特集 アジアの繊維産業Ⅱ(8)/ダイワボウホールディングスのアジア戦略/「次のステージ」へ/地産地消型運営も進展/インドネシア 縫製コスト合理化/取締役専務執行役員 門前 英樹 氏

2017年09月15日 (金曜日)

 ダイワボウグループは、中国と東南アジアでさまざまな繊維事業を展開している。インドネシアでは、衛生材料用不織布製造子会社、ダイワボウ・ノンウーブン・インドネシア(DNI)の「地産地消」型ビジネスが急ピッチで進みそうだ。同国での衣料品縫製事業も、拠点統合でローコスト・オペレーション体制を構築した。

  ――繊維事業は、2017年3月期まで2期連続で、過去最高営業益を更新しました。今年度上半期の状況は。

 前年度は、ブラジルの紡績子会社と、インドネシアの縫製子会社の整理損がありました。今年度は、それがないという前提で、(増収増益の)計画を組んでおり、上半期は計画通りになりそうです。

 今期は中期経営計画の最終年度です。計画で掲げた目標を達成するとともに、次期3カ年計画に向けた準備が必要です。ダイワボウの繊維事業は、次のステージに入ります。

  ――アジアでの事業展開の状況は。

 当社の繊維事業会社は国内15社、海外10社です。国内15社のうち13社は生産拠点を構えています。海外の10社は全てアジアにあり、大和紡績香港以外は製造会社です。

 合繊部門では、インドネシアの衛材用不織布製造子会社、ダイワボウ・ノンウーブン・インドネシア(DNI)が設立丸4年になりました。昨年、黒字化を達成し、今年は黒字の規模が拡大しています。

 同社に限ったことではありませんが、地産地消を進めています。同社が使用する原綿の半分を今、ダイワボウポリテックの播磨工場から送っています。今後、インドネシアの日系原綿メーカーとのアライアンスを深め、原綿の現地調達を増やします。売り先についても、現在は日本向けもあるのですが、それを減らし、インドネシア国内、そして中国向けを増やします。日本向けは半分以下になるでしょう。1~8月の実績に比べると9~12月の「地産地消比率」は、倍増するでしょう。

 レーヨン部門では、大和紡績香港を通じ、コスメ分野へ拡販します。

  ――産業資材部門は。

 インドネシアの子会社であるダイワボウ・インダストリアルファブリックス・インドネシア(DII)に、セールスエンジニアを1人、営業員として派遣しました。この効果で、現地でのシェアが相当上がってきました。

 同じインドネシアにある樹脂加工から縫製までの建築シート一貫製造会社、ダイワボウ・シーテック・インドネシア(DSI)は、日本向けの生産が中心でした。しかし、現地での販売も増えています。シート以外にも、パネテクター(パネル型防止水シート)も生産しています。現地の日系コンビニへ、商品運送時の間仕切り用シートも販売しています。

  ――衣料品部門では、インドネシアのジャカルタ近郊のブカシにあったダヤニガーメント・インドネシア(DGI)を閉鎖し、その業務を中部ジャワのダイワボウ・ガーメント・インドネシア(DAI)へ移管しました。

 中部ジャワの最低賃金は、ジャカルタ近郊の半部近い水準です。移管により、人件費の合理化が進みました。DAIの従業員は現在、1200~1300人です。生産アイテムは、対米・対日のトランクスや、婦人インナー、医療用コルセット、寝具、パジャマなどです。

  ――2012年に香港に設立した大和紡績香港は、日本以外の市場開拓を担っています。

 設立以来、増収増益で推移しています。日本からの移管ビジネスで営業を開始しましたが、アパレル部門については現在、全てが自ら開拓したビジネスになっています。合繊・レーヨン部門でも、フェースマスクを中心とする自前のビジネスが20~30%を占めるようになりました。この部門でも、アパレル部門同様、全てを自前ビジネスにすることを狙います。産業資材部門は、移管ビジネスであるカートリッジフィルターに注力しています。この部門ではまず、自前ビジネスのウエートを今の合繊・レーヨン部門並みにします。

  ――中国はいかがですか。

 縫製子会社の蘇州大和針織服装は、オーディット(第三者監査)を求める国際ブランド向けのOEMを中心に行っています。アイテムは、Tシャツやスエットなど。人件費上昇の問題はありますが、規模を小さくしながら、オーディットを必要とする高級品の多品種小ロット生産に対応することで、収益を確保します。

 成形インナーの対日OEMが中心の大和紡工業〈蘇州〉は、繁閑差が問題でした。しかし、コートの縫製も開始したことで、年中仕事が入るようになり、繁閑差が縮まりました。

  ――全体的に、これまでの課題を克服しつつあるようですね。

 国内外合わせて25社の繊維事業会社の中に、足を引っ張るようなところは無くなりました。ですので、次のステージを考えることができるようになりました。