特集 副資材(2)/広がるRFID導入 課題と可能性
2017年08月28日 (月曜日)
RFIDによる商品管理が広がる。有力副資材メーカーは今期のICタグ生産を2倍以上の勢いで増やすが、さらなる浸透には横への広がりに加え、サプライチェーンの上流を目指した取り組みも必要だ。RFID導入の現状と可能性を探る。
RFIDによる商品管理システムは、川下企業にはその技術概要が浸透している。製品下げ札などに個体情報を書き込んだICチップを加工し、そのデータを、電波を通じて非接触でスキャンすることができる。複数のタグを一括して読み取ることが可能で、導入企業では棚卸や入出荷管理といった在庫管理で、店舗や物流倉庫での付帯業務にかかる時間を大幅短縮するなどの効果を出す。
ナクシスはICタグ生産枚数が前期比で少なくとも倍増以上の勢いを示す。読み取り感度のノウハウ蓄積のほか、検品体制を国内外全てのタグ生産拠点で徹底し、品質の管理に強みを持つ。
続く三景やテンタックも2~2・5倍への拡大を確実視。三景はインレイ(アンテナが付いたICチップ)メーカーとの関係を基盤とした安定供給力とタグの加工対応力を推す。テンタックは一貫供給体制の中で、タグ加工機を自社開発する点が特徴。
各社とも導入の本格化に手応えを得て取り組み先が広がる。同事業の営業活動は、多様なシステムベンダーやハードウエアメーカーの製品と組み合わせたRFID環境全体の提案が必要という特有の事情があるため、生産から販売まで垂直統合する企業、売り場と物流センターを自前で持つような企業の導入が先行しており、実際、物流現場と店頭での在庫管理が多い。
あるメーカーによると16年のICタグ生産は推定で4億5千万枚。これに対し、同年の衣料品国内供給量は、日本繊維輸入組合が経済産業省「生産動態統計」と財務省「貿易統計」をもとにまとめた「衣類の生産と輸出入の推移」によると、約37億2千万枚だ。単純計算で、RFID用タグが付いた商品の比率は12%ほどだ。各社が「伸び代は、まだまだある」と意気込む。
〈まだまだ発展途上〉
課題もある。人材育成が追い付いていない点がその一つ。前述した同事業特有の事情から、提案にはコンサルティング的な要素が不可欠だが、さまざまなソフトウエアやハードウエアメーカーが関連機器をそろえ、選択肢が広がる。顧客が抱える課題も多岐にわたるため、最適提案に幅広い知見が必要となる。この人材が急激な普及に追いついておらず、「営業部署との連携を通じて段階的に育成する」(テンタック)という状況。
物流現場、店頭が中心の導入状況が、どこまでサプライチェーンをさかのぼるかもRFID全体の課題と言える。
導入促進へ事例紹介や相談窓口機能を担う日本アパレル・ファッション産業協会(JAFIC)のRFID推進小委員会は「今後は川上でいかに有効活用できるかが検討課題」(JAFICの遠藤孝顕事務局長)とする。
ICタグで製品の所在地が分かったり、購入履歴などのデータ分析ができたりすれば、生産やMDへ反映することで精度の高い生産計画とロス削減につながる。JAFICはこうした、今後を見据えたRFIDの活用を積極的に発信している。
米国を本拠地とするコンピューターソフトウエア販売のPTCジャパン(東京都新宿区)は、国内アパレル企業向けにRFIDとIoT(モノのインターネット)を使って企画から店頭陳列までの製造工程を管理するプラットフォームを提案するが、サプライチェーン管理や消費者の行動分析まで幅広くRFIDを活用する米国に対し、日本では「関心はあるが、まだそこまで使いきれないという反応が多い」(リテールビジネス開発推進室)という。
この点で見てもRFIDの導入にはまだまだ余地があると言えそう。「何が必要か整理できれば、つながってくる」(同)と展望を語る。ICタグメーカー各社も顧客が抱える課題と比べながら最適提案を続ける。
〈企画・生産・販売すべてに使うRFID提案〉
PTCは、RFID環境とIoTを組み合わせて製品の企画、生産店頭陳列・在庫管理のライフサイクルを効率化するソリューションビジネスを、国内アパレル小売り向けに力を入れて提案している。小売りグループ向けイノベーションを担当するイノベーション&ビジネスデベロップメント部門のダレン・グレニスターバイスプレジデントにRFIDの現状と可能性を聞く。
――ファッション企業のRFIDの導入状況をどうみますか。
棚卸や物流現場での配送作業を効率化する効果が出ていますが、当社としては「個品管理ができる」特徴をさらに生かした、プラスアルファの提案を考えています。消費者の行動分析に基づいた的確な提案やサプライチェーンの管理といった活用は、当社と取引がある米国企業に比べて、日本ではうまく展開されておらず「まだ先のこと」との反応が多いようです。
――導入における課題をどうみていますか。
在庫管理への導入といった現状から「この先どう使うか」が重要です。前に進む活用方法をわれわれがどのように提案できるかにかかっているでしょう。製品の場所、動き、履歴のほか、買い物客の行動などに関するデータを用いて他店舗への共有、MDに生かすプラットホームを積極的に提案して行きます。
導入企業、タグ枚数が増えるとデータの数量が膨大になり、解析して中身を把握する仕組みが求められます。有力IoTソリューション企業と協力してデータ解析プラットフォームの開発を進めており近々、発表します。
――PTCの強みは。
アパレル向けでは15年の取り組み実績があり、製品のライフサイクルマネジメント(PLM)をIoTとデータ解析環境とで一括して提案できる点にあると考えています。製造工程を一元管理できる環境を提供し、顧客ではさまざまな付帯業務から解放される効果がありました。平均して生産性が20~30%向上したほか、材料費の削減3~5%、市場投入期間の短縮45%、デザインヒット率も改善しています。
――PTCジャパンが取り組む日本での重点戦略は。
当社の提案は垂直統合型の企業と合致しやすい一方で、日本ではサプライチェーンの分業が進んでいます。ただ、品質への重要性が非常に高いので、その情報を整理・蓄積する環境を提案することで、ロスなく正価で販売できる企画やモノ作りに貢献できると考えています。
店頭や物流現場で棚卸などの精度を高めるという部分最適だけでなく、PLMを意識した全体最適に考え方を誘導して行く提案も続けます。




