特集スクールユニフォーム(8)/アパレル編/これからの市場見据えた戦略描く

2017年05月26日 (金曜日)

 来年、中高の新入学生が大きく減ると予想される中、学生服アパレルは単に制服を販売するだけではなく、学校に対して一歩踏み込んだ取り組みを模索するなどで、新たな戦略を描きつつある。ますます競合が激しくなると予想される市場で、どれだけ存在感を高めることができるかが、今後の学生服アパレルに問われている。

〈“競争の土俵”変える/ソリューション事業広げる/菅公学生服〉

 菅公学生服(岡山市)は、学校教育のサポートなどソリューション事業の拡大を進めている。ソリューション事業を広げ、“競争の土俵”を変えることで、少子化で競合が激しくなる制服市場での存在感を高める。

 今入学商戦は、2013年から開催する、異業種も交えながら学校支援の要素を含んだ総合展示会「カンコーソリューションフェア」への学校関係者の来場が年々増えていたことに加え、「求められるニーズに対して、戦略的に動けるようになってきた」(問田真司常務)ことで、モデルチェンジ(MC)校の獲得が拡大した。

 さらに昨年8月には学生服流通大手の日本メンモウ(東京都中央区)が、「東京菅公学生服」に社名を変更し、より一体となった企業運営を進めたことで、首都圏での販売が拡大。13年から進めてきた営業拠点の分社化でも「エリアに応じた戦略と地域に密着した活動」(問田常務)で、九州では例年以上にMC校を獲得することができた。

 来入学商戦に向けては、大手SPAのストライプインターナショナル(岡山市)と協業で打ち出す制服「カンコー アース ミュージック&エコロジー」が女子高で採用されるなど、販売が本格化。さらに学校の教育ソリューション事業に対するニーズを掘り起こし、寡占化する制服市場の中で、「新たな事業の幹を太くする」(岩井聡開発本部副本部長)。

 カンコーソリューションフェアでは今年初めて九州の福岡で開催を予定するほか、昨年立ち上げた「カンコー教育ソリューション研究協議会」を通じて、キャリア教育など、これからのソリューション事業の形を模索。実際、協議会の設立は学校からの反響が大きく、「ニーズを感じている」(問田常務)として、事業を軌道に乗せながら、市場での存在感を高める。

〈制服の価値を高める/学校関連サポート事業創出へ/明石SUC〉

 明石スクールユニフォームカンパニー(明石SUC、岡山県倉敷市)は来入学商戦に向け、制服価値の向上に取り組みながら、モデルチェンジ(MC)校の獲得につなげる。柴田快三常務は「無理な競争はしない」と述べ、価格競争に巻き込まれない戦略を構想。「制服を売るだけでなく、学校に対して役立つこともする」と、学校関連サポート事業の創出を視野に入れる。

 今入学商戦、学生服のMC校の獲得は前年並みで、制服を供給していた学校を他社に取られる喪失校も少なく堅調。システムを改善し、営業から生産・物流までの一連の流れの“見える化”し、精度を高めてきたことで「計画通り獲得することができた」(柴田常務)。

 来入学商戦に向け、15年に採用したPRキャラクターを通じて、制服をユーザーにとってより身近な存在としてアピールするとともに、キャラクターの活用で「アイデアを出しながら販売での相乗効果につなげる」取り組みを加速する。

 AKB48グループの衣装制作などを手掛けるオサレカンパニー(東京都千代田区)との共同企画の制服「O.C.S.D」では今年1月、公式ブランドサイトをリニューアルし、制服を導入した学校事例を発信することでMCを想定する学校への関心を高める。

 店頭向け商品では着心地の良さを向上させた「スマートワン」や、ニット生地使いの「ラクラン」といった詰め襟服を中心に、独自性の高い商品が好評。商品そのもの価値に加え、企業を含めた「全体の価値を高める」動きも模索する。

 昨年、「高校生手話パフォーマンス甲子園」に協賛、PRキャラクターを活用しながらイベント時の大会のアピールなどさまざまな支援を実施した。今後も継続する方針で、学校をサポートする新たな事業創出にも取り組む。

〈総合力でニーズ捉える/「イーストボーイ」拡大へ/トンボ〉

 トンボ(岡山市)は来入学商戦に向け、MC校の獲得が順調な滑り出しで、新ブランド「イーストボーイ」の採用も数校へ決まりつつある。安田和弘取締役販売本部長は企画から生産、営業を含め「総合力を高めながら、学校のニーズに合った提案を強める」と話した。

