特集 北陸ヤーンフェア/“すべては、糸から。”(1)

2017年11月02日 (木曜日)

 「北陸ヤーンフェア」が11月8、9の両日、石川県金沢市の金沢流通会館で開催される。北陸ヤーンフェア事務局が主催する同展は今回で2回目の開催となるが、盛況だった初回を踏まえ、出展社数も9社増の22社に増えたことから、会期を2日間に延長。会場も広い場所に変更した。「すべては、糸から。」をテーマに商事子会社を含めて合繊メーカーがほぼ出そろい、機械メーカーも出展するなどの多彩な顔ぶれがそろった。

〈第2回、多彩な顔ぶれそろう/合繊、紡績、糸加工、商社はじめ22社が一堂に〉

 同展は北陸ヤーンフェア事務局主催によるもので、蝶理が実質的に主催者役を担う。今回展では島精機製作所、村田機械の機械メーカー2社、泉工業(京都府城陽市)、川プロ(石川県かほく市)、クラウン工業(京都市)、クラレトレーディング、新内外綿、東邦テキスタイル、福富(金沢市)、三菱ケミカルが初出展となる。

 その他、旭化成アドバンス、カワボウテキスチャード(岐阜県羽島市)、KBセーレン、山越(かほく市)、シモムラ(石川県小松市)、タロダ、(石川県内灘町)、蝶理、帝人フロンティア、東洋紡STC、東レ、ヒロタ工繊(小松市)、山甚撚糸(福井市)が継続出展する。

 テーマを「すべては、糸から。」とするように、繊維製品で糸はモノ作りの原点であり、高付加価値製品の開発には必要不可欠な存在。その面で同展を通じて、同質化から脱却し独自性のある製品開発のヒントが得られるはずだ。

〈蝶理 取締役執行役員 繊維第一本部長 吉田 裕志 氏/産地の“入り口”作る〉

 おかげさまで「北陸ヤーンフェア」の第2回目を開催する運びとなりました。同展の主催は北陸ヤーンフェア事務局としていますが、実質的には当社が出展者勧誘や来場者誘致、会場選定などを行っています。ただ、先鞭をつけたのはたしかに当社ですが、こうした展示会はやはり公的な第三者機関が主催するのが望ましいと考えていますので、今後は主催者が変更になる可能性があります。

 今回展には19ブース・22社が参加します。前回の13ブース・13社を大きく上回るもので、出展したいとの意向を示してきてくれたところもあります。前回展の盛況を受けて会場を広くしようと考え、面積を約2倍の金沢流通会館に移したのですが、その判断は正しかったようです。

 商事子会社含め国内合繊メーカーがほぼ出そろいますし、産地内外の撚糸、糸商、糸加工業なども前回展に引き続き多数出展します。機械メーカーや綿紡績の新規出展もありますので、かなりバリエーションが広がりました。

 一日開催だった前回展には550人の来場があり、滞留時間も長かった。今回は2日開催としましたので、千人以上の来場者は天気が悪くなければ、固いと見ています。

 前回展の来場者アンケートでは「大変よかった」「継続開催を」「規模の拡大を」という声が届きました。出展者では「大手商社との新しい仕事が始まった」など実際の成果も挙がっています。産地の“入り口”である糸への期待を実感しますし、今回も来場者、出展者双方にメリットのある展示会になればと思います。ぜひ会場にお越しください。

〈旭化成アドバンス/旭化成の素材を加工〉

 旭化成アドバンスは旭化成のキュプラ繊維「ベンベルグ」とスパンデックス「ロイカ」をベースに糸加工などで付加価値を付けた糸を提案する。

 ベンベルグは先染め糸、ポリエステルやナイロンとの複合糸、紡績糸など染色や複合糸加工で付加価値を高めた商品を多彩に用意する。ロイカも得意のカバリング糸など加工糸で提案し、織・編み物向けの提案を進める。

 ユニークな独自素材として3次元立体編み物「フュージョン」やポリ塩化ビニリデン系繊維「サラン」なども紹介。用途開拓を進める。商社として輸入販売するレーヨン長繊維も紹介する。いずれの素材も原糸だけでなく生地・製品サンプルで展示することで旭化成アドバンスの原料ビジネスの認知度を高めることを狙う。

〈川プロ/ラメ糸でストレッチ〉

 カバリング糸製造の川プロ(石川県かほく市)は今回が初出展。同展を通じて「糸加工メーカーとして、バイオーダーする強みを訴求し、共同開発先を開拓したい」考えだ。

 出品するのは泉工業(京都府城陽市)との共同開発品で、純銀ラメのカバリング糸「ジョーテックスマイテル」や、ポリエステル長繊維のタスラン加工糸をダブルカバリングし天然繊維ライクを表現するストレッチ糸。さらに糸商の福富(金沢市)が新開発したポリエステル100%のカラーネップ糸を使ったカバリング糸も提案する。

