2017秋季総合特集(7)/top interview/ダイワボウホールディングス/繊維の新セグメント創出へ/取締役 専務執行役員 門前 英樹 氏/利益は「足し算の世界」に

2017年10月23日 (月曜日)

 ダイワボウグループの繊維事業の営業利益は、2016年3月期に過去最高となり、17年3月はそれを更新した。前期にブラジルとインドネシアの子会社を閉鎖整理したことで、利益面のマイナス要因はなくなった。来年から、新たな3カ年計画が始まる。繊維事業では「これが天井だと思える高い水準」を目指す。同時に、その次の3カ年に向けて、繊維事業の新たなセグメントの創出にも取り組む。利益のマイナス要因が消え、「足し算の世界」に入った同社繊維事業は、新たなステージへ進む。

  ――今後を生き抜くための貴社の独自性とは。

 前々年度の繊維事業の利益は過去最高になり、前年度はそれを更新しました。当社の繊維事業会社は現在、国内15社、海外10社の合計25社。国内15社のうち13社は生産拠点を構えています。海外の10社は全てアジアにあり、大和紡績香港以外は製造会社です。前年度に、ブラジルの紡績子会社とインドネシアの縫製子会社を閉鎖整理しました。これにより利益面のマイナス要因がなくなり、足し算の世界に入りました。

 今年度で現在の3カ年経営計画が終わり、来年度から新たな3カ年計画が始まります。当社の繊維事業は、衣料製品、合繊・レーヨン、産業資材の三つのセグメントで構成されています。それぞれのセグメントの事業会社が研究・開発機能を持っており、それを生かして新たな事業領域に入ります。

 これによって次期3カ年では、過去最高の利益が出ると思っています。しかし、それ以上の利益を出すには、いまの三つのセグメントだけでは限界があると感じています。次期3カ年の既存の3セグメントの業績目標は、これが天井だと思える高い水準になるでしょう。その次の3カ年の収益を拡大するには、新たなセグメントが必要だと思っています。ですので、次期3カ年は、業績目標の達成に加え、その次の3カ年に向けて新たなセグメントを創出することが課題になります。そのために今年、それぞれのセグメントのリーダーを決めました。3人のセグメント・リーダーに経営企画、財務を含めた5人が中心となり、新しいセグメントを次期3カ年で創出してもらいたいと考えています。

 過去は、どちらかというと構造改革に費用が必要でした。しかし、ダイワボウの繊維事業は新しいステージに入ります。マイナスがなくなり、利益の足し算の世界に入ったことで、次世代開発費用の捻出が可能になってきました。

 まずは、新たなセグメントになり得るようなテーマを設定することです。開発・研究のための新たなセンターのようなものが必要であれば、それも設けなければいけません。足し算の世界に入ったことで、そういうことができるようになりました。

  ――今年度上半期(2017年4~9月)の繊維事業の業績は。

 前年度の4~6月が、インバウンド需要のピークでした。7~9月に陰りが出て、10先に厳しくなりました。このため今年度上半期の繊維事業は、インバウンド需要効果を見込めないということで前期比減益の計画を組んでいます。ただ、下半期は増益で、通期でも増益という計画です。その上半期の計画に比べると増収になりますが、利益は、若干の未達になるかもしれません。

 衣料製品事業は計画比大幅増益です。ダイワボウノイの独自素材の拡販と、消費者に受け入れられているブランドへのOEMが奏功しています。ダイワボウアドバンスが、消費者に受け入れられているブランドを持っていることも増益の要因です。

 合繊・レーヨン事業は、計画を達成できません。合繊事業については、工場はフル稼働しており、計画比増収です。ただ、原燃料の高騰と、高収益商品の販売減で、利益は計画に届きませんでした。レーヨンは、一部取引先の一部商品の在庫調整の影響もあって上半期は計画未達です。合繊・レーヨン事業が衣料事業のプラスを帳消しにする形になりそうです。

 産業資材事業の樹脂加工部門は、原燃料が期初計画より高騰しているため、利益が計画に届きません。

  ――下半期(17年10月~18年3月)の課題を。

 先ほども申しましたが、上半期は前年比マイナスの計画ですが、下半期はプラスで、通期でもプラスにする計画で臨んでいます。

 合繊・レーヨンと産業資材事業が上半期は苦戦しましたが、レーヨン事業については下半期に挽回し、通期では計画通りになるでしょう。合繊事業についても対策を打てているので、あまり心配はしていませんが、上半期の計画未達分が大きかったので、それを下半期にどの程度取り戻せるかというところです。

 産業資材の樹脂加工分野では、新たな開発商品に期待していますが、スタートが遅れそうなので、今期は厳しいかもしれません。衣料製品事業は下半期も好調が続くと思います。

  ――日本以外の市場開拓を担う香港の大和紡績香港は、12年の設立以来増収増益で推移しています。

 大和紡績香港も、衣料製品、合繊・レーヨン、産業資材と三つのセグメントを担当しています。本社から移管したビジネスで営業を開始しましたが、衣料製品については現在、自ら開拓したビジネスが100%になっています。

 合繊・レーヨンでは、主力のフェースマスクが移管ビジネスから自前ビジネスに変わりつつあります。自身で開拓した顧客へのビジネスが少しずつ増えています。次期3カ年計画では、衣料製品部門に加え、合繊・レーヨン部門でも自前ビジネスを100%にすることを狙います。

〈25年前のあなたに一言/素人だと思い過ぎたか〉

 門前さんは25年前、9年間在籍した旧ダイワボウアパレル(現在のダイワボウアドバンス)から本体へ戻り、翌年開設される製品課の立ち上げ準備を進めていた。製品OEMが同課の任務だ。課員になる予定の入社1~3年目の若手数人に毎朝、始業の1時間前に会社に来てもらい研修会を開いた。数カ月間続けたという。「よく毎日来てくれた」と振り返る。ほとんど素人である課員を育てるために、最初は敢えて簡単な仕事を取ってきた。そのこともあって、業績が期待値に届くまでに時間を要する。しかし今にして思うと、「あの子達を素人だと思い過ぎたのかもしれない。もう少し高度な仕事を取ってきても大丈夫なのではと当時の自分に言いたい」と門前さん。

〔略歴〕

 もんぜん・ひでき 1974年大和紡績(現ダイワボウホールディングス)入社。2003年取締役、09年常務執行役員、10年取締役常務執行役員、16年取締役専務執行役員。