磐城高箸(福島県いわき市)と共同で不良品の割り箸をチップにして中材にした枕「眠り杉枕」を開発した。

 磐城高箸が割り箸のチップを入れた枕を開発したが、側地の開発に難航、遠山産業が協力し昨年12月に完成させた。

 枕の特徴は、割り箸の製造工程で出た不良品を5~6ミリ四方に裁断し、中材にしていること。スギの香り成分セドロールが安眠効果をもたらし、チップ同士が擦れることで表面が削れて香りが長続きするという。福島県いわき産のスギを使用し、柔らかさと吸水性もある。

 こだわったのは枕の側地。厚過ぎると香りを遮ってしまい、薄過ぎるとチップの硬さが目立ち、おがくずも漏れてしまう。そこで、遠山産業はポリエステル100%の3層構造のメッシュとポリエステルタフタを合わせた生地を考案し、クッション性がある上に、おがくずを漏らさずに香りだけを通す通気性を実現した。

〈アルトコーポレーション/日本初「コーデュラ」採用〉

 ユニフォームアパレルのアルトコーポレーションは、ワーキング用コンプレッションウエア「アルファフォース」を今春発売する。インビスタ社の高強度ナイロン素材「コーデュラ」を採用して耐久性と高機能性を兼備。同素材を使用した国内初のコンプレッションウエアとなる。

 新商品の開発に当たり同社は、従来のコンプレッションウエアを検証。ワーキングウエアの生命線である耐久性を高めるため、コーデュラの採用に踏み切った。かばんやアウトドアウエアなどに使用され、強度には定評がある。アルファフォースの第一弾商品はナイロン85%・ポリウレタン15%の混率で、接触冷感機能を加えている。試験では、耐久性の基準となる擦れの強さは市販品の16倍、接触冷感値は1.5倍となった。

 「炎天下の長時間労働などではスポーツ用の強い着圧はかえって負荷になる」と「ゆるピタ」設計とした。

〈UTC/「セシェ・シックス」開発〉

 ユニチカトレーディング(UTC)は18春夏向け婦人服地として新素材「セシェ・シックス」を開発した。リネンのような表情とドライタッチを打ち出してイージーケア需要の高いヤング向けスーツ用途などで採用を狙う。同シーズンの服地販売は、新素材の販売と既存素材のモノ作りを拡充することで前年同期比5%増を目指す。

 セシェ・シックスは6葉断面の凹凸構造を持ったポリエステル。光の乱反射でマットな表情になるとともに、適度なコシでリネンのようなドライタッチにもつながる。「合繊の機能と天然繊維の風合いを融合した素材が18春夏のポイント」とし、展示会ではスーツ、パンツ用の中肉素材を披露する。イージーケア性に対する需要が高い若い年代向けの採用を狙う。

 川中企業や生地商社との連携で差別化要素を高める素材開発・提案で18春夏の婦人服地販売は前年同期比5%増を目指す。