帝人/放射線遮蔽素材 実現/アラミド繊維に重金属練り込み

2017年10月11日 (水曜日)

 帝人のアラミド事業本部は、アラミド繊維に重金属を練り込むことで放射線遮蔽機能を持つ素材を開発している。今後、原子力発電所などでの需要が期待できる。

 放射線を遮蔽するためには鉛板など重金属を利用する方法が現在は一般的。鉛板を衣服の内部に装着した放射線防護服は極めて重く、着用者の動作も妨げられることから作業服としての性能が大幅に制限される。鉛板でカバーされない部位は放射線の直射を受けるといった欠点もある。

 こうした問題に対して帝人が開発したのが放射線遮蔽アラミド繊維。パラ系アラミド繊維にタングステンを練り込むことで放射線遮蔽機能を実現した。

 鉛板と比較して重量を軽減できるほか、繊維としての柔軟性も確保できることから防護服にしても着用者の動作の妨げも少ない。繊維状のため体の全ての部位をカバーする形状も可能となる。また、ショートカットファイバーにして機能紙とすることによって放射線遮蔽シートとすることもできる。

 練り込む金属量を増やせば遮蔽レベルも高まる。ただし、重量が増し、繊維の柔軟性も低下する。逆に金属量を減らせば遮蔽レベルは低下するが重量が減り、柔軟性が増すことで衣料素材としての汎用性が高まる。これを応用し、練り込む重金属の量によって遮蔽できる放射線レベルと素材としての汎用性をコントロールできる。

 練り込む重金属の種類もタングステンのほかチタンなどでも研究を進めており、これによっても放射線遮蔽能力を制御できる。アラミド繊維を使うことで高強力や防炎性といった防護服に必須の機能も併せ持つ。

 帝人ではアラミド繊維による防護素材の新しいソリューションとして提案を進める。特に原子力発電所などは今後、世界的に老朽原子炉の廃炉・解体が始まる。このため放射線遮蔽素材への需要増加も期待できる。