特集 清潔・衛生と繊維製品(3)/広がる清潔・衛生ニーズ/検査機関の対応

2017年11月28日 (火曜日)

 清潔・衛生というニーズは生活の隅々に広がっている。店頭でも“抗菌”“除菌”を訴求したスプレー、ワイパー、洗剤などさまざまな商品が並ぶ。繊維では検査機関が衣料や寝装品などで抗菌性試験などを行ってきたが、繊維業界以外からの試験依頼も増えてきている。

〈カケンテストセンター/SEK認証に完全対応/臭気試験ニーズ高止まり〉

 カケンテストセンター(カケン)は分析ラボ、生物ラボで総合的な検査体制を敷く。繊維評価技術協議会のSEKマーク認証に必要なあらゆる検査が可能。

 国内では東京(埼玉県川口市)、東海(名古屋市中区)、大阪(大阪市西区)の3事業所を、北陸(福井市)、京都(京都市)、西部(広島県福山市)に3検査所を展開する。

 分析ラボは東京と大阪事業所にあり臭気関連、光関連、化成品関連、光関連、クレーム品関連の評価などを行う。生物ラボは大阪事業所にあり、抗菌性試験、抗ウイルス性試験、防カビ・防ダニ性試験、バリア性試験、除菌試験、光触媒加工製品の抗菌・抗カビ性試験などを手掛ける。

 カケンが展開する事業所の中でも大阪事業所は一拠点に分析ラボと生物ラボが集約された国内最大の検査拠点だ。6千平方㍍を超え、延べ180人以上の人員で試験・検査サービスを提供する。取扱量の規模と範囲の広さは国内でトップクラス。

 清潔衛生分野の検査で最もボリュームゾーンとなるのはインナーやTシャツ用途の生地で、抗菌防臭、消臭試験のニーズが高い。「会社などでの“スメルハラスメント”などが話題となっていることも背景にあり高止まりが続いている」(齋藤寿叙大阪事業所生物ラボ長)。不織布はまだ規模が小さいながら、使い捨てマスクや防塵服用途で飛沫や粉体の拡散・侵入防止バリア性に関する検査需要が近年、急成長している。

 グローバルな検査体制もカケンの強みだ。上海、香港、青島、大連、寧波、ベトナムにも拠点を展開し、海外の検査機関と提携し幅広い地域で試験・検査を受け付ける。

〈QTEC/抗菌関連幅広く対応/防汚、羽毛臭気試験も〉

 日本繊維製品品質技術センター(QTEC)の神戸試験センターには微生物ラボがある。繊維製品の抗ウイルス性試験、抗菌性試験、抗カビ性試験、消臭性試験などを行っている。繊維評価技術協議会の各種SEKマークにも対応しており、抗菌防臭加工、制菌加工のほか、消臭加工商品にも対応する。

 除菌試験でも洗剤・石けん公正取引協議会が定める除菌試験、日本衛生材料工業連合会の定めるウエットワイパー類の除菌性能試験も実施、その認定試験機関でもある。

 プラスチックなどの抗菌性試験にも対応している。抗菌製品技術協議会の指定機関として抗菌性能評価試験を実施する。「抗菌関連の需要は安定している。繊維以外でも洗剤やプラスチック製品でのニーズが高い。神戸試験センターは繊維に限らず、さまざまな分野で試験需要に対応」(QTEC)する。中国では上海総合試験センター(上海可泰検験)が抗菌性試験を行う。

 福井試験センターには防汚性試験の設備がある。汚れには土やほこりのような紛体汚染物質、ジュースのような親水性の汚れ、皮脂などの親油性の汚染物質があり、各汚れに対するJISの性能評価試験は異なる。中部事業所は羽毛の組成表示と混合率試験などを行うが、羽毛製品の臭気試験(QTEC試験方法)にも対応する。

 これは嗅覚検査を受け合格した検査員5人により、臭いの「強度」と「快・不快」の評価内容で各等級を求め、臭いの官能値の平均を算出するというもの。ほこりや臭いの発生原因となる残留土砂や、塵埃などを調べる清浄度試験でも定評がある。

〈ニッセンケン/繊維以外の需要も増加/「エコテックス」認証も〉

 ニッセンケン品質評価センター(ニッセンケン)は、「繊維の場合、抗菌防臭加工は標準装備的になっている。しかし、プラスチックや消しゴムなどの分野では抗菌性試験の需要は伸びている」と言う。東京事業所立石ラボでは抗菌性、抗カビ性、抗ウイルス性試験などの試験を行うほか、上海事業所でも抗菌性試験に対応する。

 マスクなどで試験依頼の多かった抗ウイルス性試験は最近、洗濯の洗剤メーカーからの依頼があった。消臭試験でも壁紙やスプレーといった業界からの需要が出ている。東南アジアからは手術着、シーツ、ピロケース向けの制菌加工の問い合わせなどもあるようだ。

 「これまで衛生面では日本が特別に敏感という印象があったが、最近は海外のスポーツメーカーから消臭についての問い合わせもあった。清潔・衛生という分野が世界的に広がっている」(ニッセンケン)という感触を得ている。

 防汚加工も需要は高まる。繊技協法による水性、油性の防汚性試験のほか、花粉汚れについても対応する。この分野は衣料全般に広がっている。カーペットの泥汚れの試験もある。立石ラボでは対応する菌種を増やしていくほか、人工血液バリア性試験やウイルスバリア性試験も視野に入れる。

 ニッセンケンは設立以来、「安心・安全・健康」を守る検査がベース事業である。染料中の発ガン物質、ホルムアルデヒド、重金属の分析・試験などの評価も行う。また、素材・製品そのものが安全であることを証明する「エコテックス」の日本で唯一の認証機関でもある。エコテックスは抗菌剤の安全性も認証する。