繊維ニュース

特集スクールユニフォーム(1)/制服が新たな“価値”生み出す

2017年05月26日 (金曜日)

 スクールユニフォーム市場は少子化による生徒減の影響が如実に表れ始めている。来年は約6万人も中高への入学者数が減る見通しで、これからも市場の縮小は進む一方となる。制服供給に関わる学生服アパレルをはじめ、素材・副資材メーカー、商社など、制服の価値を高め、より必要とされる存在へと認識されるために、一歩先を見据えた戦略を描きつつある。

〈今入学商戦MCは177校/5年連続で東京最多〉

 ニッケの調査によると、今入学商戦での全国の学生服モデルチェンジ(MC)校数は、前年より24校少ない177校だった。この10年間で最も少なかった2012年の164校に比べ多いものの、15年の167校に続き低水準の結果となった。

 内訳は、高校が国公立64校、私立43校の計107校、中学が国公立49校、私立21校の計70校だった。都道府県別で見ると、東京都のMC校数が過去3年で最も多い30校(前年28校)で、全国でも5年連続で最多。内訳は、中学が前年と同数の16校、高校は2校増えて14校だった。次いで多かったのが大阪府の14校(30校)で東京の半数を下回った。

 地域別では、中高合わせて首都圏が57校(前年60校)、近畿が33校(55校)、東北が15校(17校)、東海が14校(14校)、九州が26校(13校)、信越・山梨が9校(12校)、中国が12校(11校)、四国が4校(10校)、北海道が7校(9校)。MC校数は九州と中国地方で増加、東海地区が前年と同数となったのを除いて減少した。

 減少の背景には、16年に大手メディアによって学生服価格を巡る議論が大きく取り上げられたことや、学生服の素材・デザインの一部だけを新しくするマイナーチェンジが増加したことが考えられる。一方、MCのきっかけになりやすい学校の統廃合、共学化、中高一貫化といった再編の流れは少子化の影響もあって続いている。

 文科省の学校基本調査によれば、来年中高合わせて入学者数が約6万2000人減る見通し(8㌻参照)で、ニッケの細田直樹衣料繊維事業部ユニフォーム事業部長は「MC校数は多くて今年と同水準になる」との見方を示す。

〈学生服アパレル大手/手堅くMC校を獲得〉

 学生服アパレル大手4社は今入学商戦、前年並みの制服モデルチェンジ(MC)校を手堅く獲得した。

 菅公学生服(岡山市)は、2013年から総合展示会を「スクールソリューションフェア」とし、異業種も交えながら学校支援の要素も強めてきたことで「昨年よりもMC校の獲得が順調に進んだ」(尾﨑茂社長)。さらに、学生服流通大手で昨年8月に日本メンモウから社名を変更した東京菅公学生服(東京都中央区)と一体となった企業運営が奏功し、首都圏でのMC校獲得が増加した。

 トンボ(岡山市)は、前年並みにMC校を確保し、生徒数も前年を上回り、前年に続き3月単月の売上高は過去最高を更新した。スクランブル(短納期対応の追加サイズの発注)が3月後半に集中したが、「例年より少なかった」(近藤知之社長)ことでスムーズに制服を納品することができた。

 明石スクールユニフォームカンパニー(明石SUC、岡山県倉敷市)も、前年並みのMC校を獲得。制服を供給していた学校を他社に取られる「喪失校が前年に比べ少なかった」(河合秀文社長)。瀧本(大阪府東大阪市)も、前年並みのMC校を獲得し、「認知が少しずつ広がってきた」(高橋周作社長)という「ミズノ」「カンゴール」の採用校も増えつつある。

 今入学商戦の結果を踏まえ、今期の決算は瀧本が前期並みを想定する以外は、増収になる見通しで、MC校数が低水準だったにもかかわらず、健闘したと言えそうだ。ただ、純粋に学生服の販売が売り上げを押し上げたわけではなく、「これまで値上げできていなかった積み残しが寄与した」(副資材メーカー関係者)、「スポーツの拡大の方が貢献している」(商社関係者)との見方で、市場の環境としては決して良いとは言い切れない。

 特にスクールスポーツは、アシックスの事業見直しの影響からそのパイを巡って各社は新規採用を伸ばした。明石SUCは、「デサント」の導入以降、過去最大の100校以上の採用があり、累計では1400校を超えた。トンボも、「ヨネックス」をはじめスポーツ全体では200校以上の新規採用校を獲得。「来期が一番の勝負の年になる」(近藤社長)と、各社でシェア拡大に向けた動きが一段と加速しそうだ。

 スポーツは来期も伸ばせる余地があるものの、学生服は「新規の採用校があっても生徒数の減少をカバーするのが難しい」(瀧本の高橋社長)と、売り上げ拡大が望みづらい状況になりつつある。来年、中高の入学者数が大きく減ることから、08年のリーマン・ショック、15年の消費増税による駆け込み需要の反動に続き、「2~3年は踊り場になってくる」(明石SUCの河合社長)と、警戒感を隠さない。

〈価格競争に巻き込まれない/ブランディング強化〉

 スクールユニフォーム市場に生徒減の影響が出てきた中で、学生服アパレル各社はこれまでの戦略の見直しを迫られている。競合が激しくなれば、当然価格競争も熱を帯びてくる可能性もあるが、“入学式に制服を必ず届ける”という特異な事情から、一般衣料のように生産を海外に移すことができず、「価格競争は自らの首を絞める」(アパレル関係者)結果が目に見えている。

