綿紡績会社/わたや薬剤も展開/既存の技術・知見生かし

2017年08月18日 (金曜日)

 綿紡績会社が、既存事業で培った技術や市場への知見を生かし、これまでとは異質の商品を展開している。独自開発の中わたの市場開拓を進めている企業もあれば、独自の薬剤や合成繊維の拡販を狙う企業もある。

 クラボウが、羽毛の特殊な形状を再現したポリエステル繊維「エアーフレイク」を発表したのは2007年。近年まで寝具としてOEM供給してきた。しかし、下請け的な立場だったため、その特徴を生かした商品を企画することが難しく、通常のポリエステル中わた使いの商品と同列に扱われがちだったという。売上高も伸び悩んだ。

 そこで3年前に、下請け的な寝具OEMのほとんどをやめることを決断。独自の布団ブランド「ランドリーム」で昨年1月、インターネットを介して販売し始めた。売りは、家庭の洗濯機で簡単に洗え、乾きが早く、洗ってもふんわり感が持続すること。

 衣料用途でも、エアーフレイクを中わたとするインナー「ワンダーウォーム」をグンゼと共同開発。昨年11月にグンゼが発売した。加えて、複数の欧米企業にも、防寒アウター素材として採用され始めている。今年の秋から製品が店頭に並ぶ。既存販路を捨てるという大胆な決断の結果、エアーフレイク事業の売上高は2年前を底に拡大しつつある。

 シキボウが、糞便臭を芳香に変化させる技術「デオマジック」を香料メーカーの山本香料(大阪市中央区)と共同開発したのは2011年。ごくわずかでも成分が残存すると強烈な臭いとして感知されてしまうために消臭が難しいとされていた糞便臭対策を、逆転の発想で可能にした。

 この技術で加工した生地の販売を当初想定していたが、薬剤として畜産業界などへ販売する道が開ける。薬剤調合は、子会社のシキボウ江南(愛知県江南市)。東邦車輛(横浜市)、山本香料、凸版印刷と共同で、バキュームカー向けオイルも開発。昨年10月に東邦車輛が発売した。

 新明和工業(兵庫県宝塚市)、山本香料、凸版印刷と組んで、ごみ収集車用臭気対策剤も商品化。新明和工業が、庫内に噴霧する装置とともに、今年6月販売し始めた。

 ダイワボウノイは、布団やジャケットの中わたとして使用される羽毛の洗浄回数を3、4割減らすことを可能にする洗浄剤の開発にめどを付けた。今年度下半期(10~3月)からの出荷を目指し、日本はもちろん、中国、台湾、ベトナム、米国へも提案する。

 同社は、機能性マスターバッチ(チップ状の練り込み用機能剤)製造技術「マジカルアシスト」も確立している。この技術を活用し、抗菌性、抗カビ性を備えた合繊短繊維を商品化した。これを使用した不織布に加え、繊維そのものの販売も計画する。