特集 清潔・衛生と繊維製品(2)/多彩な機能で攻める!/素材&繊維薬剤メーカー

2017年11月28日 (火曜日)

〈「クレンゼ」ウイルス対策に/クラボウ〉

 クラボウは清潔衛生分野で抗ウイルス繊維加工技術「クレンゼ」を使った素材の打ち出しを強める。病院白衣、寝具、子供服、学生服と幅広く展開する。

 クレンゼの大きな特徴の一つは人体への安全性だ。抗ウイルス・抗菌効果に口腔内消毒剤として開発された成分を使っているためだ。「SEK抗ウイルス加工マーク」のほか「抗菌防臭加工」「制菌加工(一般用途)」「制菌加工(特定用途)」の各SEKマークも取得し、試験対象ウイルス・菌種も含めて20種類のウイルス、細菌、真菌に対する効果を確認済み。

 今冬からは企業、学校、福祉施設などへクレンゼを活用したインフルエンザ予防グッズ「クレンゼキット」の販売も始める。抗菌・抗ウイルス成分を含むスプレー、クレンゼ加工のマスク・タオルハンカチ、予防法を啓発するDVDとポスターをセットにし、クレンゼの認知度拡大を図る。

〈肌着の消臭加工 充実/富士紡ホールディングス〉

 富士紡ホールディングス(HD)は清潔・衛生加工素材として、部屋干し臭に対応した「デオサラット」、抗菌防臭と消臭を併せ持つ「アリアフレスカ」などを展開する。

 “スメルハラスメント”や加齢臭に悩む中高年の増加を背景に、このほど汗臭、加齢臭の消臭に加え、ミドル脂臭の抗菌防臭機能を併せ持つ新加工「デオフレスカ+デオコンフォート」を開発した。

 この加工はアンモニア、酢酸、イソ吉草酸などに起因する汗臭、ノネナールによる加齢臭の消臭加工に、30~40代の男性の後頭部や首の後ろから発するミドル脂臭の発生源とされるジアセチルの抗菌防臭機能を組み合わせた。耐久性は洗濯10回後でも機能を確認済み。加工はフジボウテキスタイル和歌山工場で行う。フジボウアパレルの肌着ブランド「BVD」への提案を進める。

 富士紡HDグループのアングルは、スウェーデンのポリジン社の抗菌防臭加工「ポリジン加工」も採用している。ポリジン加工は汗を含んだ繊維に付着したバクテリアの繁殖を銀イオンで抑え込む独自の技術を活用する。

 洗濯しても効果が落ちにくいのが特徴だが、優れた抗菌・防臭性で着用後洗わなくても臭わないという。肌着分野でポリジン加工を使用できるのはアングルのみ。

〈工業洗濯対応が強化/シキボウ〉

 シキボウは、清潔・衛生をテーマとした機能素材の開発・提案に力を入れる。従来の機能に加え工業洗濯に対応した加工を充実させる。代表的なものには制菌加工「ノモス」、消臭加工「スーパーアニエール」、抗菌防臭加工「ノンスタック」などがある。

 ノモスは最も市場に浸透している制菌加工の一つ。一般衣料、介護ユニフォーム、白衣などで展開する。対象菌種の多さ、抗菌効果、即効性といった特徴に加え工業洗濯対応で“プレミアム抗菌”としてアピールを強める。

 消臭加工素材では、スーパーアニエールシリーズが主力。約30年前はアンモニア消臭が中心だったが、汗臭にも応じるスーパーアニエール、加齢臭対応の「スーパーアニエール9」、ミドル脂臭にも対応する「スーパーアニエールM」も登場しバリエーションが充実。高い消臭効果、幅広い対応臭気成分、優れた洗濯耐久性、即効性を強みにシェアを高める。

 抗菌では、繊維上の細菌の増殖を抑制することで防臭効果を得るノンスタックや洗濯後の脱水性を高め乾燥時間を短くし、部屋干し中に増える臭いの原因菌に抗菌効果を発揮する「ルームドライ」などが根強く売れている。いずれも工業洗濯に対応。

 抗ウイルス素材としては「フルテクト」「ノロガード」という2素材を展開し、前者は業務用マスク、後者は吐しゃ物処理用のシートとして学校、ホテル、外食店などで販売を強める。

〈「SEK」で活用し拡大/ダイワボウノイ〉

 ダイワボウノイは、「SEK」マークを活用した素材提案を強める。

 制菌加工「クリアフレッシュ」は、これまでの制菌加工に加え、モラクセラ菌にも制菌機能を発揮することでSEK制菌マークを取得、新たに同社の測定ではアクネ菌、MRSAの殺菌活性値も確認済み。

 防汚加工生地シリーズも進化した。綿素材用の「エコリリースW」とポリエステル・綿混素材、ポリエステル素材用の「ミラクルリリースW」がある。水に浸すだけで皮脂汚れが落ちる機能が好評で、インナー、Tシャツ、ドレスシャツ、布団カバーなど多様なアイテムで実績がある。

 抗ウイルス加工素材「クリアフレッシュV」の販路開拓にも取り組む。この加工は繊維に付着した特定のウイルスの数を減らすだけでなく、制菌、抗菌防臭機能も発揮する。「抗ウイルス」に加え「制菌加工」「抗菌防臭加工」でもSEKマークを取得済み。採用実績が多いのはパジャマ、寝装、肌着での採用。高齢者や介護用インナーへの提案にも力を入れる。

