特集 副資材(1)/進化する副資材企業

2017年08月28日 (月曜日)

 衣料品生産のサプライチェーンに欠かせない副資材企業がビジネスモデルを進化させている。中国からASEAN地域へ生産地が広がりつつある中で加速する海外生産の強化、現地法人の設立や市場トレンドに合わせた新たな商材開発はもちろんのこと、バーコードに代わる商品管理として注目されるRFIDの普及にも大きな役割を担う。副資材企業の戦略から、衣料品サプライチェーンの方向性を見る。

 「大きな流れは現地手配」(三景)、「海外進出に力を入れている」(ナクシス)など、各社が重点戦略を語る。輸入浸透率が90%を軽く超える国内市場向け衣料品生産にあって、それはもはや言うまでもない。清原も「中国やベトナムを中心に海外からの仕入れが8割を占める」状況。

 リードタイム短縮やコスト削減につながる現地調達に対する要望が強まる中で、縫製地の近くに生産拠点やローカル企業などと開発連携する現地法人を構えて素早く供給するサービス機能は差別化要素に欠かせなくなっている。

 商標資材メーカーであるナクシスは、ASEAN地域への進出を強め、2016年からインドネシア、ベトナムの北部と南部に立て続けに生産拠点を設立。順調なスタートを切った。同じくテンタックもRFID用ICタグ生産を同国の南部に続き、北部でも開始した。

 副資材商社では清原が15年8月にベトナム現地法人を設立した。ベトナム起点のサプライチェーンで現地調達ニーズに貢献する目的で、主力の婦人向け商材のバリエーションを広げる。三景も中国拠点4社と香港販売会社、ベトナム、バングラデシュにある製販拠点で扱う商材の情報共有を重視する。顧客のサプライチェーンに合わせた最適な供給を提案できるようにする。

 今後は現有拠点の能力増強を図りながら、日本と海外の連携を密にするネットワークの強化が重要となる。

 商材開発も市場トレンドに合わせて進化する。ファッション市場の厳しい状況は、当然ながら副資材企業にも影響を与えるため、ブランドや衣料の付加価値向上に貢献する新商品の開発が、ますます重要になっている。

 旭化成はキュプラ繊維「ベンベルグ」の主力用途の一つである裏地で、14年10月に常設展示場「ベンベルグ裏地ミュージアム+」(東京都千代田区)を開設。裏地の歴史と伝統を振り返りつつ、新商品ニーズや要望を聞くほか、情報発信も積極的に行うなどコミュニケーションを深める場として活用する。

 三菱商事ファッションが6月に開いた18春夏向け製品OEM/ODM展示会には、島田商事がブースを構えた。「付属で変わるライフスタイル」をテーマに反射材、天然素材、軽量に貢献する商材など顧客ニーズ、市場動向に合わせた商材を出展した。

 東京吉岡が5月展で打ち出したテーマの一つである「スポーツミックス」も感性面を訴求するもの。フクイは織ネームで下げ札をつるしてもブランドネームが曲がらず、奇麗な状態でネームを見せられる縫製位置や仕様の工夫を提案。織ネームに独特の光沢感を付与する商材や熱可塑性のウレタン素材に印字する半透明のケアラベルなどファッションのデザイン性を損なわない開発品を打ち出した。

 個性を追求するブランドやインターネット販売を起点としたブランドなど中小規模アパレルが登場し、市場は多様化している。

 こうした企業の価値向上をサポートしつつ、自社の収益につなげる機能強化も副資材企業の課題と言える。

〈YKKの商品開発/顧客ニーズを起点に進化〉

 副資材メーカーに求められるものの一つが商品開発力である。YKKのファスニング事業は第5次中期経営計画(2017~20年度)で、商品開発力強化を掲げ、開発人員と拠点数を大幅に拡大する。

 810人の開発人員を20年度末に約1060人に増やす。長期的な関連技術の研究と顧客要望に沿った商品開発を担うファスニングR&Dセンターを6拠点から9拠点に拡大、地域顧客からの新商品開発要望を迅速に具現化する商品開発室も16拠点から32拠点に倍増する。

 この商品開発はカジュアル衣料顧客(ファストファッション、SPA)や欧米量販店などのスタンダード向けだけでなく、欧州高級ブランドや高機能スポーツアパレル、汎用資材顧客(自動車内装など)向けにも力を注ぐ。

 商品開発には顧客の要望に基づいて生まれた商品もある。例えば「ファスナーに止水機能が欲しい」という声から生まれたのが、止水ファスナー「アクアガード」。これはアウトドアの本場である米国で生まれた。テープ部をウレタンフィルムでラミネートすることで水が浸み込むのを軽減する。フィルム部分には撥水処理も施している。

 この標準品からアクアガードのつや消しタイプ、「ビスロン」タイプと、ユーザーニーズを取り込んで次々にシリーズは拡大していった。「アクアガード プリファ」もそのシリーズ。

 ファスナーのテープ部にロゴやイラストをインクジェットプリントして意匠性を訴求するファスナーが「プリファ」。スポーツウエアのファッション化、ファッションウエアの高機能化という二つの潮流を背景に、アクアガードの止水という機能性にプリファのファッション性を兼備させて人気商品となった。

 ユーザーの要望を次の商品開発につなげる。あるいはソリューションとして提案する。副資材は世界のアパレル顧客とともに進化を遂げていく。