すべては、糸から。/第2回北陸ヤーンフェア(3)/長・短繊維が顔合わせ

2017年11月22日 (水曜日)

 合繊紡績糸など短繊維系の提案も数多くあった「第2回北陸ヤーンフェア」。紡績糸の提案が増えたことは展示会そのものの幅を広げることにもなる。合繊長繊維の織・編み物産地である北陸への紡績糸販売は多くないが、同展を通じて新規顧客の開拓に結び付けるため、熱の入った提案が行われた。

 初出展した三菱ケミカルはアクリル短繊維の新素材を軸に提案した。「興味は持ってもらえた」と繊維素材事業部繊維営業グループの逸水篤機能素材チームマネジャーは話す。特に極細アクリル短繊維の新タイプ「ミヤビ ファイバー 06」は好反応を得た。さらに新開発の導電アクリル短繊維「L100」にも関心が高かった。芯鞘構造の導電アクリル短繊維「コアブリッド」より高性能のL100。セーターの一部分に使うだけで高い制電性を発揮する優れ物だ。一方、今後どのように生かすかが課題とする。

 同じく初出展の新内外綿は隣にブースを構えた村田機械の渦流精紡機「ボルテックス」を使った精製セルロース繊維「テンセル」100%による「ビスコチェントエアー」などを提案する一方、同社で「珍しい機能糸」(紡績部の藤上和久次長)も出品。抗菌加工を施したポリエステル短繊維・テンセル2層構造糸で吸水速乾性も併せ持つ。

 東洋紡STCは日本エクスラン工業と共同出展。長短複合糸「マナード」「フィラシス」をメインに、アクリレート系繊維「エクス」、極細アクリル短繊維「極衣」を提案した。特に長繊維の機業場とニッタ―で短繊維使いは風綿が問題となるが、「長短複合糸は風綿が出にくい」(日高謙一開発技術センター長)点を訴求。「綿に違和感を持つ来場者は少なかった」と話す。

 その綿をはじめ天然繊維を狙った提案が多かったのも今回展の特徴の一つ。その代表例が東レだろう。ブース前面に掲げたテーマは「オーバー・ザ・ナチュラル~合成繊維は、天然繊維を超える~」と刺激的。定番糸を使いながら仮撚加工、エア加工を駆使し、綿、毛、麻ライクなポリエステル長繊維使い、縫製品で訴求した。

 綿代替では繊維表面にループ構造を持たせた「MTR―B」、毛代替では糸に特殊構造を施した「NF」、リネン代替では糸に部分的な融着加工を施した「SAP」、仮撚スラブ加工糸「LINY」、原糸の長手方向に繊度差を形成した「WALTZ」を提案した。

 北陸産地への販売を目指す紡績糸。綿など紡績糸の市場を狙う合繊長繊維。今回展では両者顔を合わせたことも面白さを感じさせた。