 そういった価格競争を避けるためにも、これまでと違ったブランディングで学校のニーズをしっかり捉えようとする動きが活発化する。菅公学生服は、大手SPAのストライプインターナショナル(岡山市)と協業で、「カンコー アース ミュージック&エコロジー」の学校指定制服の展開を開始。ソリューションフェアで同ブランドの制服を展示したところ「これまでにないデザインやカラーで非常に好評」(尾﨑社長)で、来年から女子高への採用が決まりつつある。

 同社はアイドルグループ「乃木坂46」などの衣装デザイン・スタイリング担当の米村弘光氏との共同プロジェクト「世界にひとつのみんなの制服 スタイリング・バイ・ヨネムラヒロミツ」も展開しており、こちらも少しずつ採用校が増えてきた。

 アイドルの衣装制作に携わる企業との連携としては、明石SUCも力を入れており、AKB48グループの衣装制作などを手掛けるオサレカンパニー(東京都千代田区)との共同企画の学校制服「O.C.S.D」を打ち出している。今年1月には公式ブランドサイトをリニューアル、実際に制服を導入した学校の事例を発信することで、「新制服導入を検討する学校や入学希望の生徒への発信を強める」(河合社長)。

 トンボは、来入学商戦に向け新規MC校の獲得が順調な滑り出しで、新ブランド「イーストボーイ」の採用も数校へ決まりつつある。基本的に女子向けのブランドだが、数校へ採用が決まる中、これまでにない男子向け制服も作成。「正統なトラッドファッションのデザイン性を崩さず、おしゃれな制服を供給する」(近藤社長)考えだ。

 15年に「カンゴール」「ミズノ」ブランドを投入した瀧本は、「ようやく認知され始めたところで、採用校は数校に留まっている」(高橋社長)段階。「カンゴールは高いファッション性、ミズノは動きやすく16年度のグッドデザイン賞にも選ばれている」といった強みを明確にしながら販路を広げる。

〈学校のニーズを捉える/新たな視点で市場開拓描く〉

 一方で価格競争に巻き込まれないためにも、制服を販売するだけにとどまらず、新たな事業を創出しようとする動きが強まってきた。「地方創生が叫ばれる中で、学校も特色を出していく方向になっている」(菅公学生服の尾﨑社長)こともあり、商機のつかみ方が変わりつつある。

 菅公学生服では昨年8月、子供たちの“生きる力”を育成する学校教育のサポート事業を本格化するため、「カンコー教育ソリューション研究協議会」を設立。既に数校の私学との取り組みが進んでおり、「教育ソリューション事業を幅広く手掛け、軌道に乗せる」(尾﨑社長)。

 明石SUCも制服の販売だけでなく学校をサポートする新たな事業創出も検討しており、具体的には今年6月ごろに発表する予定。その一例として昨年、「高校生手話パフォーマンス甲子園」に協賛し、PRキャラクターを活用しながらイベント時の大会のPRなどさまざまな支援を実施した。このような取り組みは今後も継続していく予定で、新たな視点から学生服市場の開拓を描く。

「繊維ニュース」アンケート調査/制服の更新頻度は15年に1回?

 本紙「繊維ニュース」では、昨年9月30日付に発行した「スクールユニフォーム特集」で、全国の中学校や高校にアンケートを実施、うち43校から有効回答があった。アンケートの項目は①「これからの学生服にあればよいと思う機能性」(選択・複数回答可)②「制服の更新頻度」③「現状の制服の満足な点、不満足な点」(選択・複数回答可)――の3点。

 まず、①については「家庭洗濯」(19・1%)が最も多く、次いで「形態安定」(14・8%)となり、家庭への経済性や共働きによる家事負担の軽減への配慮がうかがえる結果となった。以前は「形態安定」が高い割合を示していたが、一時期「制服の価格が高い」との報道が強まったこともあり、少しでも家庭への負担を減らすことを念頭に制服更新を考える学校が増えてきたようだ。

 ②については、「10年以上15年未満」が23・3%と一番多く、次いで「20年以上30年年未満」「その他/分からない」が20・9%だった。中には「3年」や「50年」と回答する学校もあったが、ファッションのトレンドや素材の進化など考えると10~30年間で更新するのが適切と考えているとみられ、年数を回答した学校のみを平均すると、約15年に一度はMCを実施している結果となった。

 一方で「その他」の中には「学校が大きく変わるとき」(徳島県立小松島高校)といった回答もあり、おそらく「不定期」(4・7%)の回答も含め、学校の周年行事などに合わせて更新を考える学校もあるようだ。「未回答」も少なくなく、異動が多い公立学校の教員からの回答で目立った。中には「満足していないが、伝統校で変えることができない」(熊本高校)といった声もあった。

 ③ではデザインに高い満足感を示すものの、価格や機能性に不満がある傾向が分かった。「生徒指導しやすい」(兵庫県立尼崎高校)、「女子制服で体形が目立たない」(岩手県立盛岡農業高校)、「生地に高級感がある」(安田女子高校)といった制服に満足する声がある一方、「ほこりが出やすく耐久性がない」(盛岡農業高校)、「季節への対応が不十分」(愛媛県立小松高校)といった声が聞かれた。