 同社は自社にカバリング設備11台を構え、外注も活用してカバリング糸を製造、販売する。特に2種類の糸をスパンデックスに巻き付けるダブルカバリングを得意とする。

〈泉工業/セルロースラメ糸披露〉

 泉工業は、このほど開発したセルロースラメ糸「セルロースジョーテックス」やノンホルマリンラメ糸「ゼロプラム」のアルミ蒸着タイプ「ゼロプラムアルミ」などを披露する。

 セルロースジョーテックスはラメをセルロースフィルムで挟んだもの。反応染料で染色するとラメ表面のセルロースフィルムが染まる。反応染料で後染めが可能なほか、プリント下地に使用して反応プリントに利用することもできる。

 一方、ゼロプラムアルミは銀蒸着タイプのゼロプラムと比較して原料コストが抑えられるほか、含まれる硫化物が銀を変色させる皮革・ゴムにも使える。減量加工しても光沢が剥離や変色が起こらないラメ糸「ジョーテックス」も改めてアピールし、川プロとのコラボ商品も披露する。

〈カワボウテキスチャード/仮撚り、エア加工駆使〉

 カワボウテキスチャード(岐阜県羽島市)は仮撚加工、エア加工を駆使したさまざまな複合加工糸のラインアップと、幅広い原着糸の備蓄販売に特徴がある。今回展では「独自のフィラメント、ファンシーヤーンを幅広く活用してもらえるきっかけにしたい」と意気込む。

 今回展ではポリエステル長繊維100%によるナチュラルライク糸やカラー原着糸をメインに提案する。ナチュラルライク糸は合繊の機能に加えて綿、ウール、麻、シルクなど天然繊維の風合いや表情を合わせ持つ加工糸だ。

 カラー原着糸はなま糸・加工糸含めて113色を備蓄販売するなど豊富なカラーバリエーションを持つが、意匠糸の材料としても使えるブライト系原着によるなま糸と加工糸も提案する。

〈クラウン工業/「ベンベルグ」使いのラメ糸〉

 ラメ糸製造のクラウン工業(京都市)は織物、ニット用とも幅広い品ぞろえとリーズナブルな価格設定を強みとしている。

 同社が北陸産地での展示会に出展するのは今回が初めてになるが、「当社製品をアピールする良い機会であり、今後のビジネス発展の足掛かりにしたい」と期待する。

 今回展ではシルキータッチのラメ糸であるCRX―51「クリスティ」、独特のシャリ感とペーパータッチの「和紙タスキ“綾”」などを提案する。

 クリスティはキュプラ繊維「ベンベルグ」84%・ポリエステル16%から成り、ポリエステルフィルムにベンベルグを撚糸したもの。

 ベンベルグの光沢感としなやかな肌触りを持ったラメ糸で、反応染料でも使用可能という。

 和紙タスキ“綾”はタスキ状にカバリングしたもので、ベンベルグ49%・和紙29%・ポリエステル16%から成る。

 和紙のシャリ感とベンベルグの風合いを合わせ持っており、独特なペーパータッチの製品を製作できる特徴を持つ。

〈山越/カチオンなしに杢調〉

 ポリエステル加工糸製造の山越(石川県かほく市)は自社で仮撚加工機16台を持ち、加工糸輸入を合わせて月1400~1500トンの規模を誇る。その競争力に加えて付加価値品の開発にも力を入れる。

 今回展では今春本格稼働した新高速延伸仮撚機による「エンジュロンゆらぎ」を出品する。同機は糸の特性を生かした複合糸が生産可能で、ゆらぎはカチオン可染糸を使用せずに杢調表現ができる。その他、伸縮性を30~40%(従来は20%)高め、キックバック性も向上したストレッチ糸「同SSY」、銀イオンを練り込み、優れた抗菌性を持つ「同シルバー」、ナイロン・ポリエステルの特殊複合加工糸で、杢調表現や制電性を持つ「ナイステル」、仮撚機で天然ライクを表現した競争力を持つ加工糸を訴求する。

〈クラレトレーディング/独自性ある原糸を提案〉

 クラレトレーディングは炭素含有の制電糸「クラカーボ」、水溶性繊維「ミントバール」、ポリブチレンテレフタレート(PBT)繊維「ビューフィット」、十字断面フルダルポリエステル長繊維「スペースマスターUV」など独自性のある原糸を多彩に提案する。