 防虫加工としては「モスキュート」がある。虫が嫌う薬剤の成分を独自の技術で繊維に固着させ防虫効果を得る。「エコテックス」認証を取得し、人体への安全性も高い。寝具製品、アウトドアウエア、カジュアル衣料用で販売を拡げている。

〈防虫加工の提案に注力/ダイワボウレーヨン〉

 ダイワボウレーヨンは防虫加工の販売に本腰を入れる。昨年、大和化学工業と共同で練り込み方式の防虫機能レーヨン「バグノン」を開発した。

 練り込みの特徴である洗濯耐久性の高さが強み。18春夏へアウトドア、スポーツ、子供服用途へ提案を進める。原綿だけでなく紡績子会社のダイワボウスピンテックで紡績し、原糸での販売も視野に入れる。

 バグノンは機能剤にシナモンの成分でもあるケイ皮酸誘導体を応用しているため安全性が高い。飛来する虫や室内に潜む虫を寄せ付けない。実証実験では蚊とダニを使用し忌避効果を得た。毒性のあるヒアリへの効果も検証中。他素材と複合時は、バグノン50%混で機能を発揮する。

 リビング・寝装分野へは商材名を「マイテクト」とし、中わた素材として提案する。2017年度下半期(17年10月~18年3月)で販売量50トンを目指す。

〈ポリエス保湿加工剤拡販/大和化学工業〉

 大和化学工業(大阪市東淀川区)は新開発のポリエステル向け繊維用保湿加工剤「タンドルMO―88」で、女性インナー用途を軸に拡販を進める。

 同剤はアクリル重合体が主成分の保湿加工剤で、公定水分率の低いポリエステル生地に後加工に使用し、アクリル繊維並みまで保湿力を高める。

 吸放湿試験では、ポリエステル100%トロピカル布に対して、同剤を8%濃度で加工した場合、洗濯0回時点で、気温40℃・湿度90%の高湿時に1・32%、気温20℃・湿度65%の低湿時に0・71%の生地保湿率(未加工布では、0・43%、0・19%)を確認。10回洗濯後の計測でも、同等の保湿率を維持する高い洗濯耐久性が確認されている。

 従来、後加工での保湿性付与は難しかったが、インナー業界からの要望増で開発に着手。各薬剤のバランスを微調整し、適度な吸放湿性を実現した。素材変更での風合い変化リスクを回避しながら、肌への悪影響などポリエステル素材で指摘される難点解消を訴求する。

 今秋に一般販売を本格化。婦人インナー以外に寝装用途でも拡販する。

 4月投入のピペリジン系ホルマリンフリー防虫・防蚊加工剤「アニンセンPCR―U」も国内各分野で好評を得た。中国での日本持ち帰り加工への採用が今後の拡販の鍵と見ており、目下、中国の化学物質審査規制への対応を急いでいる。

〈草木染料で抗菌、消臭/洛東化成工業〉

 洛東化成工業(滋賀県大津市)は草木染料の「RKカラー」シリーズで、抗菌性や消臭性といった機能性も訴求する。

 草木染料の原料には、漢方薬の成分となるものもあることから、抗菌や消臭といった機能性を試験したところ、原料によっては良好な結果が得られるものも出てきた。

 アンモニアに対する消臭効果では未加工品の消臭率が42%のところ、ログウッドやザクロ、インドネシア原産で香料としても知られる丁子などが80%以上と高い効果を示した。また、洗濯10回後でも高い効果を保持した。特に、ログウッドは鉄媒染剤、銅媒染剤にともに洗濯10回後も90%以上の消臭率を保持する。

 黄色ブドウ球菌に対する抗菌性の試験では、おおむね銅媒染剤使用のものが5・8以上の静菌活性値を示した。静菌活性値2・2以上で、抗菌効果が認められる。中でも豆科の落葉樹であるエンジュは鉄媒染でも静菌活性値5・8以上と高い値を示した。

 RKカラーは工業量産可能な自然由来原料100%の草木染め染料で、発売から約10年が経過。定番原料は約15種にまで拡大しており、カラーバリエーションも充実させながら着実に販売を伸ばしてきた。

 定番以外にも、ストーリー性や地域性などから特定植物での染料開発を依頼されるケースが増えてきているという。今後は機能性も武器に販売を拡大する。

〈天然セラミックスで抗菌/三木理研工業〉

 三木理研工業(和歌山市)は天然セラミックスの「ミネラル・ウェーブ・ペースト」を展開する。抗菌、消臭、遠赤外線効果などの機能を持つ。消臭ではアンモニアや酢酸、トリメチルアミンなどに効果を発揮する。これまでには繊維への練り込み用途で長年展開してきたが、今後は後加工向けにも広げる。

 引き続き、防蚊機能への引き合いも増えている。同社は除虫菊などの成分を配合したマイクロカプセルで防蚊効果を訴求する。既に子供服、手袋、婦人服などの用途で使われており、採用したアパレルによる試験では高い忌避効果を示したという。

 除虫菊は殺虫剤や蚊取り線香の原料にも使用されている。除虫菊成分以外にも防虫効果のある天然由来成分と一緒にマイクロカプセルへ閉じ込めることで、高い効果を実現した。マイクロカプセルに閉じ込めるため、中の成分が肌に触れる機会も少ない。

 同社ではそのほか芳香マイクロカプセルとして、ヒノキ、ヒバ、ハッカなどの精油を使用。精油には香りだけでなく、抗菌防臭効果もある。

 同社のマイクロカプセルは割れにくく、しっかりと成分を保持。衣類を揉むなどの刺激によりようやくカプセルが割れ匂いが出てくる。