特集 カーペット(3)/カーペットメーカー/次の成長へ布石

2017年08月24日 (木曜日)

 ここ数年、カーペットメーカーは設備投資を活発化してきた。山本産業が6億円以上掛けてオーストリアのチンマー社製のカーペットデジタルジェットプリント機「クロモジェット800」、米国CMC社のタフト機「カラーポイント機」を導入。日本絨氈は二十億円をかけて滋賀工場を今秋本格稼働させる。コントラクト需要が20年まで旺盛な需要が見込まれ、余力のある間に、設備投資を行って次の成長へつなげる狙いがある。将来を見据えた取り組みを加速させている。

〈ホテル用途堅調/オーノ〉

 オーノは、ホテル向け別注ロールカーペットが堅調に推移する。

 ホテル向けでは6色使いの多色柄を表現できるタフト機「OMT(オーノ・ミラクル・タフター)」が活躍するほか、中国・江蘇省の合弁企業と連携して日本国内のホテル向けなどへアキスミンスター・カーペットなどを提案する。企画会社を活用した高いデザイン性も評価されている。ウィルトンカーペットを含めて、主に中高級ゾーンの拡販へつながっている。

 「先のリニューアル物件を含めてコンスタントに発注が来ている」(同社)と言う。

 同社の17年12月期の上半期(1~6月)は前年同期比増収だった。ホテル用途のほか、カーマット、ダストコントロール用途も業績に寄与した。

〈タイル引き続き強化/東レ・アムテックス〉

 東レのカーペット製造子会社である東レ・アムテックスの新社長に、6月13日付で宮石和彦愛知工場長が就いた。

 宮石社長は、東レの中期経営課題「プロジェクトAP―G2019」に基づいて①成長分野の拡大②グローバル展開③競争力強化――を方針に掲げる。

 具体的には、コントラクトのタイルカーペットを成長分野と捉えて、近藤隆俊前社長の経営戦略を継承する。保有する2台のウインス(バッチ)式の染色加工設備を生かした小ロットや多色展開を武器に拡大を図る。バッキング設備はなく、生機対応する。カーマットも高品質、高級感が求められているとし、機能性・素材力を発揮できる分野として注力する。

 商品では8月に人工芝見本帳「東レ スパックターフVOL.27」(22品番)を発行。毛足の長く、2種の糸を使って天然の風合いを追求した新商品などを追加した。

〈独自のグラデーション染色/トーア紡マテリアル〉

 トーア紡マテリアルは、タフティングから連続染色、ドライヤーまで一連の設備を自社工場に持つ点を強みにする。

 反染めである連続染色の使用糸は白色でよく、一色染めが早くできる。原着にない色を出すことも可能で、プリント、柄タフトと比べて低コストだが、意匠性に乏しい。

 同社は連続染色のグラデーション染色の特許を2016年6月に取得。グラデーション染色は、同時に単色ではなくカラー染めができる。染パターンも変えることができ、通常の反染め染色よりデザイン面(意匠性)に優れる。コストも通常反染め染色の少し高めで済む。同社ではこの染色方法の提案を強める。

 17年1~6月のカーペット事業は、住宅関連用途、OEM、カーマット関連、ホテル物件などが堅調で前期比増収となった。

〈今秋に家庭用ウールタイル/ニッシン〉

 織りじゅうたん製造販売のニッシンは、コントラクト用のノウハウを生かし、オリジナル機のアキスタイル織機を活用した住宅用ウール製タイルカーペットを今秋にも打ち出す。

 上質なホームタイルをテーマに浸透を図る。ウール100%で無染色。ブラウン、グレーの生成り色を生かす。「2020年の東京五輪後を見据えて新しい販売基軸を作る」(田中弘之社長)方向性を示す。

 主力のホテル向け別注は、16年3月期に前期比30%増、17年3月期はマカオのカジノ施設への輸出を含めて17%増と伸びてきた。今期は4月以降前年実績を下回っており、「今年いっぱい踊り場になるだろうが、訪日外国人旅行者の増加や東京五輪に向けて来年、再来年がピークになる」とみる。

〈滋賀工場稼働予定通り/日本絨氈〉

 日本絨氈の2017年11月期は人工芝、タイル、自動車オプションマットとも「6月以降落ち着いているが悪くない」(池﨑博之社長)とし、前期比微増収で推移している。

 滋賀工場(滋賀県甲賀市)は今秋に本格稼働する予定で、8月に入り週2日ほど稼働。「予定通り」進んでいる。

 同工場には、タイルカーペットバッキング加工ライン(2メートル幅、全長570メートル、1ライン)を新設。1分当たり15メートルの高速ラインで省力化し、効率よく生産できる。スタッフは滋賀県の人材を採用し、本社工場(大阪府堺市)で研修中だが、秋口に滋賀工場へ1班(5人程度)が移り、加工ラインに就く。

 滋賀工場のタフト機は5月にCMC社の高速ループ(4メートル幅、10分の1ゲージ)を新導入。50万平方メートル分を収納可能な自動倉庫も設置している。

〈特許技術で差別化/日本カーペット工業〉

 日本カーペット工業はタフト機11台保有し、カーマットと、建物の入り口などに敷くダストコントロールマット(ダスコン)の売り上げが約90%を占める。バッキング加工設備はなく、生機売りする。

 カーマット、ダスコン、機械部品関連で12件の特許を取得しており、技術力の高いモノ作りに定評がある。

 今年のカーマット、ダスコンの売り上げは前年並みで推移している。

 同社は2006年に中国・江蘇省に独資の蘇州東伯商易を設立しており、中国製の家庭用カーペットも扱う。カーペット糸など素材を中国から調達できる点も強みになっている。

 15年末には本社工場に隣接して倉庫を建設。同拠点を生かした中国や国内で作った製品のネット販売も検討している。