ズームイン/村田機械の繊維機械事業部営業統括部長に就任した 野村 貫則 氏/目指すは信頼で世界一

2017年07月07日 (金曜日)

 それまでに世の中になかった機械が必ず売れるとは限らない。どう使えばいいか分からないという理由で、敬遠されることもある。市場が急速に拡大している渦流精紡機「ボルテックス」も当初はそうだった。

 野村氏はそんな時期(1996年)にボルテックスの営業を担当。紡績会社ではなく、紡績糸のユーザーである靴下メーカーやタオルメーカーに糸の良さをアピールすることから始めた。遠回りに思える営業活動だ。しかしおかげで、「その機械で糸を作ってどこに売るねんとお客さまに聞かれても、なんやったら買ってくれるところを紹介しますよと言えるようになりました」と野村氏は当時語っていた。「機械の値段を下げるのではなく、こんないい糸が作れると自信を持って売らないといけない」との信念が、野村氏に型破りの営業手法を採用させたのだろう。

 2011年に営業統括部長になった後、14年には中国の村田機械〈上海〉に総経理として赴任、100人以上の従業員を率いる役割をまかされた。任期中に本体の執行役員にもなった。担当領域は、繊維機械だけでなく、村田機械の全事業に及ぶ。繊維は信頼できる部下にまかせ、自らは他の事業に専念した。心掛けたのは、“指示して終わり”ではなく、一緒にやっているとスタッフに感じてもらうこと。そのスタンスが、現地スタッフとの信頼関係の構築につながった。

 今年3月1日付で、大阪支社長として日本に戻るとともに、繊維機械事業部の営業統括部長に復帰した。製造、技術、営業、サービスの各スタッフの信頼の輪をより強いものにしたいと、抱負を語る。それが、顧客へのレスポンスを早くすることにつながり、開発にもいい影響を与えると考えるからだ。

 ボルテックスやワインダーのさらなる拡販も任務ではと問うと、「目指すのは信頼で世界一になること」だと答える。ワインダーでも渦流精紡機でも同社は世界トップのシェアを既に確保している。しかし、「売上高は2番でも、3番でもいい」と言う。

 確かに、売上高だけを追うのであれば、安値で売る手もある。そんなことよりも、「まだ導入していないお客さまにも、いつか導入したいと憧れてもらえるようにしたい」と語る。紡機を売るために、糸のユーザー行脚を根気よく続けた若きころの心意気は、今も健在だ。(窪)

 のむら・つらのり 1989年4月、村田機械入社。2010年繊維機械事業部営業部部長、11年営業統括部長、14年村田機械〈上海〉董事総経理、15年6月から執行役員。17年3月1日付で繊維機械事業部営業統括部長兼大阪支社長に就任。52歳。