ズームイン/東レの不織布事業部長に就いた松下 達 氏/失敗恐れず“やってみる”

2017年06月22日 (木曜日)

 東レが今期(2018年3月期)新設した不織布事業部の事業部長に就いた。注目の新設事業部を率いることになり、「まだ事業部のムードが定まっていない。失敗を恐れずに“まずは、やってみる”こと。チャレンジできる雰囲気を作っていきたい」と話す。

 入社以来、産業資材一筋。若手時代はかばん地やゴム引き布など資材用ナイロン織物の営業を担当し、建材や仮設ネット、漁網、さらにはミシン糸なども扱ってきた。そんな松下氏にとって転機になったのが2002年にポリフェニレンサルファイド(PPS)繊維を担当したこと。「当時、PPS繊維の需要は欧米が中心。ところが01年の“9・11”(米国同時多発テロ)をきっかけに米国で全く売れなくなる。そこで欧州での拡販でなんとかカバーしようということになった」

 それから1年間、欧州各国をラウンドする。ところがここでも全然売れない。「まさに行商でしたが、空振りばかり。その意味ではつらい出張でした」と振り返る。ただ、不思議な高揚感もあった。「営業マンとして最初の10年はダウンサイジングの経験ばかり。ところがPPSは、それまで自分が扱っていた商品とは値段が全く違う。『これを売ることができれば』という思いが強かった」

 03年からは中国での市場開拓に取り組む。これが成功した。「中国のフィルターメーカーとのつながりが生きた」。今では中国でのフィルター用途がPPS繊維の屋台骨を支える。松下氏にとっても世界観が大きく変わった経験である。

 新しい市場を開拓してきた経験は、不織布事業部長としても大いに期待されるところだろう。「東レには長繊維不織布から不織布用原綿、さらに汎用素材から高機能素材まであり、グローバルな生産もしている。不織布事業部の新設は、東レが不織布に一段と力を入れるというメッセージでもある」と話す。

 商品・商流の高度化など新たなオペレーションにも取り組み、短繊維不織布分野では原反メーカーとの連携などやるべきことは多い。そのためにも「手間を惜しまずに、チャレンジする雰囲気を事業部として作っていきたい」と話す。もしかしたら、PPS繊維を担いで欧州をラウンドした時の高揚感が蘇っているのかもしれない。(宇)

 まつした・たつ 1988年神戸大・経済卒、東レ入社。東麗〈中国〉投資ファイバー・産資部副部長や産業資材事業部機能素材課長を経て2012年トーレ・フロロファイバーズ〈アメリカ〉副社長、16年産業資材・衣料素材事業部門主幹、17年4月から不織布事業部長。兵庫県出身。52歳。趣味は20年来続けているジョギング。東レ上海国際マラソンにもハーフの部で参加した。