 今入学商戦は、前年並みにMC校を獲得、特に首都圏や東海地区や九州の福岡で採用校を拡大。生徒数では有力校を獲得するなどで前年より伸ばすことができた。英国ロキャロン社とのタータンチェック企画も採用校が拡大するなど、創業140周年に沿って展開してきた「トンボ140thアニバーサリーマーチャンダイジングプロジェクト」推進の成果を出すことができた。

 来入学商戦に向けては、堅調だった昨年の同時期の状況と比べても「いいスタートを切っている」(安田取締役)。イーストボーイは、基本的に女子向けのブランドだが、数校へ採用が決まる中、これまでにない男子向け制服も作成。ブランドのテイストを崩さず、正統なトラッドファッションをアピールしながら、採用校の拡大に取り組む。

 東海地区でMC校の獲得に向けた動きが活発化していることを受け、今年7月には販社のトンボメイト(名古屋市西区)を支店化する。直接管理し、一体化することでエリア戦略をより強化する。

 今年6月から10月にかけ東京、大阪、福岡、名古屋で「学校魅力化計画」をテーマに総合展示会の開催を予定している。イーストボーイの最新制服をはじめ「かなりの新作を打ち出す」一方で、ユニフォームコンシェルジュによる、その場で作るオリジナルコーディネートやオリジナルタータンの作成など、「“コト”の発信」にも注力。「トンボの総合力を前面に出した」展示で制服への関心を高める。

〈“よそにない”開発強化/強み生かす営業が成果に/児島〉

 児島(倉敷市)は今入学商戦、制服部門の売り上げが前年に比べ微増収で推移した。石合繁則専務は「本社、営業所各部門でそれぞれの強みを生かした営業により、成果に結び付いた」と話す。2014年にキッズデザイン賞を受賞したニット素材の学生服「REVO―3(レボ―3)」も西日本を中心に販売が拡大した。

 来入学商戦に向けては、地方の人口減少に対応し、「地域に応じた営業を全社で取り組み、売り上げ増を図る」(石合専務)方針。学校の期待や要望に応えるため「企画・営業両面でよりきめ細かい対応をする」ことで売り上げに結び付ける。

 3年前から“コジマクオリティー”を訴求し、「モノ作りに対してのこだわり」をシステム制度「コジマスター」として確立。人材育成を強め、「着用者の身になったモノ作り」を進めている。

 7月3~7日に開催を予定する展示会では、前年に引き続き、「安心・安全・愛」をテーマに、視認性の向上とデザイン性を融合させた商品を充実。サブテーマとして“ユー(あなた、優)”を打ち出し、「“よそにないもの”の商品開発」を強める。

 本社では物流センターの建設を進めており、10~11月に完成する予定。近隣で活用していた物流倉庫を集約し、定番商品を中心に出荷を効率化する。さらにアソート対応の出荷も増えており、物流改革を進める。

〈大手と違うアプローチで/制服ない学校も採用広げる/オゴー産業〉

 オゴー産業(倉敷市)は今期(2017年5月期)、今入学商戦でMC校の獲得が前年並みに進んだことやスクールスポーツの販売が伸びたことで、売上高が21億円超(前期20億8000万円)と増収を見込む。大手と違ったアプローチによる販路開拓が少しずつ成果を出し始めてきた。

 今入学商戦は、前年並みにMC校を確保した上に、制服がなかった学校やこれまで同社と全く接点のなかった学校など新規校も獲得でき、大手間のMC校獲得の競合が激しくなる中で健闘した。

 店頭向け商品も、小学生向け快適ニットシャツ「楽スクール」といった、通常のスクールシャツよりも価格帯が高いものの、少しずつ市場へ浸透。大阪の小学校では「布帛のシャツなどを含む3種類の併売のうち、最も値段の高かった楽スクールが一番よく売れた」(末石和広営業部兼商品部長)という事例もあり、販売代理店への関心を高めた。

 来入学商戦に向けて、6月の展示会で新商品を多数打ち出す予定で、「大手と違うアプローチで仕掛ける」(片山一昌経営企画部長)。詰め襟服「鳩サクラ」では、開発で原点回帰し、新商品を投入するほか、小学生向けの制服ではニット化を推進。ウールを中心とした高級素材も引き続き提案しながら、「こだわりの商品をそろえる」ことで、販売代理店や学校からの注目度を高める。