 クラカーボはユニフォームや安全関連、資材用途で実績十分の素材だが、フォーマルブラックなど新たな用途も出てきた。ミントバールは熱水で溶融させることで無撚糸タオルやナチュラルストレッチ織物に欠かせない素材である。環境負荷の低さへの注目度も高い。ビューフィットは非ウレタン系ストレッチ素材として加工しやすさ、物性の安定性で根強い人気がある。スペースマスターUVはセラミック含有量の多さを生かしたUVカット率の高さで評価が高い。いずれの素材も独自ポリマーやポリマー共重合の技術などを打ち出す。

〈島精機製作所/最新WG機でモノ作り変革〉

 島精機製作所は、最新「ホールガーメント」(WG)横編み機「MACH2XS」と3Dデザインシステム「SDS―ONE APEX3」を紹介し、生産システムの自動化とIoTによるマスカスタマイゼーション(個別大量生産)を可能にする新しいモノ作りを提案する。

 MACH2XSは可動式シンカー搭載4枚ベッド機構のWG横編み機。従来の横編み機では難しかった立体的な編成などが可能になり、生産性も飛躍的に高まった。生産システムのIoT化と組み合わせることでアパレル生産システムに変革をもたらす可能性を秘める。

 企画・デザインから販売までのモノ作りをサポートするSDS―ONE APEX3は柄や生地デザインを変更しながら最終製品の仕上がりを3Dイメージで確認できる「リアルタイム3Dビュー」も紹介する。

〈KBセーレン/技術生かした融着、制電〉

 KBセーレンはマイクロファイバーなどの細繊度紡糸技術、異原料の複合紡糸技術、さらに抗菌剤など機能性を付与する練り込み技術に定評がある。

 今回展では芯鞘型熱融着ポリエステル長繊維「ベルカップル」、高性能導電性を持つ長・短繊維「ベルトロン」などを出品。

 「来場者に当社の差別化素材を見てもらい、さまざまな用途で活用してもらいたい」と意気込む。

 ベルカップルは芯部にレギュラー、鞘部に低融点のポリエステルを配した複合繊維。低融点部分が溶けることで、熱融着する。

 これにより、ヒートシール性(目ズレ防止)、形態安定性、硬度調整性に優れる。

 無溶媒で熱融着させることができるのも特徴。

 ベルトロンはナイロン長・短繊維、ポリエステル長・短繊維をラインアップ。繊維そのものが制電性を持つため、洗濯や摩擦、屈曲による効果の劣化がなく、制電効果は半永久的に持続。どのような環境下でも帯電防止効果があり、しかも少量で十分な効果を発揮する。

〈シモムラ/「アモッサCL」新投入〉

 糸加工メーカーのシモムラ(石川県小松市)は備蓄販売するポリエステル先染め糸「アモッサ」で、綿ライクの新タイプ「アモッサCL」を追加した。フルダル糸を使いPIN仮撚機とエア加工機を組み合わせたもので、今回展で披露する。

 さらにPIN仮撚機によりポリトリメチレン・テレフタレート(PTT)繊維「ソロテックス」とポリエステル長繊維複合の梳毛調先染め糸、今春傘下に収めたフクイセイシのPIN仮撚機や旧鈴倉インダストリーで、現・子会社であるソフィーナの新潟工場の撚糸機による意匠糸なども提案する。

 同社は撚糸機90台、PIN仮撚機14台、高速仮撚機1台などを自社に持ち、協力工場も活用しモノ作りを行う。同展では「定番糸を含め当社を再認識してもらう」と同時に顧客開拓を目指す。

〈新内外綿/少量・短納期で多様な杢〉

 新内外綿はトップ杢(もく)と形状変化や混紡の組み合わせなど他社にない製品の紡績を強みとする。独自の生産システムで少量・短納期生産にも柔軟に対応し、顧客の求める商品を必要な量、必要な時に供給する。

 今回のヤーンフェアでは村田機械のボルテックス精紡機を使ったトップ杢糸とボタニカルダイトップ杢糸の2シリーズをアピールする。

 MVS紡績のトップ杢糸シリーズは綿100%、精製セルロース繊維「テンセル」100%、ポリエステル100%など多様な素材をそろえる。MVSならではのクリアーな表面感、ハリ・コシのある風合いと強撚のようなシャリ感が特徴だ。

 ボタニカルダイトップ杢糸シリーズはオーガニックコットン100%、テンセル100%などがある。植物から抽出した天然色素の自然な色合いと化学染料の安定した品質を併せ持つハイブリッド・メランジヤーンだ。

