特集 快適機能素材・加工(3)/検査機関に見る快適性能とは

2017年05月22日 (月曜日)

 快適性を求める消費者。それを生地で具現化するテキスタイルメーカー。快適素材はさまざまなニーズとともに進化してきた。とはいえ、そうした商品開発が実際に機能しているかを試験するのが、検査機関である。

〈カケン/メーカーの海外展開支援/防護機能性試験にも強み〉

 カケンテストセンターは海外での機能性試験対応を拡充している。ISO規格など標準化でもカケンが開発した試験方法が採用されており、これらを活用した試験でメーカーの海外展開を支援することを目指している。

 近年、日本から提案された機能性試験方法がISO規格に採用されているが、こうした分野でもカケンは大きな役割を担ってきた。例えば吸汗速乾性試験や吸湿発熱性試験方法はカケンが開発したカケン法がISO規格に採用されている。

 新たにISO化された試験方法を海外の試験所でも対応することでメーカーの海外展開を支援する。既に中国、インドネシアなどで吸汗速乾性や吸湿発熱性試験を実施している。特に中国は子会社である上海科懇検験服務が南通分公司を開設し、昨年末から機能性試験を開始した。

 上海科懇検験服務は繊維評価技術協議会の「SEKマーク」の指定検査機関にもなっており、4月から「SEK抗菌防臭加工マーク」認定のための試験も可能になった。

 海外での試験精度向上のために日本から技術者を派遣しており、国内と同様の安定した試験を実施する体制が整備されている。

 一方、国内でも快適や衛生に焦点を当てた試験体制が整備された。大阪事業所の生物ラボでは通常の抗菌性や抗かび性といった機能性試験に加えて抗ウイルス性試験にも対応している。こちらも「SEK抗ウイルス加工マーク」認証に対応している。

 血液バリア性やウイルスバリア性など防護機能性試験にも力を入れる。もともとマスクの性能試験としてスタートしたものだが、今後は防護服用途などでも試験ニーズの拡大が期待できる。

〈QTEC/機能性試験に幅広く対応/事業所ごとに特徴出して〉

 日本繊維製品品質技術センター(QTEC)の福井試験センターの機能性試験チームはカーテンを中心にインテリアの機能性試験を行う。カーテン素材の断熱(遮熱)性評価方法や保温性評価方法は、販売各社の管理基準として広く採用され、住環境の快適性を支援する。

 カーテン関連では遮光性試験・採光性試験や光拡散試験など明るさに関わる試験をはじめ、花粉付着性試験や防汚試験なども実施。同センターは消防法関連の燃焼試験設備を置き、防炎性能の評価も行う。

 神戸試験センターには微生物ラボがある。繊維製品の抗ウイルス性試験、抗菌性試験、抗カビ性試験、消臭性試験などを実施する。繊維評価技術協議会の各種SEKマークにも対応しており、抗菌防臭加工、制菌加工のほか、消臭加工商品にも対応する。

 洗剤・石けん公正取引協議会が定める除菌試験、日本衛生材料工業連合会の定めるウエットワイパー類の除菌性能試験も行い、その認定試験機関でもある。

 消臭加工は夏場の汗臭対策などで需要が多いが、中部事業所の水系試験チームはウオッシャブルスーツの保形性など外観を評価する。同事業所の恒温恒湿室で芯地と生地との接着変化やプレス具合などを試験している。

 東京総合試験センターでは生活用品の機能試験を実施。靴では屈曲性や防水性のほか、靴の滑りやすさを測定する耐滑試験も行う。東部、西部事業所の顧客サービスユニットや西部事業所の営業ユニットは顧客先の快適性ニーズをラボに伝える役割も果たす。

〈ニッセンケン/コンサルティングも強化/マーケ機能を拡充〉

 繊維製品のあらゆる機能性試験に対応するニッセンケン品質評価センター(ニッセンケン)。一般試験だけでなく、接触冷温感や吸水速乾、通気性、熱伝導率、撥水(はっすい)性など快適性能を高める試験項目に関しても、日本国内はもとより、中国やインドを含むアジア地域でカバーしている。

 各種試験業務に加え、繊維製品の表示事項や品質管理に関する個別相談業務にも定評がある。その要が2013年に設置した品質コンサルティングチーム(QCSチーム)。今春、マーケティングチームを加え、2チーム体制の「コンサルティンググループ」に組織改編した。

 QCSチームによる試験結果に基づいた適切な表示提案や品質に関わるアドバイス、クレーム品の原因究明はもちろん、マーケティングチームは客先の問い合わせに対して品質や生産などの管理業務に関わるシステム構築などの提案・アドバイスを行う。

 素材から製品まで差別化・付加価値化が進む中、JIS規格だけでは補いきれない新しい概念の快適性の追求も見られる。そうした場合も依頼者とコンサルティンググループが緊密に連携し、最適な試験方法の提案や新たな試験方法の開発、表示の仕方から営業的な内容も含め、目指す方向性の実現に向け徹底して掘り下げる。

 客先の要望に合わせたセミナーも好評。特にアパレルからは試験現場の見学と併せたセミナーの依頼が増えているという。今後もニッセンケン独自の業務であるコンサルティンググループの内容をさらに強化し、客先の商品の品質向上・ブランド化をサポートしていく。