特集 尾州マテリアル展(2)/BYF/毛糸、綿糸、合繊まで/複合やエコも焦点

2017年10月06日 (金曜日)

 「ビシュウ・マテリアル・エキシビション」と併催される糸の展示会「ビシュウ・ヤーン・フェア」(BYF)は今回で3回目の開催となる。出展者は10社。尾州産地の糸製造業の特徴はその幅広さにある。梳毛糸、綿糸、意匠撚糸にとどまらず、複合糸、合繊長繊維などさまざまな糸が出品される。

 17秋冬シーズンは百貨店アパレルの苦戦に伴う需要減に加え、原毛高を背景にした糸価格の上昇も加わり、尾州産地は厳しい事業環境を強いられた。

 それを踏まえて今回のBFY出展者は18秋冬に向けて元々、合繊を手掛ける企業以外にも合繊との複合化を図る企業が目立つ。原毛価格の高止まりによるコスト上昇を抑えるという側面もあるが、合繊と組み合わせることで機能性を付与し、付加価値を高める狙いもある。

 比較的高価格のキュプラ繊維やトリアセテート繊維使いのほかに、機能ポリエステルとの組み合わせも増えている。

 同時にプロダクトアウトではなく、アパレル、SPAなど、より消費者に近い部分に接点を設けて、消費者目線での開発を指向する傾向も見られる。それに伴い差別化糸にとどまらず別注糸への要求も高まりつつある。これは糸からの差別化する指向が強まっているとも言える。

 欧州を中心とする環境意識の高まりも考慮。再生ポリエステル短繊維、紙糸、再生ウール、さらにノンミュールジング羊毛などエコを意識した商品も多い。

 国内でもエコを重視する動きが少しずつ浸透してきた表れと言えるだろう。

〈近藤/高機能糸の備蓄充実〉

 近藤は、ポリエステル高機能糸の備蓄を充実させており、今回展では同糸に加えて、さまざまな意匠撚糸を使った生地を展示する。

 同社は約200種類の糸を備蓄。ポリエステルの糸はUVカットや吸水速乾、遮熱などの機能を持たせた。近年、注目が高まっているアスレジャーやスポーツ向けの衣料用途として訴求する。

 ほかにも、横編み用途として、毛足の長いフェザーモール糸も訴求。ウールや綿、ナイロン、ポリエステルなどの素材を使い、多彩なモール糸を展開する。

 さらに、ラメ糸やブライト糸などの光沢感のある糸や、依然としてツイードの人気が高いことから、ネップ糸やノット糸なども提案する。また、原毛価格が値上がりしていることを受け、ウールにポリエステルやレーヨンを入れた糸もそろえる。

〈浅野撚糸/気化熱性など訴求〉

 浅野撚糸は「スーパーゼロミント」「スーパーゼロ425」「スーパーゼロD」のスーパーゼロシリーズを訴求する。

 スーパーゼロミントは水溶性繊維を用いたもので、同社タオル「エアーかおる」に使用するなどパイル織物向けがメインの素材。スーパーゼロ425は特殊のりでコーティング後、元撚りの反対方向に2倍撚りを掛け、熱湯でのりを溶かし、ボリューム感を出す。ニット向けに綿の10~40単糸をそろえる。

 吸水性が高く、汗を蒸発させるため、気化熱が大きく、皮膚体温が下がりやすくなる特徴がある。同社試験によると、普通糸に比べて皮膚温度が0.7℃下がるという。

 スーパーゼロDは太番手限定糸。425と同じく特殊のりを使用し、唯一チーズ段階でのりを溶かす。デニム向けを狙う。

〈三幸毛糸紡績/新かすり染め糸の「ウルル」〉

 太番梳毛糸の生産を得意とする三幸毛糸紡績はかすり染め糸「ULURU(ウルル)」を新たに打ち出す。同社はスライバーの状態でかすり染めしたさまざまな糸を備蓄販売するが、ウルルはその新商品となる。

 ウルルとは豪州の先住民であるアボリジニによるエアーズロックの呼び名で、季節によって移り変わるウルルをイメージし、ロングスラブ糸と組み合わせ表面変化とともに、かすり染め糸で表現した。

 かすり感を抑えてミックス調、メランジ調を重視した点が特徴で、ウール26%・アクリル63%・ナイロン11%混による3.75番単糸を10色ラインアップする。ソリッド調からメランジ調、ミックス調への動きが出始めていることから企画した。ブース全面にもかすり染め糸のパネルを配置し訴求する。

〈カワボウテキスチャード/合繊加工糸全品種を披露〉

 カワボウテキスチャードは生産する合繊長繊維加工糸の全品種を訴求する。

 “超天然”として打ち出す天然繊維ライクな加工糸シリーズや、なま糸・加工糸含めて113色を備蓄販売する原着ポリエステル長繊維などを出品。同社を代表する高捲縮(けんしゅく)ストレッチ糸「パスタ」も提案する。

 超天然は麻、ウール、シルクをポリエステル長繊維加工糸で表現したもの。例えば麻調では独特のシャリ感、清涼感、ハリ・コシ感、風合いを実現する一方、シワになりにくい特徴がある。

 パスタは丸み形状が特徴の同社の定番糸。原着、カチオン可染ともラインアップし、かさ高性と中空糸以上の軽さを合わせて持つ。

 ブースではこうした加工糸をテキスタイルで見せる。

〈ニッケファブリック/合繊複合による機能糸〉

 ニッケファブリックは原料ブレンド、各種紡績法を組み合わせた機能糸をメインに提案する。ウールが本来持つ機能性と化学繊維の機能を加えた「フライ!フィット!」、新交撚糸「ニッケアクシオ」を丸編み、横編み用に訴求する。