 さらに標準服導入の手引書の配布や、今年10回目を迎える「安全マップコンテスト」など、プロモーションも充実させながら市場開拓を進める。

〈新たなブランド導入へ/大手アパレルと契約/瀧本〉

 瀧本(大阪府東大阪市)は来期、新たなブランド展開を始める。今年初旬に国内大手ファッションアパレルとライセンス契約を結んだ。まずは女子生徒向けに商品を開発し2019年入学生に向けて販売する。寺前弘敏生産本部副本部長は新ブランドについて「当社にこれまでなかった若い女性に認知度が高く華やぎのあるもので、そのゾーンでの競争力になる」と期待する。

 新たなチェック柄として、スコットランドのタータンブランド「DCダルグリーシュ」を導入する。オリジナルチェック柄を企画し、スカートやブレザーに落とし込む。両ブランドともに10月に東京と大阪で開く展示会で披露する予定。

 17年6月期は売上高98~99億円を見込む。営業利益は前期比増となる見通し。営業、生産の両面で効率化、コスト削減が進んだ。高橋周作社長は「来期まで一連の経営体質の改善を続ける」とし「今年から次の3年を見据えた新たな事業計画を立てる」と話す。18年入学商戦については「生徒数減で一層厳しい環境となるが、堅実な目標を立てできることを実行していく」方針だ。

 来期は中期経営計画の最終年度で改革の総まとめとなる。今期以上に受発注や生産の精度を高めることで追加生産や返品を少なくし、適時に必要な量を生産できる体制を整える。

〈重点課題掲げ業容拡大へ/生産体制の平準化にも/ハネクトーン早川〉

 ハネクトーン早川(東京都千代田区)は、寡占化が進む業界変化に対応するため①織り・縫製など生産体制の平準化②新企画の打ち出し③幅広い提案による既存顧客の深掘り――を掲げ、業容拡大を図る。

 栃木県下野市に保有する縫製工場は、安定的な操業を続けている。縫製工場は人材不足に悩まされているが、同社では新卒採用を続けており、バランスの取れた従業員の年齢構成により、生産力を維持する。今後は産地の機業との連携強化で生産スケジュール管理の円滑化、品質向上、生産効率化をさらに進めていく。

 近年は、商品採用に至るまでの柄提案の数も増加傾向にあり、制服に合わせるネクタイだけでなく、オプション対応のリボンといった首回り品採用に向けた打ち出しも重点課題に置く。部活動に特化したオリジナル企画や付属品の提案など既存の販売チャネルでの深掘りも注力する。

 新企画では、商品に付ける留め具の見え方を改良したものなどを披露する。7月の展示会ではオフィスユニフォームだけでなく同社初となるスクールネクタイ、リボンを加えた総合的な提案で受注増を図る。

〈ウールの価値 より前面に/展示会秋口に、内容再編/佐藤産業〉

 ニッケグループの佐藤産業(東京都千代田区)はニッケのウール高混率素材「MIRAIZ(ミライズ)」をプロモート商品に需要喚起に注力する。毎夏に開催している展示会の時期を今年は秋口にし、学校向けの提案を強化すべく内容を検討中だ。

 「よい制服はよい人間、良い環境を作る」を理念に首都圏を中心に高品質な制服を提供する同社。バイオーダーのほか自社ブランド「エッセスコラ」「グリーンメイト」を展開しており、エッセスコラは高品質ウール(ウール100%/70%)を使用した高級ライン。グリーンメイトはベーシックの良さを追求、機能性・快適性を加味し提案幅を広げる。昨年は詰め襟のモデルチェンジ提案の強化のほか、ニュージーランドメリノウールにポリエステルを加え高級感と優しい肌触り、快適なストレッチ性を備えたウオッシャブル素材「グリーンウォッシュ」を提案し関心を引いた。

 今春は私学の別注は堅調だったが営業所を置く栃木県宇都宮市はじめ北関東で生徒数が減り、売り上げにも影響した。状況を踏まえ、「公立校、併願校の増減が予測しづらくなっている。ウール素材の価値をより明確に打ち出すとともに、情報収集も強化していく」方針。

