ダイワボウノイ/“ファイバー戦略”結実の時/新たな商流と商材生みだす/社長 斉藤 清一 氏

2017年08月25日 (金曜日)

 ダイワボウノイの上半期(2017年4~9月)業績は前年同期比微増収増益となる見通し。斉藤清一社長は下半期について「衣料製品に関してはこれまで以上に厳しくなる」との見方を示し、「新たな商流に挑み、新素材を実績につなげられるかがポイントとなる」と話す。紙糸やポリプロピレン(PP)、フタロシアニン加工など独自性のある原料や加工で新たな市場を切り開く。これまで推進してきた“ファイバー戦略”が実を結びつつある。

  ――上半期の見通しをお聞かせ下さい。

 上半期は前年同期比微増収増益となる見通しです。取引先の健闘や社員の頑張り、そして海外を中心とした生産の効率化、合理化が進んだことが要因です。特に16年にインドネシア・ジャカルタの縫製拠点ダヤニ・ガーメント・インドネシア(DGI)を閉め、中部ジャワの縫製拠点ダイワボウ・ガーメント・インドネシア(DAI)に集約したことが利益改善に大きく貢献しました。

 衣料製品OEMは総じて堅調でした。空紡糸を使った商品や、独自の加工や組織で差別化した商品が市場から高い評価を受けています。

 Tシャツやトレーナーといったカジュアルニット製品の日本向けOEMは健闘しています。中国・蘇州大和針織服装やインドネシアの協力工場で製造する独自素材を使った商品が売り上げをけん引しています。

 インドシアで生産するドレスシャツも、日本での販売が堅調です。対米向けインナー販売も善戦しました。

 テキスタイル販売は、リビング分野が底堅く動いています。布団の側地の取り扱いが多いですが、販売先の素材更新の需要にしっかりと対応します。布団の中材として販売するフタロシアニンを使った消臭・抗菌機能不織布の販売も堅調です。

 ただ、衣料用途のテキスタイル販売は苦戦です。百貨店をはじめとする衣料品の国内販売不振の影響を受けています。

  ――下半期の見通しは。

 衣料製品は、夏は酷暑もあってTシャツ、カットソーなどの商品で動きが活発でしたが、10月以降はかなり厳しくなると予想します。

 下半期は従来の事業を丁寧にフォローすると同時に、これまでにない新たな商品開発も速めて販売構造を変えていく必要があります。

 16年度に国内外の製造拠点の再編と不採算分野からの撤退を完了しました。同時に次に売る商材の開発と新たな商流の構築に着手しましたが、今期には新たな取り組みを実績につなげたいと考えます。

  ――新たな商流とはどのようなものですか。

 百貨店、専門店、量販店といった実際の店舗への販売に加え、これからはインターネットを使ったEC(電子商取引)ビジネスなど、バーチャルな商流にどれだけ食い込めるかが重要です。

 商品では、今までにない機能や特性をもった商品の開発、他社がしていない研究・開発をいかに増やしていくかがポイントとなります。

  ――新たな商材についてお聞かせ下さい。

 当社はこれまで8年間、わた段階から新たな商材を開発する「ファイバー戦略」を基本方針に掲げてきました。

 開発部署ではメカニズム、エビデンス、パテントの頭文字をとったMEP活動を推進しています。近年、このサイクルに合致した新たな商材開発が徐々に形になってきています。

 一つ目はダイワボウグループの王子ファバーが開発した紙糸があります。まだ輸出規模は小さいですがイタリアの靴メーカーへの販売が決まりましたし、国内でもデニムでの採用などさまざまな分野で少しずつ実績が出てきました。

 二つ目には機能性ポリプロピレン(PP)の開発で成果が出てきました。機能性マスターバッチ製造技術「マジカルアシスト」を確立しました。PPとこのマスターバッチとを混ぜて繊維にすることで、本来PPにはないさまざまな性質を持たせることができます。

 例えば疎水性であるPPに1%程度の親水性を持たせることで静電気の発生やピリングを抑制することに成功しています。この他にも抗菌性、抗カビ性、蓄熱性といったさまざまな機能を持たせることもできます。

 下期には不織布と中材用のわたとして販売を計画しています。ポリエステルやナイロンでも展開可能です。

 羽毛の洗浄剤の開発も進めています。洗浄工程では羽毛を7~10回程度洗うのですが、その水とエネルギーの消費量は莫大なものになります。現在開発中のフタロシアニンなどを含む高機能洗浄剤を使えば、使用する水とエネルギー消費量を3~4割程度削減でき、汚染水も減らせるため環境負荷の軽減にも貢献します。日本だけでなくアメリカ、中国、ベトナム、台湾へ提案して、今期中にも出荷する計画です。