 フライ!フィット!はストレッチ、形態安定、吸水速乾、耐洗濯、抗ピリングなどの機能を有し、交撚糸、混紡糸をそろえる。

 ニッケアクシオはウールの繊維束の内側に合繊長繊維を包み込み、かつきれいな流れを描くように交撚する「IN-SPIRALSPIN製法」による偏芯らせん構造を持つ。

 ウールのソフトな風合いを最大限に生かし、優れた耐久性、豊かなストレッチ性、美しい表面感などを持つ。インナー、ソックスなど向けに用途開拓に取り組む。

〈滝善/擬麻、美濃和紙など提案〉

 滝善は18春夏向けに擬麻加工の綿糸、同夏向けに「美濃和紙」使い、18秋冬向けにはウールとカチオン可染ポリエステル混紡糸「ハムレット602」、ウール・カシミヤ・ビキューナ混糸などオリジナル糸を中心に、同社製品を一堂に提案する。

 擬麻加工糸「クリスピーコットン」は綿の8.5番、13番単糸を36色展開するもの。マニラ麻を主原料とする美濃和紙使いは2ミリ幅「ネロ」、1.5ミリ幅「ミギー」の2タイプをそろえる。ネロは毛番7.3番単糸・48色、ミギーは16.7番単糸・24色を構える。

 ハムレット602はウール、ポリエステル60双糸の強撚糸。軽量感、リーズナブルプライスなどが特徴。初秋向けに加え梅春向けも狙う。ビキューナ混(5%)は初提案。80双糸をそろえる。

〈長谷川商店/豊富な品ぞろえを訴求〉

 長谷川商店は天然繊維を中心にメランジ糸、ファンシーヤーンを製造販売する。国内、海外の販売比率はほぼ半々。海外はメゾンなど高級ブランドが採用する。しかも、商社、代理店を介さず直接輸出を行うのも特徴だ。

 今回展ではシルク、ウール、リネン、コットン、カシミヤ、モヘア使いやテープヤーンなど同社が構える定番品など豊富な品ぞろえを訴求する。

 糸販売の延長線上として製品販売にも取り組む。「ホールガーメント」をはじめ横編み機を計10台導入するほか、丸編み製品も手掛けている。

 その一つがシルク100%の靴下。ナチュラルで素朴な風合いを持つ絹糸を使い、独特のメランジ感とカラーネップによってカラフルに仕上げたもの。こうした製品を一堂に置く旗艦店を来年に設ける計画もある。

〈豊島/再生ウールなどエコも〉

 豊島は一宮本店一部から再生ウールを使用した「アプリクション」、ノンミュールジング(子羊の臀部(でんぶ)の皮膚と肉を切り取らずに育成した)羊毛使いの「ローバー」、二部はサイロスパン精紡によるコンパクト糸「スプレンダーツイスト」、スペイン産ピマ綿を使いサイロスパン精紡の甘撚り糸「サンリットメローズ」を打ち出す。

 アプリクションは再生ウールのほか機能合繊との組み合わせもそろえる。再生ウール使いからスタートし、他の再生原料にも広げる。スプレンダーツイストは綿100%だけでなく、今年からウール混紡糸やナイロン混紡糸もラインアップ。合繊ライクな表面感、先染めによる奇麗な色目、シャリ感などの特徴を持つ。サンリットメローズは原料から手配し、撚り係数までこだわって開発した。

〈モリリン/化繊複合糸中心に〉

 モリリンはキュプラ短繊維とリサイクルポリエステル短繊維の混紡糸「ポルカ」、トリアセテート短繊維と精製セルロース繊維「テンセル」との混紡糸「ターリス」など、合繊メーカーとの取り組みによる紡績糸に強みがある。今回はポルカ、ターリスに加え、ウールとポリエステル長繊維の特殊撚糸を提案する。

 ポルカは織物用に60番単糸、編み地用に30・40単糸をそろえる。特にブラウスなど織物用に力を入れる。キュプラ短繊維使いでは100%物も含めて幅広いラインアップも訴求する。ターリスはトリアセテート30%・テンセル70%混により上質な光沢感と清涼感、形態安定性、適度な吸湿性、速乾性が特徴。40単糸をラインアップする。ウールとポリエステル長繊維の特殊撚糸はハリ・コシ感、軽量性などの特徴を持つ。

〈豊島紡績/再生ポリエス混がメイン〉

 豊島紡績はペットボトル再生ポリエステル短繊維を組み合わせた、ウール混糸「エコマー」、麻混糸「エコラン」をメインに訴求する。ともに再生ポリエステル短繊維の混率は70%。エコマーは60番単糸、エコランは48番単糸でそれぞれ8色をラインアップする。

 欧州を中心にエコへの意識が高まっていることに対応したほか、再生ポリエステル短繊維混による値頃感も追求した。

 また、トライスピン糸でも再生ポリエステル短繊維混糸を15番単糸(ウール44%・再生ポリエステル30%・ナイロン25%・ポリウレタン1%)で出品する予定だ。

 同社はウール100%糸「ブーマー」(24単糸、48単糸、44色)、ラミー100%糸「アラン」(48単糸、41色)をはじめカラーブック展開が豊富。同展では全ブックを展示する。