「一帯一路」で投資加速/中国・新疆の繊維産業/欧州の調達先の構想も

2017年06月22日 (木曜日)

 中国・新疆ウイグル自治区で繊維産業が急成長している。背景には、広域経済圏構想「一帯一路」と政府の優遇施策がある。欧州企業の調達先として発展する構想も現実味を帯びてきており、紡績から縫製までサプライチェーン全体の活発な投資が今後も続きそうだ。(上海支局)

 中国の今年最大の外交イベント「一帯一路・国際会議」が5月14、15日、北京で開催された。その翌日、新疆ウイグル自治区ウルムチ市では「中国新疆・欧州ハイレベル繊維フォーラム」が開かれていた。同自治区人民政府副秘書長で新疆紡織服装就業領導小組弁公室主任の梁勇氏が、「新疆と欧州は地理的に近く、物流のコストと時間を抑えられる。ぜひ調達地として活用してほしい」とアピール。スウェーデンの家具小売り大手、イケアのグローバルサプライヤー開発繊維品担当主幹のカルバン・ウーリー氏が、「東西の玄関口としての新疆の役割に期待している。ここで新たなサプライヤーを見つけたい」とこれに応じた。

 新疆では繊維企業の活発な投資が続く。今年1~3月の中国繊維企業の全国での固定資産投資額の伸び率は前年同期比12・4%だったが、新疆はそれを大幅に上回る37・4%となった。

 投資が活発化したのは、習近平国家主席が2013年に中国と欧州を結ぶ広域経済圏構想「一帯一路」を提唱してからだ。世界有数の綿花の産地である新疆の経済を繊維産業で発展させる方針が明確になり、優遇政策が次々と発表された。09年7月のウイグル騒乱や14年3月の雲南省の昆明駅でのテロ事件など、顕在化する少数民族問題への措置でもあったとみられる。

 14~16年の3年間に繊維企業1500社強が設立され、固定資産投資額は894億元に達した。綿紡績を中心に華孚、如意、天虹、紅豆、即発などの大手企業が工場を新設し、24万人の雇用を生み出した。綿紡績設備は700万錘から1360万錘に拡大している。

 地元政府が目指すのは、川上から川下までのサプライチェーンの構築。アクス紡織工業城、石河子経済技術開発区、コルラ経済技術開発区、アラル経済技術開発区では、「繊維アパレル産業基地」の建設が進む。これに企業も呼応。綿先染め大手の華孚は、紡績から織布、縫製まで一気通貫で展開する計画で、将来4万人を雇用するという。

 紡績企業とともに、繊維機械メーカーも活発な動きを見せる。スイス・リーター社が昨年4月、ウルムチ市に販売拠点を設立。独ツルッツラー社も今年5月、コルラ市にサービスセンターを開業した。村田機械も新疆での案件が増えている。現地法人、村田機械〈上海〉営業本部繊維機械事業部紡機部の吉井淳経理は「現時点ではサービスセンター設立の予定はないが、将来的に検討材料になっていくだろう」と話す。