大手学生服メーカー/切り口変え市場創出/新たな方向へ“かじ”切る
2017年09月22日 (金曜日)
文部科学省の学校基本調査によると、来年の中学・高校新入学者数は前年比で6万人超減少する。同年入学商戦のモデルチェンジ(MC)校の件数も例年に比べ少ないといわれる。ここ数年市場でシェアを広げてきた大手学生服メーカーの成長戦略も、新たな方向へかじを切る段階に入ってきた。(於保佑輔)
学生服メーカー大手4社、菅公学生服(岡山市)、トンボ(同)、明石スクールユニフォームカンパニー(明石SUC、岡山県倉敷市)、瀧本(大阪府東大阪市)の前年度決算は、増収か前々年度並みになりそうだ。17年入学商戦でMC校の獲得が堅調だったほか、スクールスポーツで一部の専業メーカー事業縮小を受け市場シェアを広げることができた。
しかし、大手間の競合が年々激しさを増す中で、地域の流通との連携や統合で市場をより深掘りする動きが活発化している。
菅公学生服は、日本メンモウから社名を改めた東京菅公学生服(東京都中央区)と企業運営の一体化を進めたことにより、17年入学商戦で首都圏のMC校獲得を拡大させた。今年6月には、新潟県の販売代理店、丸六(新潟県長岡市)と新潟菅公学生服(同)を設立した。同県内でも一体となった企業運営で販売力を高める。
トンボは、販売会社のトンボメイト(名古屋市西区)を7月に合併し、名古屋支店として直接管理しながら販売を強化。東海地区での売上高として現状の17億円から2~3年後には20億円を目指す。
18年入学商戦は、全体のMC校が今年の商戦に比べて少ない傾向にあり、店頭向け商品やスポーツの販売拡大が増収の鍵となる。トンボは、ニット製詰め襟服「ビクトリー」を打ち出すなど店頭向けの新商品を充実させる。「競合がますます激しくなる」(近藤知之社長)と予想するスポーツは、昇華転写プリントなど独自性の高い商品開発を強めるとともに、トンボ倉吉工房(鳥取県倉吉市)の隣接地に工場を新設し、自社の生産比率を高める。
全国へ幅広いネットワークや学校とのつながりを持つ強みを生かし、新たな事業の構築を模索する動きも本格化させる。
学校教育のサポート事業に乗り出した菅公学生服は現在、私学を中心に約10校と取り組みが進む。「結果的に制服のMCにつながる可能性もあるが、それとは切り離して何ができるかを考える」(尾﨑茂社長)と位置付け、学校が抱える悩みを解決するというあまり前例のないビジネスモデルの構築を試みる。
瀧本も「コミュニケーションパートナーとして、さまざまな要望に応えていくことで学校への対応力を磨く」(高橋周作社長)方針。制服を供給した学校の系列大学との産学連携による取り組みを実際に開始した。
明石SUCは今年7月、「明石SUCセーフティープロジェクト(ASP)」として神戸学院大学(神戸市)と連携し、防災教育や防災関連商品の開発を本格的にスタートさせた。全国の学校へ「防災意識を高める」(河合秀文社長)のが狙い。「学校にとっても防災対策を取ることで差別化になる」と、学校のブランド価値向上の一端を担う。