特集 スクールユニフォーム(5)/新たな切り口で、市場のニーズを捉える学生服メーカー

2017年09月29日 (金曜日)

 大手学生服メーカーはここ数年、市場でシェアを伸ばしてきたが、少子化による生徒数の減少、学校の統廃合による学校数の減少によって、これまでの成長戦略が描きづらくなってきた。新たな切り口で、潜在化するニーズを捉える動きが活発化する。

〈菅公学生服/社長 尾﨑 茂 氏/ソリューション事業を深化へ〉

  ――2017年7月期の売上高は350億円(前期342億円)を計画していました。

 今年の入学商戦で、学生服のモデルチェンジ(MC)校の獲得が順調だったことや、スクールスポーツの販売も伸ばしたことで、ほぼ計画通りの着地になりそうです。

 単に制服や体操服の新作を展示するだけでなく異業種とも連携しながら学校支援活動の要素も強めた総合展示会を「スクールソリューションフェア」という形で13年から開いてきました。年々、来場者が増えており、MC校獲得などの成果につながりつつます。

  ――昨年8月に「カンコー教育ソリューション研究協議会」を立ち上げ、学校教育のサポート事業を本格化しています。

 私学を中心に既に約10校と取り組みが進んでいます。経営の活性化やキャリア教育など多くの学校が抱える悩みを、われわれとしてどう支援できるかを考えるのが目的です。これまで子供たちの未来を応援する「ドリームプロジェクト」や、教育現場での課題解決を支援するプロジェクト「カンコーマナビプロジェクト」などに取り組んできました。これらを含め、よりスケールの大きなものに発展させていければと思っています。

  ――いずれ制服のMCにもつなげるのが狙いですか。

 結果的につながる可能性もありますが、それとは切り離して何ができるかを考えていきます。20年には学習指導要領の改訂もあり、学校が直面する課題がますます増えてくる可能性があります。われわれで支援できない場合は、他社とも連携していきます。

  ――10~11月にはソリューションフェアが開かれます。

 今回は東京、大阪、名古屋だけでなく、福岡でも開きます。新しい商品を見せることはもちろん、学校支援のソリューションをもっと前面に出した内容にしていきます。まだまだ手探りの部分も多いですが、事業をしっかり成長させていきたいですね。

  ――来入学商戦に向けては。

 今のところMC校の獲得は順調です。MC校での競合でも以前に比べ、“強い負け方”ができるようになってきました。接戦で負けることが増えつつあり、そういった強い負け方を重ねることで、結果的にMC校獲得への勝率を高めていきます。

〈トンボ/社長 近藤 知之 氏/倉吉にスポーツウエア工場新設〉

  ――2017年6月期連結決算はいかがでしたが。

 17年入学商戦で100校超のモデルチェンジ(MC)校を獲得し、スポーツウエアも「ヨネックス」「ビクトリー」合わせて200校以上獲得するなどそれぞれ健闘しました。売上高は計画に若干届かなかったものの、前期比2・8%増の273億円と、増収になりました。経常利益はほぼ計画通りとなる1・4%増の18億円と増益でした。

  ――6月から組織を改編しています。

 MD本部と販売本部を統合して営業統括本部を設置しました。販売力とMD力を連携させ、商品や企画・販売政策をマッチさせていくことで事業を拡大していきます。

 販売会社のトンボメイト(名古屋市西区)を合併し、名古屋支店として直接管理して販売を強化していくことで、東海地区での売上高を現状の17億円から2~3年後には20億円を目指します。さらに首都圏のMC校獲得強化のため、東京企画提案部を課から格上げしました。

  ――来入学商戦に向けた取り組みは。

 全体のMC校は今年の入学商戦に比べて少なく、MC校の獲得が少なくなる可能性があり、店頭販売の商品を強化していきます。特に詰め襟服ではニット製のビクトリーを打ち出すほか、「ミッドフィルダー」「マックスプラス」など、従来よりも機能性を高めた新商品を豊富にそろえました。女子向けもセーラー服で上質感のある新ブランド「ビスターガール」を立ち上げました。

 制服別注についても「イーストボーイ」が来年から本格的に学校へ採用が決まりつつあります。今年の総合展では、自社ブランド「バーシティメイト」で、ファッションデザイナーの松倉久美氏とコラボした企画を打ち出しました。

  ――スポーツは昇華転写プリントやウオームアップウエアとしての「ピストレ」など、独自性の強い商品開発を強めています。

 美咲工場(岡山県美咲町)に「品質認証課」を設置し、制服並みに品質管理を徹底していきます。今後もスポーツは販売が拡大する見通しから、女子ブレザーを中心に生産するトンボ倉吉工房(鳥取県倉吉市)の隣接地にスポーツウエアの専用工場を、来年6月をめどに新設し、自社の生産比率を高めていきます。

