特集 カーペット(4)/素材メーカー&商社/家庭向け拡大後押し
2017年08月24日 (木曜日)
BCFナイロンメーカーなどでは、消費低迷で伸び悩む一般家庭向けカーペットの拡販を後押しするため、新素材の投入や、ブランド化を図る動きが活発化している。さらに商社では国産カーペットの輸出拡大を図る取り組みも進む。
〈家庭向け新ブランド/インビスタ〉
インビスタ ジャパンは、家庭用カーペット向けの新ブランド「アントロンホーム」を投入する。インビスタ本社で承認されたジャパン独自の取り組み。
同社は、カーペット用ナイロン66「アントロン」を展開し、コントラクト用途を主販路とする。家庭用も肌触り性を高める細繊度タイプなどを投入して拡販を図っているが、「次の成長へつなげる」(川合秀幸執行役員)ため、ブランド化して需要拡大を図る。
商品ラベルなどでのブランド表示は、カーペットファイバーにアントロンを100%使用していることなどが条件になる。
同社は今期(17年12月期)、「家庭用を拡大していけるようにマーケティングを進める」方針を示している。
〈ニーズに合ったカラー提案/シンコーケミカル〉
シンコーケミカルは、ポリプロピレン(PP)長繊維を製造し、月産能力は240トンに上る。オフィスや車両用途を主力にする。
同社はノイマーク社製紡糸機を保有する。1330デシテックス(T)から4000Tまで幅広い繊度に対応できる。原糸に膨らみを持たすことでボリューム感のある製品に仕上げることが可能となっている。
原糸カラーのバリエーションも豊富で、さまざまなカラーニーズに対応できる。「業界で若手デザイナーが増えてきていることもあり、これまでにないビビッドな色が売れつつある」(田中耕司社長)中で、オリジナルカラー糸を開発し、提案力を高める。
ナイロンと同様に、今春PPを値上げしたメーカーもあったが、同社は値上げを見送った。
〈海外販売を促進/帝人フロンティア〉
帝人フロンティアのインテリア部は、カーペット輸出を促進する。その足掛かりとして、来年ドイツで開かれる世界最大級のフロアカバリング国際見本市「ドモテックス」に2年連続で出展する。
今年1月に開かれたドモテックスに初出展。日本らしさを追求した商品に対する来場者の反応に一定の手応えを示しながら、和柄のパンチ力の弱さと、高コスト、リードタイムの長さの克服、「TEIJIN」ブランドの独自性を課題に挙げる。
課題を踏まえて、パートナーと連携した販売先の現地での備蓄も視野に入れる。独自性では、帝人の素材力を生かしたカーペット用パイル糸の開発に取り組んでいる。来年のドモテックスは展示ブースを広げて、引き続きメード・イン・ジャパンの商品を展開予定で、和柄のテイストを強め、タイルカーペットを中心にアピールする。
〈家庭用へ新素材/東レ〉
東レ産業資材事業部は、新たな家庭用BCFナイロンを打ち出す。
通常より細繊度のフィラメントを採用して柔らかさを高め、ペンシルポイント(カットパイルが鉛筆の先端のように一本一本セットされた状態)に対応する。柔らかさと粒感が特徴の後染め糸で、断面形状も工夫して風合いを高める。試作を進めており、来年発売する。
さらにオフィスや商業施設が主販路のタイル用途は酸性染料に染まりにくく、杢調柄を表現しやすいペール糸も投入し、拡販を図る。自動車用途は同部のBCFナイロン販売量の約10%を占め、そのうちの80%程度が原着糸。中でも黒の原着糸が伸びている。販売が増えつつあるタイル用を含めて原着糸に力を入れる。
〈品質、ロット管理が武器/比楽紡績〉
カーペット用紡毛糸生産は今年、全般的に落ち着いているとされるが、国内最大手とされる比楽紡績の業績は堅調に推移する。同社の「品質管理、ロット管理に力を入れている」(比楽一郎取締役営業部長)点が、安定供給や、別注対応力の高さにつながっており、評価されている。コーン巻きまで対応している点も強みになっている。
同社は2016年に日本人5人を採用した。派遣社員で受け入れ、今年中に全員を正社員化する。
5人は25~35歳。同社の従業員の平均年齢はこれまで65歳程度だったが、今回の採用で若返る。さらに来年、新卒者を採用する予定だ。
比楽取締役は「いかに先を見ていけるかが重要」との姿勢で体制を充実する。
〈オリエンタルカーペット/足元からのおもてなし/山形緞通の伝統と革新〉
オリエンタルカーペット(山形県山辺町)は、糸作りからアフターケアまで職人が一貫して行う国内唯一のじゅうたんメーカー。1953年、女性が安心して働けるようにと、中国から7人の技術者を招き高級手織じゅうたんの製造を始めた。山形緞通の誕生だ。
伝統的な手技と、独自のマーセライズ加工によるビンテージ感のあるつや・柔らかさが特長で、京都迎賓館や新歌舞伎座、バチカン宮殿など国内外の著名な建造物に採用されるほか、緞帳や織画、祇園祭懸装品など文化財復元と幅広く手掛ける。
とはいえ、コントラクト案件はそう頻繁にはない。一般の小売もあるが、高級なだけに客層は限られた。そこで2012年、渡辺博明社長は個人ユースブランドとしての「山形緞通」を立ち上げた。
手織りの古典的な柄だけでなく、現代調にアレンジした新古典ライン、多彩なグラデーションで表現した現代ライン、工業デザイナー・奥山清行氏や建築家・隈研吾氏と協働したデザイナーラインで構成。今の住空間にも合うデザインと手刺しの値頃感もあり、着々と新たな客層をつかむ。
渡辺社長は「デザイン、糸準備、染色、手織り・手刺し、加工、メンテナンスなど各工程の職人の集合体が山形緞通。“足元からのおもてなし”の思いを込めたモノ作りで、常に革新に挑み、伝統を継承発展させていきたい」と語る。




