学生服メーカーのスクールスポーツウエア事業/快進撃も、忍び寄る生徒減/ブランド強化と組織改編へ

2017年08月09日 (水曜日)

 スクールスポーツウエアの2017年入学商戦は、一部のスポーツ専業アパレルメーカーの事業集約の影響もあって、大手学生服メーカーが市場でのシェアを広げた。学生服メーカーの快進撃が続くものの、数年先には生徒減による市場縮小がより深刻になる。ブランド強化や組織改編など、戦略を練り直す。(於保佑輔)

 学販スポーツウエアメーカーなどで構成する任意団体スクール・スポーツ・クラブ(SSC会)によると、16年度のスポーツウエア全品目の総販売数量(13社)は3年ぶりに増加し、前年比3・9%増の1890万4700枚だった。

 販売数量は14年度以降、消費増税や値上げの影響で減少傾向にあった。再び増加に転じたのは、アシックスジャパンの事業集約を受け、そのパイを巡ってシェアを広げる動きが活発化していることがありそうだ。

 さらに学校納入向けの売り上げ全体に占める輸入品のシェアは15年度、24%だったのが、16年度は20%にまで低下。国内の生産比率が高い学生服メーカーが、攻勢を強めていることが反映したものとみられる。

 各社のスクールスポーツウエア事業の17年入学商戦は好調だった。市場シェアでトップの菅公学生服(岡山市)は、小中高とも「例年より採用校が増えた」(田北浩之提案企画部長)ことで17年7月期は前期比増収となる見通し。関東だけでなく昨年8月には関西にもスポーツウエアの専任担当者を置き、地域密着で学校との関係を強化できたことも奏功した。

 トンボ(岡山市)は、「ヨネックス」と「ビクトリー」合わせて200校以上の採用校を獲得し、17年6月期は増収を見込む。自社で設備を持つ昇華転写プリントを活用したデザインへの引き合いが多く、「オリジナリティーを出したい学校のニーズを捉えることができた」(橋本俊吾執行役員)。

 明石スクールユニフォームカンパニー(明石SUC、岡山県倉敷市)は17年5月期、6%の増収だった。「デサント」の採用が150校超と過去最高で、累計でも1500校を超えた。「ブランドの認知度が高く、ラインアップの充実で選択肢が広がっている」(宮﨑将人スクールスポーツ部長)ことで市場を広げた。

 来入学商戦に向けても「今年並みに動いている」といった声が聞かれ、2年後まで拡大の余地があるとの見方が強い。しかし、20年の東京五輪以降は生徒減の影響がさらに強まり、成長への青写真を描きづらいのが実情。

 先を見据え各社は、ブランド力の強化にまず取り組む。菅公学生服は「リーボック」でデザインを一新し、改めて発信を強める。トンボは、ウオームアップウエアの概念を取り込んだ「ピストレ」をビクトリーで投入、新たなアイテムで市場を掘り起こす。明石SUCはスイムウエアで知名度のあるブランド「アリーナ」の販売に乗り出した。

 一段と企画力や開発力を高める動きが組織面でも加速。トンボは6月、従来のMDと販売を統合し営業統括本部を新設した。「営業がくみ取ったニーズを商品開発に落とし込みやすくする」(橋本執行役員)のが狙い。菅公学生服は8月、スポーツウエアだけでなく制服も一緒に商品企画する提案企画部を設置。「制服との企画で垣根をなくし、トータルでの提案を強める」(田北部長)ことで市場のニーズを捉える。