  ――今期の計画は。

 売上高283億円、経常利益18億円を計画しています。

〈明石スクールユニフォームカンパニー/社長 河合 秀文 氏/防災教育 プロジェクト始動〉

  ――明石グループの2017年5月期決算は売上高が前期比3・2%増の256億円、経常利益が13・4%減の13億円でした。

 制服は新規のモデルチェンジ(MC)校の獲得が順調に進み、喪失案件も少なかったのですが、それ以上に生徒減の影響が出ました。スクールスポーツは「デサント」の新規獲得が150校を超え、過去最高の成果を上げました。その分、自社ブランドの「ヨットスポーツ」が陰に隠れ、伸びていません。今後は双方をしっかり伸ばしていきます。

 減益だったのは、人件費などの上昇していることがあります。素材の値上がりで原価が上がる傾向にあることも影響しました。

  ――18年の入学商戦に向けて、新たなプロジェクトをスタートさせました。

 7月から「明石SUCセーフティープロジェクト(ASP)」として防災教育や防災関連商品の開発をスタートさせました。東海地震や南海地震などの発生が想定される中、メーカーとして全国へ幅広いネットワークや学校とのつながりを持つ強みを生かし、学校へ防災意識を高めていくことが狙いです。

 社会防災学科が日本で唯一ある神戸学院大学(神戸市)との産学連携によって、防災教育普及のための商品開発の共同研究などを進めることで学校への防災に対する啓発活動も進めていきます。

  ――学校の反応はいかがですか。

 展示会で取り組みを紹介し、高い関心を頂きました。既にコンパクトに折り畳めるヘルメットや、自転車通学時に着用する高視認の安全ベストなどの販売を始めており、実績もできつつあります。

 学校にとっても防災対策を取ることが差別化につながります。特に私学では少子化で生徒獲得の競争が激しさを増す中、防災への備えを徹底していれば、保護者や生徒などの学校に対する見方も変わってくるはずです。

  ――MC校の獲得についてはいかがですか。

 大手間の競合が激しくなっていますが、それなりに目標として掲げていたMC校の獲得は進んでいます。スポーツについては、引き続きデサントが順調で、17年入学商戦並みに150校の獲得が見えつつあります。

  ――今期の計画は。

 明石グループ総連結で売上高262億円を目指していています。

〈瀧本/社長 高橋 周作 氏/対応力磨き、必要とされる存在へ〉

 ――2017年6月期決算の見通しは。

 売上高は前期比並みの98億~99億円となる見通しで、営業と生産の両方で効率化と無駄の削減が進んだことで増益を確保できそうです。

 タブレット端末で商品を提案できる独自システム「ティー・ピット」の活用で、素材の集約化や、サンプル製造のコスト削減が進んでいます。生産面では縫製工場で過剰な受注をなくし、人件費や運送費などのコストを抑えました。今期も継続して、できる限り計画生産し、効率化と無駄の削減を進めていきます。

  ――モデルチェンジ(MC)校の獲得に向け、「カンゴール」「ミズノ」などブランドの進捗(しんちょく)はいかがですか。

 カンゴールは10代後半の若い世代で人気が出てきました。ブランドだからといってすぐに採用にはなりませんが、かばんや夏服の採用など少しずつ実績ができつつあります。トレンドの変化に合わせ、企画を強化しながら、採用につなげていきます。

 ミズノはスポーツ強豪校を中心に少しずつ採用が増えてきました。

  ――少子化による生徒減などで、制服供給にとどまらない学校支援の必要性も出てきました。

 制服を供給する学校に対して、オープンスクールでの集客の相談に応じるなど、できる範囲でサポートをしていますが、今後はより必要とされている部分を明確にしながら、既存の学校や、新規に獲得したMC校へ、コミュニケーションパートナーとして、さまざまな要望への対応力を磨いていかなければいけません。

 実際、制服を供給する梅花学園の系列大学である梅花女子大学(大阪府茨木市)と、今年2月から授業をサポートし、学生たちのアイデアを制服に落とし込むなど、産学連携による新しい試みを始めています。

  ――18年入学商戦でのMC校の獲得はいかがですか。

 全般的にMC校が少なく、厳しい環境にありますが、今年とほぼ横ばいを維持しています。

 ただ、新しい企画の打ち出しは積極的に続けていきます。新たなチェック柄のブランドとして、スコットランドのタータンブランド「DCダルグリーシュ」を導入します。

 さらに19年入学生に向けて、国内大手アパレルのブランド導入も予定しており、女子服を先行して商品開発を進めます。10月に東京と大阪で開催する総合展で披露します。