 学校制服素材でポリエステル混率が高くなる傾向にある市場で、ミライズを押してウール主体の高付加価値化を図る。

 展示会は本社の近くの会場で7月に開催していたが「自社の製品や生産背景を総合的な紹介から提案を一歩深め、モデルチェンジを検討している学校関係者のヒントとなるような内容」にリニューアルする。

 アイドルグループの衣装を手掛けるアクタス(渋谷区)との連名による制服アパレルブランド「アクタスアイ」は春夏コレクションが展開中。「制服の新たな幕開け」をテーマに掲げ、注目を集めている。

〈「本格志向」に商機/30年後もあせぬ魅力を/吉善商会〉

 私立校の別注制服を得意とする吉善商会(東京都中央区)は、近年の傾向として「校風を重視した制服、例えばブリティッシュ・スタイルが好反応を得るなど、本格志向に回帰してきている」と話す。ファッション化が進んだ反動とも考えられ、デザイン・品質・素材が評価されることは同社にとって追い風。吉村善和社長は「学校と一体になって20年、30年たっても魅力のあせない服を作り上げる」と意欲を示す。

 今春までの商況は微減収で推移。昨年の大型案件の獲得による減少だが、原材料費の上昇を反映した価格の理解を一定数得たことに加え、生産効率化に努めたこともあり、利益は昨年並みを維持した。特に効率化に関しては「納期の滞りもなく順調だった。管理システムの強化、新規工場の拡大も進めていく」(吉村社長)。

 今春からオリジナルブランド「ZIPPY(ジッピー)」を「ジッピー」「ジッピー・クチュール」「ジッピー・クラス」の三つに再編成。ジッピーはベーシックなブレザースタイルを基調に、生徒の感性と集合美を体現。ジッピー・クチュールは花井幸子氏、渡辺弘二氏によるオートクチュール仕立て。著名デザイナーによる学校制服をいち早く提案した同社ならではの高級ラインだ。

 ジッピー・クラスは10代の目線で制服を提案する。ファッション誌「レイ」「ヴィヴィ」とタイアップし、クラス感のあるディテール使いで洗練感を演出する。希望により制服の雑誌掲載やインタビューなどのコンテンツサービスも対応する。

 同社のもう一つの特色が中国との文化交流事業。北京市の教育界の要請で、1994年に初の学生服ファッションショーを開催したことがきっかけで、修学旅行や留学など2国間の橋渡しを担ってきた。政治的な緊張感が高まることはあったが教育関係者の関心は高く、近年は国際的な連携を実践する「ユネスコ・スクール」制度を介したことでより円滑になってきているという。こうした側面から学校と接点を持てることも独自の強みとなっている。

〈人材育成と生産体制充実/新入社員採用も積極的/光和衣料〉

 光和衣料(埼玉県久喜市)は、足元の商況も安定飛行を続けており、工場の生産効率化や人材の充実化など工場環境を整えつつ、さらなる業容拡大を進めていく。

 セーラー服を主体に手掛ける同社にとって、増加傾向にあるブレザーの導入は一見、懸念材料だが「名門校をはじめセーラー服の要望は少なくなく、学生服全体の3~4割のシェアは確保している」(伴英一郎社長)と悲観的ではない。

 「中学校でブレザーを着ていた学生は高校ではセーラー服着用の学校を選ぶパターンもあるので大きく心配していない」と語る。

 ただ、少子高齢化の進行やリユース店の拡大など業界を取り巻く環境が厳しいのは確か。安定した供給を維持するため生産加工料金の値上げにも随時取り組んでいる。

 今後は少子高齢化の進行も踏まえ、工場での小ロット生産の充実化など時流に沿った生産体制を整えていく。人材確保に関しても、毎年新入社員を採用しており、今年も8人の入社が決まっている。

〈制服が似合う有名人は?〉

 トンボは、「制服が似合う芸能人・有名人」のアンケートも実施したところ、親子ともに1位は広瀬さんだった。2位は新垣結衣さん、3位は有村架純さん、4位は福士蒼太さんと1位から4位まで順位が重なり、1位の広瀬さんは親世代で20%以上、子供世代でも約36%が回答し、高い支持とイメージを得た。

 10位内にランクインした芸能人・有名人は、全て18歳以上で、リアル「制服」世代の有名人はランクインしなかった。ドラマ、映画、CM出演でのイメージが与える影響が大きく、結果につながったようだ。

 「制服を着てみてほしい有名人」では親子とも1位は広瀬さんだった。