特集 北陸ヤーンフェア/“すべては、糸から。”(2)

2017年11月02日 (木曜日)

〈東レ/天然繊維を超える〉

 東レは「天然繊維を超えるGOSEN」をテーマに出展する。天然繊維の優れた点と合繊ならではの機能性を併せ持つ「快適で素材感を楽しむ、天然繊維を超えるGOSEN」を提案する。

 同社の強みは国内工場、海外グループ会社で生産する定番糸から差別化糸までの幅広い品種構成。しかも国内では唯一、ポリエステル長・短繊維、ナイロン長・短繊維、アクリル短繊維と3大合繊全てを生産する。

 さらに海外グループ会社と連携した原糸から縫製品までの一貫生産にも特徴がある。

 今回展ではポリエステル100%、ナイロン長繊維100%による複合加工糸によって綿・毛・麻など天然繊維の表面感と、吸水・速乾・軽量・清涼感など合繊ならでは機能性を合わせ持つ多彩な糸を提案する。

〈三菱ケミカル/形態変化や超極細など〉

 三菱ケミカルは今回初出展となる。「北陸産地を中心に前向きな開発につなげたい」との考え。同社はアクリル短繊維、トリアセテート長繊維、ポリプロピレン長繊維など独自性を持つ素材展開に特徴がある。さらに年間を通じてニーズにあった機能性素材の提案に力を入れる。

 今回展では、乾湿状態に応じて立体的に形態変化する複合繊維「ベントクール」、超極細抗ピルアクリル短繊維「ミヤビ ファイバー 06」などを出品する。

 ベントクールはトリアセテートとジアセテートの複合繊維。乾燥時は繊維の捲縮(けんしゅく)が通気性を抑制し、発汗して湿潤時になると瞬時に伸長し通気性を向上する。これにより、衣服内の換気を自動的に調整するのが特徴だ。さらに繊維改質により親水性を高め、繰り返し洗濯後も優れた吸湿・吸汗、速乾性を保つ。

 ミヤビ ファイバー 06は0・6デシテックスの細繊度でありながら、毛玉が出来にくく、これまでの超極細タイプよりもソフト感を持つ。この数年、開発に取り組んできた新素材でもある。

〈ヒロタ工繊/蓄光糸や反射蓄光糸〉

 ヒロタ工繊(石川県小松市)は、糸商であるヒロタ商事(同)が1990年に自社に糸加工機を導入するために設立した。現在、イタリー式撚糸機1台、カバリング機9台、合撚機1台や高速ワインダーを有する。外注も活用して加工糸販売を行うが、特にナイロン長繊維使いに特徴がある。

 今回展では蓄光糸や反射蓄光糸などをメインに出品する。蓄光糸は芯糸に蓄光剤が入った糸、鞘糸に通常糸を配した。蓄光糸に先染糸をカバリングしているため、輝度を損なわずに多色展開でき、小ロットで対応する。

 反射蓄光糸は反射糸と蓄光糸の組み合わせ。今回展ではタスラン加工により糸の間にガラスビーズを入れるとともに、ラメの微細粉末を閉じ込めたタイプも提案する。また、ナイロン100%による形状変化糸も出品する。

〈村田機械/「ボルテックス」糸アピール〉

 自動ワインダー「QPROプラス」や渦流精紡機「ボルテックス」で知られる村田機械。今回は特にボルテックス精紡機の紹介とボルテックスで紡績したボルテックス糸をアピールする。

 ボルテックスは通常のリング精紡機と異なり、生産する糸に抗ピリング性や優れた外観など独特の機能や性質がある。ハリ・コシ感にも優れるため、例えばセルロース系繊維の紡績糸はアウターニット・カットソーにも用途を拡大するのに大きな役割を担った。今回展でも機械の紹介に加えてボルテックス糸を多彩な製品サンプルの展示で紹介する。そのほか、新規素材として研究開発を続けているカーボンナノチューブ(CNT)の取り組みも紹介する。

 これまで商品を紹介する機会の少なかった北陸産地に対してボルテックスやCNTといった村田機械の最新のテクノロジーを紹介する。

〈福富/カラーネップ糸新開発〉

 糸商の福富(石川県金沢市)は初出展となるが、このほど開発したカチオン可染糸との合撚によるポリエステル100%でのカラーネップ糸を提案する。同社は「合繊糸についてはプロフェッショナルな人材を持ち、衣料雑貨など製品ビジネスも展開している」点が特徴。

 バイオーダーで染め糸を販売するほか、製品はウール混など短繊維複合糸を中心にモノ作りを行い、小売店へ直接卸す。02年から製品販売を始めており、産地を超えて企業コラボを推進する。

 今回展では「合繊糸のプロ」が開発したカラーネップ糸を使った製品も出品。さらに開発中の撥水(はっすい)加工を施したポリエステル長繊維も披露。同糸でも製品で見せる。豊島のオーガニックコットン「オーガビッツ」の40双糸カラーブック展開も訴求する。

〈山甚撚糸/エア加工などで伸縮糸〉

 複合加工糸メーカーである山甚撚糸(福井市)は、エア加工機16台、撚糸機26台、整経機3台(内、サンプル用1台)を自社で構え、協力工場も活用しながら糸加工からビームサプライまで一貫で開発からモノ作りを行う。トリアセテート長繊維を主力に各分野に適した加工糸を生産する。

 今回展ではストレッチをキーワードに「さまざまなシーンに応じたストレッチ糸をメインに提案する」予定。ポリウレタン繊維やポリトリメチレン・テレフタレート(PTT)繊維を使いながら、エア加工と追撚でトリアセテート長繊維、キュプラ長繊維、レーヨン長繊維と複合。「カバリング糸とは異なるストレッチ糸」として打ち出す。

 合繊メーカーとの取り組みより、吸水速乾ポリエステル100%を糸加工でさらに工夫、機能性を高めた糸を経編み、織物向けに訴求するほか、タスラン加工糸による意匠糸なども出品する。

 同展ではパンフレットも作成して、細かなサンプル作りにも対応する機能も訴える。受託加工が大半だが、提案型を指向。新しい取り組み先の開拓を目指す。