〈帝人フロンティア/ファッション用に新素材〉

 帝人フロンティアは「前回展で素材を絞り込んだ提案を行ったが、今回展は新規開発素材を含めた幅広い提案」を行う。

 同社は仮撚加工メーカーと連動した素材開発力や社内連携による原糸からテキスタイル、製品までの一体運営が特徴だ。

 今回展では主力素材であるポリトリメチレン・テレフタレート(PPT)繊維「ソロテックス」の長繊維・短繊維と、新開発素材である「美影」「美影ドライ」などを打ち出す。

 ソロテックスは長繊維でカチオン混繊糸、タスラン加工糸などのバリエーションを拡大し、意匠性を付与した。

 短繊維は他の紡績糸にはないストレッチ性、ソフト性を100%、綿混、ウール混などで訴求する考え。

 美影、美影ドライはポリエステル長繊維100%の新開発素材。美影はソフトで膨らみがあり、高ドレープ性、深色性を表現できる。

 美影ドライは美影のソフトで高ドレープ性と深い発色を持ちながら、ドライ感がある。ともに、ファッション用新素材として織物、編み物での提案を行う。

〈タロダ/カラーブックの新作も〉

 糸商のタロダ(石川県内灘町)はさまざまな先染め糸を取り扱い、カラーブック展開を行う。量的には拠点を置く産地内の細幅織物向けが主力だが、顧客数は県外が多く、幅広い用途のニーズに対応している。生産は協力工場への委託が大半を占めるものの、7年前に自社工場も立ち上げ、撚糸機3台と試験用撚糸機1台、さらにワインダーも有する。

 今回展では備蓄販売するブック帳「JTC」シリーズを基本に出品する。フルダル糸とカチオンセミダル糸による杢調ポリエステル加工糸「スイニー」や、中空とソフト性が特徴の「ディーエアー」、割繊糸使いの「カッセン」(2018年発売)のほか、パネル紹介でブライトナイロン加工糸を使ったソフトで発色性が特徴の「SAKURA」も紹介する。

〈東邦テキスタイル/防透・遮熱性の紡績糸〉

 東邦テキスタイルは今回初出展となる。帝人グループで紡績糸を中心にニット、2次製品の販売を行う同社だが、ポリエステル、綿、アクリル、レーヨンなど多種多様な素材とその複合紡績に強みがある。今回展を通じて「新規顧客の開拓」を目指す。

 イチ押し素材はペットボトルリサイクル短繊維「エコペット」使いと防透性、遮熱性を持つ紡績糸「ウェーブロンΩ」。エコペットは使用済みペットボトルを再生したポリエステル短繊維で100%糸のほか、ポリエステル綿混糸、ポリエステルレーヨン混糸なども揃える。ウェーブロンΩは遮熱、防透、UVカットなどを持つ酸化チタンなどの材料を練り込んだポリエスル短繊維を使った紡績糸。100%糸のほかポリエステルレーヨン混糸もラインアップする。

〈蝶理/多彩な糸取り扱いが特徴〉

 蝶理は国内外の合繊メーカー、糸加工メーカーと連携し、最先端の原料調達や独自の糸開発も行っており、300以上の豊富な糸種を備蓄販売する。こうした幅広い合繊糸を取り扱う強みを生かして「北陸産地の活性化に貢献できる」提案を行う考えだ。

 今回展でのイチ押し素材はストレッチ性が特徴の「テックスブリッド」と吸水速乾性を持つ「ドライマスター」の2タイプ。

 テックスブリッドは特殊な分子構造によって高いストレッチ性を持ち、体の動きに合わせて伸縮する機能を付与することができる、ポリエステル長繊維だ。

 ドライマスターはポリエステル長繊維、ポリエステル短繊維ともにラインアップ。多様な異型断面を持ち、水分を素早く拡散させ、常に快適な状態を維持する吸水速乾糸になる。

 同社は北陸産地を繊維事業の基盤と位置付ける。販売、仕入れ含めた北陸産地との取引額は2016年度250億円。19年度には300億円に拡大する計画で、その半分を原料販売が占める。

〈東洋紡STC/紡績糸、アクリルも多彩〉

 東洋紡STCは日本エクスラン工業と連携して出展し、東洋紡グループとして多彩に提案する。

 今回展では、得意の長短複合紡績糸として「マナード」「フィラシス」を打ち出す。特化原料使いでは遮熱機能を持つセラミック練り込みY字断面ポリエステル紡績糸「トライクール」、綿100%機能綿糸「爽快コット」、海島綿種と「ピマ」綿種のハイブリッド綿種「マスターシード」など高級綿糸も提案。改質による保湿レーヨン紡績糸「リフレス」や速乾機能ポリエステル長繊維「デオドライ」も紹介する。

 日本エクスラン工業はアクリレート系保温素材「エクス」やマイクロアクリル「極衣」などを出展。東洋紡富山事業所と連携した2層構造糸なども打ち出し、新規顧客の開拓を目指す。